3
事情を把握したらしい遊星は、ひとつ頷くと、なまえと向き合う。
「…そうか。ありがとう、なまえ」
『っえ、あ、うん…』
遊星が柔らかく笑った…瞬間、首の後ろが熱を帯びた。何度か会話したこともあったが、こんなにも表情を変えたのを見たことがあっただろうか。
動揺し目線をそらしたなまえと、なまえを見つめる遊星を見比べ、タカが大袈裟な仕草をする。
「俺、ブリッツの様子見てくるよ!」
「あ、俺も行く!」
慌てたように立ち去るタカの後に、ナーブが続く。
ナーブは兎も角、タカの反応…何だか態とらしいような…?
私が変な反応をしたせいで、居た堪れなくなったのだろうか。だとしたら、申し訳ないな…。
タカ達の背を見つめるなまえだったが、ジリッと自分へ近づく気配に振り向く。
「なまえ、ちょっと、そこで待ってろ」
返事も待たずに、遊星は小屋へ直行。
数分の内に戻ってきたその手には、何かが握られていて…それをなまえへ差し出す。
「お前に、これをやる」
『それは…』
「D・ホイールのエンジンだ。昔、俺が使ってたやつだがまだ動く」
『え、いいの?』
「ああ」
『でも、どうして…?』
「仲間を助けてくれたお礼だ。遠慮なく受け取ってくれ」
『…ありがとう、遊星』
中古と聞くと、ただ古く感じてしまうはずなのだが、遊星のお下がりというだけで、まだ熱い何かを秘めているように思えてならない。
今まで遊星と頑張ってきたエンジン。
今度は私に力を貸して欲しい。
願うように、エンジンを抱えるなまえの腕に力 がこもる。
「早速組み込んだほうがいいな。アドバイス位ならしてやれるから、自分で組み込んでみろ」
『わかった、やってみる』
意気込むなまえを、微笑ましく遊星が見つめていたことを、エンジンを眺めていたなまえは勿論、当の本人ですら気づかなかった。
→[第九話]
ーーーーーーー
2020.8.28