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これはブリッツを助けるため、なまえがアウトロー一味のアジトに乗り込む、数日前のこと……




「遊星!お疲れ様!」

「ああ。……ラリーだけか?」

「うん。皆なまえのD・ホイールを探してるよ」

「そもそも、何故なまえはD・ホイールが必要なんだ?」



ーー「なまえっていうんだ。ちょっとワケありみたいなんだけど、悪い奴じゃないんだ!みんなも認めてくれたから、仲間に入れようと思って案内してたんだよ。それになまえもデュエリストなんだ!」




パイプラインを抜けるために日々走行訓練をしていたある日、そう言ってラリーが連れて来たなまえ。

目標まであと少しということもあり、作業に没頭する俺は、あまりなまえを知らない。

ただ、俺の知らない間にラリーだけでなく、ナーブ達とも溶け込んでいた。ナーブ達に照れ臭そうに笑うなまえを見て…笑いかけられたあいつ等が羨ましく思う。

確かに、顔を合わせれば会話はする…が、俺を見るなまえはどこかよそよそしい。




「そっか。遊星はなまえと話すタイミング、あまり無いんだっけ」

「そうだな…」

「じゃあ、なまえが記憶喪失だってことも知らない?」

「記憶喪失?なまえが?」

「うん…」




ラリーは、初めてなまえと出会った日の事を語った。

路地に気絶したなまえが倒れていたこと。

なまえは自分が倒れていた場所…サテライトについてはもちろん、自分自身の事も、何一つとして覚えていなかったこと。

腕のデュエルディスクだけが彼女の持ち物であったこと。

ラリーとデュエルをして、彼女の名前がなまえだと思い出したこと。

ナーブ、タカ、ブリッツとデュエルをしたこと。

俺となまえが、初めてあった日のこと。




「遊星が去った後、突然なまえが放心したかと思ったら、デュエルディスクを調べて。そしたら、Sp魔法(スピードスペル)カードが出てきたんだ!だから、なまえはD・ホイーラーじゃないかって!
それでナーブが「なまえがD・ホイーラーだとしたらネオ童実野シティから来たんじゃないか」って言ってさ」




なるほど、D・ホイールを手にしてみれば、記憶を取り戻すきっかけになる可能性がある…シティに行けば記憶、もしくはなまえを知る人物に会えるかもしれない。




「ナーブが張り切って探そうとしたら、タカとブリッツにつかまってさ!その時になまえのこと話して、皆でD・ホイールを探そうってなったんだ!」

「そうか」



全てに合点がいった。



「俺も心当たりを探そう」

「えっ、でも遊星…遊星にはやることが…」





事情を何も知らないなまえも、何か察していたのだろう。彼女からの視線は、よそよそしいものとは別に、どこか心配気なものもあった。


自分のことで手一杯のはずなのに、俺を気にかけてくれていたのは自意識過剰なわけでもなく、確かな事実だ。


俺が何をしているのか、踏み込んで聞いてくることはない。

それは、彼女の優しさと彼女自身の問題(記憶喪失)からくる不安からだろう。

そこで気付く。

俺はなまえとの距離感を仕方が無いものとし、自らも踏み込むことをしなかったことに。だというのに、なまえと親しくなる仲間達を羨ましく、勝手に疎外感のようなものを持ってしまったことに。



「なまえはもう、俺達の仲間だ」

「うん!」



仲間だから。

少しでも、彼女の力になりたいと…

笑った顔が見たいと、思うのだろう。

→[第九話]
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2020.8.29



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