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笑い合う二人のもとへナーブがやって来た。
「あれっ?遊星が来てると思ったのに、いないじゃん」
遊星のD・ホイールの音がしたと思ったのになぁ…と、近付いてきた彼の目に、なまえの持つカードが飛び込む。
「あっ!お前、それ、Sp魔法カードじゃねえか!何でお前が持ってるんだ!?」
『えっと、それが…』
先ほどラリーにしたように話そうとしたが、間にラリーが入る。
「…ねぇナーブ。Sp魔法カードを持ってるって事は、なまえはD・ホイーラーって事なのかな?」
「カード一枚で決まりって訳じゃないが、可能性は高いだろうな」
『そうなの?』
「何てったって、Sp魔法カードを持ってるってだけで珍しいんだぜ?自分のD・ホイールもあれば、確実にD・ホイーラーなんだけどな」
「そうだね。ねぇ、なまえ。自分のD・ホイールがどこにあるか覚えてる?」
『…わからない…そもそも、私自身のD・ホイールを持っていたのかどうかも…』
あのセピア色の世界にあったD・ホイールは私の?
それとも…
「…そっか」
「記憶喪失ってのも厄介なもんだな。でもよ、この辺じゃあD・ホイーラーはセキュリティか遊星ぐらいなもんだぜ?」
『うーん…私がセキュリティの人間っていう可能性は?』
「なまえがセキュリティって…ネタか?」
『……それってどういう意味!』
私にはお役所仕事みたいに、きっちりしたことが出来なさそうっていうこと…!?と言うなまえに、お前は案外抜けてるからなぁと笑うナーブ。
ムッとしてナーブを睨むなまえに努めてにこやかにラリーが話す。
「なまえはセキュリティにしては雰囲気的には無理ってだけで、実力的にはセキュリティに匹敵するよ!ね、ナーブ!」
『……ラリー、フォローしきれてないよね、それ…』
なまえの言葉に、キョトンとするラリー。
相変わらずムッとした表情のままのなまえにケタケタ笑っていたナーブだったが、ふと笑うのを止めた。
「…ん?待てよ。という事は、なまえがD・ホイーラーだとしたらネオ童実野シティから来たんじゃないか!?」
「そ、そうだよ!きっとそうだよね!じゃあ、シティに行けば記憶が戻るかも!」
「そのためにもD・ホイールが必要だな」
私の記憶がシティに…?
なら、やるべきことは一つ。
『…私、D・ホイールを探してみる』
ここ(サテライト)に於いてD・ホイールは珍品レベルの代物。
そう簡単に見つかるとは思えない。だとしても、今のところ、自分の記憶の手掛かりはD・ホイールのみ。
やるべきことを見つけたなまえの瞳に、強い意志の炎が灯る。強い光を放つ瞳に気付いたナーブは、一瞬目を開いて驚くものの、次の瞬間にはその口角を上げていた。
「ラリー、俺達もD・ホイール探しを手伝ってやろうぜ!」
『え、』
「うん!みんなで協力すればきっと、すぐに見つかるよ!」
『で、でも!これは私の問題で…!』
「遠慮すんなよ!」
「そうそう!」
『二人とも…っ、ありがとう!』
「っ!れ、礼はD・ホイールを見つけてからだろっ!」
「……ナーブが照れてる」
「っ、照れてなんか…!」
からかうラリーに、照れからなのか怒りからなのかわからないくらい顔を赤くするナーブ。
二人を一歩離れたところから見つめ、服の上から胸の辺りを握りしめるなまえの表情は、誰にも…本人でさえわからない。
→[第六話]
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2016.1.28