前菜
「…投票の結果、今度の打ち上げは『焼肉パーティー』に決まりました!!」
一気に盛り上がったクラスのみんな。
あたしも、そのうちの一人だった……
*******
今の気分はどん底。
だってまさかの、あたしが幹事……
「はあぁぁ…」
ため息とも、呻きともとれる声を発しながら、手元の紙を見遣る。
それは『焼肉パーティー』の計画表なのだが、見事なまでの白紙状態。
40人というなかなか人数の多いこのクラス。
決めなければならないことがあるのは分かってはいるものの、正直、何から決めればいいか分からない……
「お、ルーシィじゃねえか」
机に突っ伏していた頭にふってきた声。
ゆっくり顔を上げれば、はにかむ黒い瞳とかちあった。
部活終わりなのかな…
その黒髪は乱れ、頬には汗がつたっていた。
そこではっとする
「もう下校時間!?」
黒板上の時計は、17時50分をさしていた。
あと10分で校門が施錠されてしまう。
「はぁ…」
本当だったら急いで帰り支度をするべきなのだろうが、今のルーシィにはそんな気力すらなかった。
「早くしねぇと施錠されちまうぞ?」
「だけど、これ…」
まだ終わってなくて…と、力無く腕を上げ紙をヒラヒラとさせる。
訝しげにそれを見たグレイだったが、何を思ったのか、ニヤリと笑うとルーシィに囁いた。
「仕方ねーな……手伝ってやんよ」
「ホントに!?」
ガバッと勢いよく起きたルーシィとグレイの距離は10cm未満。
しかし、ルーシィはその近さに気付かない。
グレイはくつりと笑った。
「見返りはくれんだろ?」
「まあ、あたしの出来る範囲内なら…」
「じゃあ…」
かろうじて開いていた距離を、グレイは迷うことなくゼロにした。
「ぇっ…」
なかった距離をすぐに戻り、妖しく光る黒い双眼とかちあう。
だんだんと冴えてきた頭で、ことの状況を理解すると、みるみる赤く染まる。
「な、何してっ!?」
「何って…」
前菜
それは君の唇─…
(「前払い」)
(「え…」)
(「因みに、当日の手伝いの分は、当日の夜を空けておいてくれんなら、オッケーだ」)
(「…ふえ!!?」)
End
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