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でも、ナツを頼りにするとなると、このままこの船に乗りっぱなしじゃダメよね…
移動してるんじゃ、見つけようにもかなり苦労するだろうし…
…それ以前の問題か。
そういえば、ロキは?
そうよ、いつもなら勝手に出てきているくせに…!
なんで今いないのよっ!
「船長、あいつさっきから酒樽の上で百面相なんすけど」
ガンガン酒樽を蹴り始めたルーシィに、怪訝な視線を向け指差すラック。
他の船員達も同様に、遠巻きに見ているがヒソヒソと『可愛くね?』『胸でけぇよ!』などという会話がなされているのを、当の本人が知る由も無かった。
「人が一歩前進しようとする前触れだ。邪魔しないようにしなくてはな」
「へぇ〜い」
「ところで、ブレイブの様子はどうだった?」
「オレ、久しぶりに見たぜ。あいつがあんなに怒るとこ…まぁ、一応落ち着いたって感じかな」
「…そうか」
船長は、ルーシィの方へと視線を移した。
彼女の言った『マグノリア』という土地。
長い間、広大なる海原を旅してきたが、初めて聞く名だった。そして…
『あたしは、灰被りでも、シンデレラなんて名前じゃない!あたしは、“フェアリーテイルの”ルーシィ…星霊魔導士よっ!』
魔法のこと、ギルドという存在。
どれも『おとぎ話』のようにしか聞こえないことばかりが、彼女の口から出てきた。
だが、彼女の瞳(め)は揺るぎなかった。真実を語る瞳だった。
ーーキィイイ…
遠慮がちに開かれた船室の扉の音に、甲板にいた全員が反応した。
中から出て来たブレイブに、船員達は息をのむが、船長ただ一人が何処吹く風だ。
「あ、のさ…」
酒樽に座るルーシィの前にくると、視線を外しながらも話しかける。
ルーシィも、気まずさを感じつつ、酒樽から降りると、ブレイブの前に立つ。
「「さっきは、ごめんなさい!/悪かった!」」
頭を下げる二人に、船員がポカンとする。
「「少し感情的になってた、から…」」
そっと顔を上げると、予想以上の近さに、お互い何も出来ず、ただ黙ったまま顔を赤く染めた。
恥ずかしさのあまり、スッと視線を外したルーシィだが、その為、ブレイブが自負のことを熱の籠った瞳で見つめ続けてみることに気付かなかった。
ルーシィの頬に向かって、ブレイブの手が伸びた瞬間…
「ぅあっ!?」
「きゃっ!?」
「いつまでそうしてんだよ!折角仲直り?したんだし、辛気臭ぇ顔すんなよな!」
二人の肩に腕をまわし、ケラケラ笑うラックが登場したのだ。
「おいコラ、ラック。てめぇ、ワザとか?」
「ん?何がだよ?んなことより船長ー!」
ニマニマしながら船長を呼ぶラックにこめかみがピクピク動くブレイブ。
この二人のやり取りについ懐かしさを感じつつ、気まずさを払拭出来た達成感から、ルーシィは一つ溜め息をついたのだった。
「二人が仲良くなったし、宴会にしよーぜー!」
「え、今お昼なのに…」
「いいだろう」
「「「「いよっしゃぁぁぁああ!!!!」」」」
一気に騒々しくなる船員と、酒臭くなってゆく甲板に、ルーシィは先程とは別の意味で溜め息をつくのだった。
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