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『わぁ…すごい…!』
《彼女》に着いて行くと、島全体が見えそうな位高い丘の上に辿り着いた。街並みが見えるのとは逆側…絶壁となっている方に手招かれた。
目の前の真っ直ぐな水平線。
船から見るよりも、空が少し近くなったようだ。
「少し話をしない?」
『話?…もしかして、今まで冒険してきたこと!?教えて!』
「そうね…それも関係してるかもね」
振り向き見た《彼女》の瞳は、暗いような、冷たいような…初めて見るものだった。
「あなたって…
トリッパーなの?」
『……トリッパー?って?』
鳥?
「記憶無しってこと?まぁ補正は何も無いみたいだけど…ロー限定?」
『えっと…?』
《彼女》の言うことの八割…否、ほぼ全てを理解することは無かった。
記憶はちゃんとある。貴族に生まれて、夢を諦めかけていたときにキャプテンに連れ出してもらったこと。クルーの皆と過ごした日々。昨日のお夕飯がカレーだったこと。
どうして《彼女》は、私を記憶喪失だと思ったのだろうか。
補正って何だろう。
ローって…キャプテンのこと?
「じゃなかったら、あんたみたいなヤツ、仲間にしないか」
『え?』
「…わからないの?あんたみたいな可愛くもなければ、強くもない、何も出来無いヤツは、足でまといでしかないってこと。あぁ、その事にも気付け無いくらいバカなの?ウケる」
『何、言って…』
昨日までの《彼女》の面影は、何一つ無かった。私にも、皆にも優しい…
「一回目は変な男が邪魔で…二回目はあんた。本当、ロー達が可哀想。よりにもよって、こんな使えない女、邪魔でしょうが無いでしょうね」
『邪魔…キャプテン達の、邪魔…』
「あ、やっと気付いた?あんたみたいな弱いヤツ邪魔なのよ…ロー達にとっても…
私にとっても」
一度瞬いただけだった。
一秒にも満たないその間に、私の身体は落下していた。
ーードプンッ!!
深い、深い、海の中。
暗い、暗い、海の中。
波に揉まれる身体は、ジリジリと痛くて。思うようには動けない。
殴られた?蹴られた?
わからない…
私は、このまま、どうなる?
わからない…
怖い…
誰か、
キャプテン、皆…
助け、て…
「っい…おい!大丈夫か!?」
『っけほ…ごほッ…っう』
「しっかりしろ!!」
薄っすら見えた、私を助けたヒーローは…
あの日私を連れ出してくれたヒーローと同じくらい…
かっこ良くて、目の下の隈がすごかった。
To be countinued…
ーーーーーーー
ヒーローは相澤先生かな。
水にダイブ→異世界トリップという王道が書きたかった!
2017.11.15
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[ mokuji]
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