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[第五話*記憶の手掛かり]
なまえはブリッツとのデュエルも終わり、タカも混じってあのターンはああだっただの、あの時こう攻めたら違う展開だったなど、談義する。
気付けばなまえを取り残し、タカとブリッツの二人の談義が白熱していく。
あまりに勢いが凄いため、止めに入ろうかと戸惑っていたなまえの服の裾がくいっと引っ張られた。
二人の様子を呆れながらも笑っているラリーだ。
「この先に小屋があるんだ。一緒に行こうよ!」
もちろんラリーのお誘いを断る理由も無いので、なまえはタカとブリッツを放置して、リーについていくことに。
***
「ここだよ。なまえも入っておいでよ。ほら、早くっ!」
『う、うん』
地下鉄のホーム上に設置されている小屋。
入り口からおいでおいでと手を振るラリーに、なまえは苦笑しながらも小屋へと入る。
『お邪魔しまーす…』
「結構物がいっぱいあるでしょ。足元に気をつけてね」
小屋…というここは、テントのような、まるで本格的な秘密基地のようだ。椅子やダンボール箱、工具棚…天井からは、何かコードのようなものが垂れていた。
「あっ、ちなみに、机のパソコンは大切なデータが入っているからいじらないでね」
というラリーの忠告も耳に入らず、上の空で返事をかえす程、今のなまえは部屋に興味津々だった。
グルリと部屋全体をだいたい観察したなまえの目に付いたものは、やはりと言うべきなのか、机の上にある一台のパソコンで。
パソコン…もしかしたら、ネットから何か情報が得られるかも…と。
例えば、記憶を取り戻す方法に関する何かであったり。
例えば、行方不明になっている人の有無…それが自分に該当するならば、そこから本来の居場所にたどり着くだろう。
人様のパソコンだけど、データファイルとかシステム関連に触らなければ、大丈夫、だよね…
スッと手をパソコンのキーボードに滑らせる…が、パソコンは起動しているが、パスワードロックがかかっていた。
「あー!!!勝手に触らないでって言ったのに!もう!」
『っ、ご、ごめんなさい!』
「パソコン、勝手に触っちゃダメだからね!」
『はい…』
キィィーーン…と何かが走ってくる音が響く。
初めて聞く音…だと言うのに、何処か聞いたことのある音に感じてしまった。そのことを不思議に思うなまえだったが、ラリーが嬉しそうに飛び跳ねたことにより、ハッと我に返る。
「あっ!あの音…遊星が帰ってきたのかな。よしっ、遊星を迎えに行こう!」
『遊星…って、ラリーもういない!』
飛び出して行ったラリーを追って、慌てて小屋から出ると、線路上に止まる一台の赤いバイク。
そこに嬉しそうに走り寄るラリーの姿を見つけ、なまえはそれに続いた。
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