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[第二話*名前、思い出しました。]
「お待たせー!さあ、デュエルしよう!」
少しして、走りながら戻ってきたラリー。
コクっと頷いたのを確認したラリーは、満面の笑みを見せると、程よい距離を取る。
「よーしっ!勝負だ!!」
「デュエル!」と高らかに構えるラリーにならい、それに続く。
変形したデュエルディスクに一瞬驚くものの、滑らかな動きでカードを引く。
頭で覚えていなくとも、身体は理解している…そんな感覚だ。
「先攻、どうぞ!」
『あ、はい!じゃぁ…』
カードを一枚引く。それを加えた手札をじっと見つめる。
記憶は無くとも、デュエルについては知っていた。それぞれのカードに、どんな力が秘められているのかということも。
デュエルディスクに表示された数字、8000が今の自分の命の数値、ライフポイントだということも。
ただ一つ言うならば、このデッキを組んだのは自分なのか、ということは全くもって覚えてはいなかったのだが。
「……大丈夫?」
『っ、すみません!…私は、モンスターを一体裏守備表示で召喚します。カードを二枚伏せて、ターンエンドです』
「デュエルの方法まで覚えて無いのかと思ったよ」
『大丈夫、みたいです』
「そっか!なら、遠慮なくいくよ?俺は《魔法除去》発動!右のカードを選択!」
私の伏せたカード二枚の内、ラリーが選択したカードが表向きになる。
現れたのは、《マジック・ジャマー》。
《魔法除去》はその名の通り魔法カードを破壊する。罠カードである《マジック・ジャマー》は破壊されることなく元に戻るが…
「俺は魔法カード《盗人ゴブリン》を発動するけど、どうする?」
『いいですよ、チェーンはしません』
相手に伏せたカードがバレた状況は、少々厄介だ。伏せたカードはわからないからこそ、脅威なのだ。
時には、カウンターとして。時には、ブラフとして。
「俺はモンスターを一体裏守備表示!カードを一枚伏せて、ターンエンド!さあ、君のターンだよ」
デュエルに勝つ方法は原則として3つ。
1つ、相手のライフポイントをゼロにすること。
1つ、相手のデッキをゼロにすること。
1つ、相手がサレンダーすること。
最後の1つはほぼ有り得ない。
そして自分のデッキは、2つ目のようなデッキ破壊系ではない。
何としても、相手のライフポイントをゼロにしなくては。
そのためには攻撃。
そして攻撃の前にはモンスターを破壊。
モンスターを破壊するなら、あの伏せカードを何とかしないと…うん。
『私は、フィールドのモンスターを生贄にして…《地帝グランマーグ》をアドバンス召喚!』
《地帝グランマーグ》
[攻2400/守1000]
最初のターンに召喚していたモンスターを墓地に送ることで、より強力な仲間を、手札から呼び寄せる。
『《グランマーグ》の効果で、伏せカードを一枚破壊!』
これで伏せカードは無くなり、モンスター破壊も可能だろう。
そう思っていたのだが…
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