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[第一話*目覚めました。]
「大変だ!!人が倒れている!
なあ!大丈夫か!!しっかりして!」
焦ったような声が、頭上で響く。
どこの誰かは知らないが、とても心配されていますよ。早く起きてあげて……って、この誰かが呼んでるのは、私…?
妙な意識の浮上の仕方だったが、瞼に力を入れるには充分で。
目を覚ますとそこは見慣れない場所だった。
「良かった、気が付いたんだ。
大丈夫?ケガしてない?」
ボーッとした頭で、瞬きを繰り返しながら、顔を覗き込んできた人を見つめる。
先ほどから声をかけ続けていた主だろう。
私の視線を気にせず、頭やら腕やら足やら…私の身体全体をくまなくチェックしている。
ちょっとくすぐったい。
「ケガは…ないみたいだね。
みたところ、アウトロー一味に襲われた訳じゃなさそうだけど…こんな所にいたら危ないよ。ところで、何で倒れていたの?」
……はて?
アウトロー一味とは…?
何でと言われても、それ以前にここは一体…?
「……答えたくないんだね?まっ、いいけど」
『……』
違うんです。
ぐるぐる考えていたら、答えられなかっただけで…!
「そういえば、この辺じゃ見かけない顔だね。どこから来たの?……やっぱり答えたくない?」
『っ、あ、の…ここ、は、一体?』
「…ここはサテライトだよ。昔は、童実野シティって呼ばれていたらしいけどね」
漸く絞り出した声にか、それとも私の質問に対してなのか、一瞬驚いたように目を見開いたものの、丁寧に答えてくれた。
ここは旧童実野シティーー
通称サテライトと呼ばれる
荒廃したジャンクシティ。
マーカーを顔に刻印されて街を追放された犯罪者たちや、貧民層が集うスラム街。
どう聞いても物騒としか思えない地域の、これまた薄暗い路地裏で、私は倒れていたということだ。
「そうだ、自己紹介がまだだったね。俺の名前はラリー。君の名前は?」
『あ、はい!私の名前、は…』
そこまで言って私の思考は止まった。
…いや、止まるしかなかった。
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