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先日、とある本丸の刀剣男士たちが、異世界へと飛んだという。
まず始めに消息不明となったのは三日月宗近。
……どこの本丸も、マイペースなおじいちゃんに困らされているのだろうと思った私は悪くないはず。
三日月宗近の捜索に和泉守兼定、山姥切国広、陸奥守吉行、骨喰藤四郎、鶴丸国永が出た。
そして、彼らが三日月宗近を発見したのが、異世界だったという。
彼らが無事に帰還した際、生じていた異世界へと繋がる《道》は、完全に閉じた…のだが。おそらく、この歪みが発端となり、新たな歪み…別の異世界へと繋がる《道》が生まれたのだった。
それも、時の政府だけでなく、誰もが知る《物語の世界》に繋がっているという。
ここで、「《物語の世界》と繋がって、何か問題が?」と言った能天気な審神者がいた。会議室に響いたゴスッという鈍い音と、「このアホ後輩!」と叫んだ審神者さんの声は忘れられない。
《物語の世界》とて、軽視出来ないのが審神者だ。それがあるからこそ、何振かの刀剣男士は存在している。
当然、《物語の世界》にだって過去は存在し、歴史となっている。私たちの世界と繋がっている状態で改変されたら?
何か問題があるとは言え無いが、何も問題は無いとも言えないのだ。むしろ不安要素の方が大きい。
よって時の政府は現地調査へと踏み切った。
『だからって、もっと早く連絡して欲しいよね…』
「申し訳ありません、なまえ様…」
『や、こんのすけは何も悪くないよ』
現地調査の必要性は分かるが、まさか「明日からよろしく!」みたいな知らせが来るとは、誰が予想しただろうか。いや、審神者に成り立ての時に初期刀一振りで出陣させるような鬼畜っぷりを鑑みれば、妥当かもしれないが。思わず隣に控えるまんばちゃんを見る。首を傾げるまんばちゃんがかっこ良くて可愛くてツライ。
こんのすけから渡された資料に目を通す。
『支部に設置された移動装置から飛ぶ…審神者と同行する刀剣男士は二振り、太刀と短刀の組み合わせを推奨…状況により増員…ね』
「遡行軍の有無は不明…ですが、いる可能性の方が高いでしょう。とは言え…」
『無闇に刀剣男士を送り込んで、検非違使に嗅ぎつけられるわけにもいかないから…でしょ?大丈夫、ちゃんとわかってるから』
「なまえ様……!」
感動した!と言いたげなこんのすけの瞳に、ついため息がでそうになる。この案件について、こんのすけは他の本丸にも説明しに行っている。恐らく何か拗れたのだろう。他の審神者の言いたい事もわかるが、こんのすけに当たるのはどうかと思う。こんのすけの胃に穴が開かないか心配になる。
『政府提供物について…戸籍、生活拠点…必要物資は《現地》調達とする。経歴等について……は?』
「どうした主」
『まんばちゃん…私の感覚がおかしかったら、はっきりおかしいって言ってね?』
「?ああ…」
『経歴等について…審神者は一律、同じ孤児院出身とし、同じ経緯を辿り、現在の職ーー神社の巫女に就いたこととする。…って、さすがに無理有り過ぎじゃないかな?というかザックリし過ぎ?全員が全員って…宗教団体過ぎる。』
「《物語の世界》ですので、《主要な人物》を護衛する形となることが予想されます。よって当番制を用いるため…」
『隠れ蓑も含めて最適な筋書きだった、ってこと?』
「仰る通りにございます」
『はぁぁ…まぁなるようにしかならないよね…』
「では明日、会議の後、各審神者様同士の打ち合わせ、視察、準備が整い次第任務開始となります。会議は《現地の職場》にて行われます」
『刀剣男士二振りと政府から《現地の職場》に…直通なの?』
「はい。《職場》から《拠点》までは端末に情報を登録してあります」
『端末と《拠点》の確認は…』
「視察時にお願いします」
『わかった……もしかしてこれ、会議で聞く内容?』
「そうですね、大凡は」
『……まぁいっか。それじゃ、明日ね』
「はい!失礼致します!」
ーードロンッという音と共にこんのすけは姿を消した。
『はぁぁ…』
「大丈夫か、主」
『一応。それに言ったでしょ、なるようにしかならないって…』
なまえは固まった体を解すべく、伸びをすると、ゆっくり立ち上がった。
『明日は誰を連れて行こうか…
鶴丸以外で』
「……また何かやらかしたのか」
『転けた拍子に襖に大分大きめの穴を空けた』
「…今朝の怒号はそれか」
『歌仙のね…折角だから、和紙に百人一首を書いて貼って穴を隠そうかな。今回の任務で出費が凄そうだし』
「政府が出すんだろう?」
『報告と請求だから、最初の出費はうち持ち』
「それもそうか」
『とりあえず、皆に報告だね』
ーー伝令。
《物語の世界》における《修正》《改正》を阻止せよ。
たとえ《物語》を知らなくとも、《違和》や《差異》を感知出来るのが審神者であるーー
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ーーーーーーー
既知でも、既知じゃなくても、色々出来そう←
救済物とか嫌いじゃないけど、《現代》と繋がってたら審神者案件だなって←
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[ mokuji]
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