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地下鉄を飛び出したブリッツを追う。行き先はもちろん、あの広場だろう。
広場に着くと、その中心辺りであのモヒカンの人に何か言うブリッツを見つけた、けど…建物から出てきたもう一人の人に肩を叩かれて止まった。
そのまま一緒に建物に入っていく三人。
…って、あれ、ブリッツがさらわれたってことになるよね!?
すぐに助けに行かないと!
建物に駆け寄ったなまえは扉を開けようとする。
『ウソ…』
カギがかかっていて、中に入ることが出来ない。
扉の向こうからは話し声が、かすかに聞こえる。
ブリッツは中にいるはずなのに…早くブリッツを助けないと!
でも、私一人で…?
扉から手を離し、なまえは目を瞑る。
ゆっくり呼吸を整えながら考える。
そう、私一人で行くしかない。
取り敢えず、みんなに状況を伝えよう。
これはもしもの保険。
私が失敗した場合、ナーブ達にブリッツだけでも助けて貰えばいい。
『…時間がない』
あの人達の様子からして、ブリッツが暴行を受けている可能性は非常に高い。
なまえは目を開き、もう一度扉を見据えると、地面を強く蹴った。
***
走って地下鉄へ向かうと、入口にタカの姿が。
「あれ?なまえじゃねぇか」
『タカ!ブ、ブリッツ、が…!』
「ブリッツ?急にどうしたんだよ」
『さら、攫われっ…!』
「えっ、」
ひとまず息を落ち着かせ、D・ホイールのこと、ブリッツと黒江のことを説明した。
なまえの話しを聞くうちに、だんだんとタカは顔色を悪くする。
それは当然、現状の悪さと比例しているのだろう。
「…え!?広場にいる怪しい男って、あいつら、アウトロー一味なんだぜ!」
『やっぱり…どうしよう、三人くらいにからまれた…』
「え!?それ、かなりやべえよ!」
かなりやばい。
その一言がなまえを襲う。
ブリッツが危ないと。
そして、今から向かおうとする自分自身も。
『……私、行ってくる!』
「おいなまえ!危ないぞ!」
『わかってる。でも、私が行かなきゃ…』
微かに震える身体。
それは恐怖心からだ。
それでも、なまえの瞳は恐怖よりも強い光が灯る。
「…わかった。なまえ、もう一度廃ビルを調べてみてくれ!俺、みんなを呼んでくるよ!」
無茶すんなよ!となまえに言って、地下鉄へ駆け込むタカ。
その背中を見送ると、なまえは再び建物へと向った。
***
建物の入口に立つあのモヒカン…黒江を確認すると、無言で近づく。
自分に真っ直ぐに向ってくる人物を確認すると、黒江は溜め息を漏らした。
「なんだよ、お前も文句言いにきたのか?ちゃんとD・ホイール渡しただろ!」
『今はそんなことどうでもいいです。ブリッツはどこですか?』
「あぁん?…あぁ、もう一人の奴か。知らねぇなぁ…」
明らかにしらばっくれている黒江を、なまえは睨みつける。
怯むどころか向ってこようとする姿勢のなまえに呆れるが、腕にあるデュエルディスクの存在を確認すると、黒江は口角を上げる。
「もし俺に勝ったら、教えてやってもいいぜ。どうする?」
『受けます、その勝負』
「随分と余裕だな」
『そうですね。必ずブリッツの居場所を教えて
もらうつもりなので』
「チッ…強がってんじゃねぇぞ!」
「『デュエル!』」
待ってて、ブリッツ!
すぐに行くから…
→[第七話]
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2016.2.8