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2
後数十メートルで水面に顔が出せるか?
だんだんと明るくなる海に、外はきっと昼なのだろうということが分かった。
足の使い方(?)にも慣れてきた頃だ。もう少しスピード上げてみっか。力を入れようとしたその時…
「ぅお!?」
横波に体が揺れた。
波というより水圧…か。
振動の先に目をやると、一部の水の流れが、円を描いて上昇しているようだった。あれが海の外に出たら、とんでもないデカさの水柱になりそうだな。
…などと悠長に考えた自分を、後々呪いたくなるのを、今のグレイには知る由も無い。
水の流れを目で追った先には、大きな黒い影…形からして船だということは容易に分かった。
水の流れ的に、直撃はないだろう。なら大破の心配はないとその船を横目に海上を目指そうとしたが…視界のはしに、何かが落ちるのが見えた。
積荷か…?
ジッと見るとそれは、紛れもない人型で…
「っ、!」
グレイは一目散にその人物…自分が最近気になって仕方の無い金髪の少女、ルーシィの元へと泳いだのだった。
***
「っ、ルーシィ…おい、ルーシィ!」
岩場に囲まれた砂浜にルーシィを引き上げる。
「ルーシィ、しっかりしろ!」
何度名前を呼んでも、少しも反応を示さず、返事がくることはなく…
力無く横たわる姿にぞっとした。
「ちっ。やっぱ、人工呼吸しか、ねぇ…よな?」
人工呼吸。
頭を過る邪な考えに顔が赤くなったのがわかる。
「ルーシィのため、だ…」
そうだ、これには人命がかかっている。少しの遅れが、命取りになるんだぞ。
例え、相手が想い人でも…相手はオレを何とも思っていないとしても…
「……悪ぃ、ルーシィ…」
そっと、肩を掴む。
海水に濡れたせいで、いやに艶かしく見える唇に、生唾を飲み込む。が…
「あた、し…生きてる?」
脱兎の如く離れた。
「あ、もしかして、あたしを助けてくれたの?」
彼女の問いに頷くことしか出来ない。耳が真っ赤だということには触れないで貰いたい。
「ありがとう、ブレイブ!」
助かったわ!というルーシィの声にピタリと固まる。
明らかに男であろう名前…それに自分の中で、黒い感情が反応する。
「ちょっと、ブレイブ?聞いてる?」
「……れだよ」
「え?」
「ブレイブ…って、誰だよ?」
そう言って振り返る。
「うそ…」
そこには、目を見開くルーシィ。
金糸の髪に、丸い瞳。
血の気を取り戻した柔らかな頬。
そして…
「……グレイ…?」
自分を呼ぶ彼女が、愛しく思えるのだった。
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