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「ここが…マナリア魔法学院」
授業と授業の間の休み時間とは言え、広い廊下にいる生徒はとても疎ら。そのためか、エレンの独り言は軽く反響していた。
「騎空団に入って、魔法とか見慣れてはきたけど…やっぱり凄いな」
扉の隙間から教室の中を伺うと、召喚魔法や属性毎の魔法を練習したり授業の復習をする生徒が見受けられる。
そんな様子をキラキラとした目で見つめるエレンに、ついにやけそうになる表情を必死で保つ。
エレンに向かって『可愛い!』と言ったら最後、機嫌を直すことはとても難しいのだ。(経験済み)
ーー「なまえ、俺は男なんだぞ!」
ーー『エレンの性別ぐらいわかってるよ!』
ーー「やっぱりわかってないだろ!」
エレン達が騎空団に加入して、さらに増えた日常の一コマである。
『さて、どこから見学する?』
「あー…えっと、どこでも?」
『どこでもいいなら、やっぱりアルミンと図書室に行った方がよかったんじゃないの?』
「いや!それだと、意味が無いっつーか…なまえと、二人っきりになれないっつーか…」
『?』
突然大声で否定したかと思えば、ごにょごにょもにょもにょと小声で何かを言うエレンに首を傾げる。いつもハッキリとものを口にする彼は、たまに急ブレーキがかかるらしい。
『じゃあ、この階を一通り見てからアンとグレアのいる教室に行ってみる?まぁ、エルモートとビィのいる教室には行けないし…』
「そう、だな。そうしよう!」
『ん。ならまずはこっちの…』
なまえが歩き始めたので、その後ろにつくようにして進む。なまえの声に耳を傾けつつ、視線はキョロキョロと…はせずに、ほとんどをなまえに向けていた。なまえが振り向いた瞬間に、あたかも自分も今視線を向けたかのようなフリは大分様になっている。
悲しいかな、最近のエレンの得意技だ。
騎空士のクセに視線に疎くていいのかよー、と思いつつ、彼女が察知できるのは悪意が含まれたものだということを理解しているために、何も言えない。
自分が向ける視線に含まれた熱に気付かれていないことに不満に思う反面、安心もしているので、結局何か言えるはずもないのだが。
そう結論付けて、エレンはひとつため息をこぼした。
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