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黒江に促されるまま建物へ入ると、無意識の内に眉間にシワがよった。


中は薄暗く、棚が倒れていたりと荒れていたのだ。


少し進むと、人の気配に足を止める。これまたモヒカンさんとエンカウントした。この人は青いモヒカンと、随分ファンキーだ。


ボケッとそんなことを考えていたせいか、突然の怒鳴り声に肩がビクッと反応してしまう。




「おい、てめぇ、どっから入りやがった!」

『ちゃんと玄関からですけど』

「ここは俺達の縄張りだ、出てけ!」

『……』





もちろん、出てけと言われて出て行くはずもない。

ただまっすぐにモヒカンさんーー伊田を見つめる。相手を苛立たせるには十分なようだ。





「出て行かないならデュエルで、ボコボコにしてやる!」

『望むところです!』

「後で吠え面かくなよ!」

「『デュエル!』」

「先攻は譲ってやるよ、お嬢ちゃん!」

『では……《クレボンス》召喚。二枚カードを伏せて、ターンエンド』


《クレボンス》
[攻1200/守 400]


「ドロー!《おろかな埋葬》を発動!墓地に送るのは、《ダンディライオン》だ」

『(コストの払い方…上手いな)』




効果により、ふよふよと漂うようにして《綿毛トークン》が守備表示で二体フィールドに出現した。




「《サファイアドラゴン》を召喚して攻撃だ!」


《綿毛トークン》
[攻 0/守 0]

《綿毛トークン》
[攻 0/守 0]

《サファイアドラゴン》
[攻1900/守1600]



『《クレボンス》の効果を発動します』

「ちっ……カードを一枚伏せて、ターンエンド」


なまえ LP8000→7200


『私のターン…《ワーム・パルサス》召喚。効果により、《綿毛トークン》を攻撃表示に変更させます。
そして、《ワーム・パルサス》に《クレボンス》をチューニング。シンクロ召喚!
現れろ、《マジカル・アンドロイド》!
罠カード《エンジェル・リフト》発動!
墓地の《クレボンス》をフィールドへ!」



《マジカル・アンドロイド》
[攻2400/守1700]


《クレボンス》
[攻1200/守 400]



「シンクロした上に、面倒なモンスターを復活させやがった…!」

『バトルです。《クレボンス》で、攻撃表示トークンを、《マジカル・アンドロイド》で《サファイアドラゴン》に攻撃します』

「くっ!」

『ターン終了時、《マジカル・アンドロイド》の効果で私はライフを回復します』



伊田のライフに1700のダメージを与えた。

前のターンの《クレボンス》のコスト800を《マジカル・アンドロイド》で600回復することにより、その大半をカバーする。


伊田 LP8000→6300
なまえ LP7200→7800


「オレのターン!《おとり人形》を発動する」

『あっ』


残りの伏せカード《正統なる血統》が破壊された。



「《仮面竜》を召喚し、バトルだ!」

《仮面竜》
[攻1400/守1100]


『《クレボンス》効果を使います!』

「ちっ…ターンエンドだ」


なまえ LP7800→7000


『《シールドクラッシュ》発動!《綿毛トークン》を破壊!』

「そうはいかない…《我が身を盾に》発動!」


1500はらってトークン守った、か。

伊田 LP6300→4800

《仮面竜》を相手にするなら、壁モンスターは少ないにこしたことはないと思ってたけれど、仕方ない。



『《チューン・ウォリアー》召喚、《仮面竜》に攻撃します』

《チューン・ウォリアー》
[攻1600/守 200]

「破壊された《仮面竜》の効果発動!このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。《仮面竜》を特殊召喚!」

『(やっぱり…)《クレボンス》で《仮面竜》破壊!』

「もう一度《仮面竜》の効果!《仮面竜》を特殊召喚!」

『三体目の《仮面竜》を《マジカル・アンドロイド》で破壊!』

「《仮面竜》の効果により、デッキから《黒竜の雛》を特殊召喚!」

『カードを伏せて、ターンエンド』


場にサイキック族が2体いることにより、ライフは1200回復される。

なまえ LP7000→8200


もしかしてドラゴン族デッキなのだろうか。

それなら、早々に《黒竜の雛》を倒さなくては…

可愛らしい雛が成長し、飛び立つ時…それは脅威に他ならない。



「オレのターン…《スタンピング・クラッシュ》発動!《エンジェル・リフト》を破壊。それにより、《クレボンス》も破壊だ」

『くっ』

「モンスターを裏守備表示で召喚してターンエンドだ」

『私のターン…《サイコ・コマンダー》召喚』

《サイコ・コマンダー》
[攻1400/守 800]


『《サイコ・コマンダー》で裏守備モンスターに攻撃!』


《サイコ・コマンダー》が撃破したのは《黄泉ガエル》。
また、特殊召喚に特化したモンスターだ。


『(《黄泉ガエル》の効果はわかってるけど、壁モンスターを放置するわけにもいかないし…)《チューン・ウォリアー》で《黒竜の雛》に攻撃!』

「チッ」

『《マジカル・アンドロイド》でトークンに攻撃!』


フィールドの壁モンスターを全滅させてから、ターンを終了する。
《クレボンス》は破壊されてしまったが、新たに召喚した《サイコ・コマンダー》もまた、サイキック族。未だサイキック族を2体にキープしているため、ライフは1200回復されている。


なまえ LP8200→9400


「墓地から《黄泉ガエル》の効果を発動!このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「黄泉ガエル」が存在しない場合、自分スタンバイフェイズに発動、このカードを特殊召喚する!」

《黄泉ガエル》
[攻 100/守 100]

「《ハウンド・ドラゴン》召喚、バトルだ!」


《ハウンド・ドラゴン》
[攻1700/守 100]

素早い動きで繰り出された鋭い牙が《チューン・ウォリアー》を仕留める。

『っ、』

「ターンエンドだ」


なまえ LP9400→9300


『《ロードランナー》を召喚』

《ロードランナー》
[攻 300/守 300]

『《ロードランナー》で《黄泉ガエル》に攻撃』

「くっ」

『《サイコ・コマンダー》で《ハウンド・ドラゴン》に攻撃します』

「はぁ?《サイコ・コマンダー》の攻撃力は1400。それに対し《ハウンド・ドラゴン》の攻撃力は1700なんだぞ?」

『そうですね。なので、《サイコ・コマンダー》 の効果を発動します。自分フィールド上のサイキック族モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ時に1度だけ、100の倍数のライフポイントを最大500まで払います。このターンのエンドフェイズ時まで、戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力・守備力は払った数値分ダウンすることが出来ます。勿論、《サイコ・コマンダー》自身にも適用されます。よって、《ハウンド・ドラゴン》撃破!』

「チッ」

『《マジカル・アンドロイド》でダイレクトアタック!』

「うわぁぁあ!」

『カードを1枚伏せて、ターンエンドです』


なまえ LP9300→10000
伊田 LP4800→2200

ライフが圧倒的優位にたった。
それでも、気を抜くつもりは更々無い。


「《黄泉ガエル》を特殊召喚。《黒竜の雛》召喚、《ロードランナー》に攻撃!」

『トラップ発動、《セキュリティー・ボール》! 相手モンスターの攻撃宣言時に発動し、その攻撃モンスター1体の表示形式を変更することが出来ます。《黒竜の雛》を守備表示にします!』

「ターンエンドだ…」

『私のターン…このままバトルです!

《ロードランナー》で《黄泉ガエル》に攻撃、《サイコ・コマンダー》で《黒竜の雛》に攻撃!

《マジカル・アンドロイド》でダイレクトアタックです!』


伊田LP2200→0


「まさかこんな奴に負けるなんて…」

『教えてください。ブリッツは何処ですか?』

「ブリッツ?」

『眼鏡の男性ですよ?私の…仲間です』




仲間、という言葉に一瞬ためらった。

こんな事になったのは、そもそも私のせい…なのに。
自分一人でD・ホイールを見つけられなかったせい。


けれど、一人で見つけられるはずもなくて。誰かに協力して貰わなければ、記憶喪失の人間に出来ることはたかがしれていた。


到底一人では何も出来ないであろう私を、彼等は受け入れてくれた。
私が仲間じゃないと言っても、きっと否定する。


だから、仲間として。何としてでも、救出しなければならない!



「ああ、いたかもしれねぇなぁ。まぁ、自力で探してみるんだな…」

『……そうさせてもらいます』



ニヤニヤとした笑みを一瞥してから、その横を通り抜けた。
足止めにこれ以上時間を取るつもりは無いのだこら。




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