「にゃんにゃんにゃーん」
 始まった動画、画面には黒髪で優等生っぽい顔つきの高校生。実際に優等生なんだろう、画面奥に映る棚にはトロフィーやら賞状やらが並べられていた。
「ハロー、ラブチューン」
 彼はそう言うと、握った手の甲、中指の付け根にキスをして画面のこちら側に向けて手を開く。まるで投げキッスで、その意図があってやっているのは間違いない。
 ラブチューン、と言うのは今まさに画面に映っている動画が投稿されている、共有型投稿サイトの事だ。
 愛にまつわるものならば、動画はもちろん、静画、音楽、ゲーム、小説、3Dモデリングのデータにチャットや掲示板、ラブ辞典(ユーザーが編集できる辞典形式の情報ページ/ネーミングが胡散臭い)その他様々なコンテンツがひしめき合っている。
 最近広まったサイトだが使用料は無料で、子供から大人まで自由にコンテンツを投稿し、利用している。
 この動画もその一つ。「青×春チャンネル」というシリーズで、主に黒髪の少年が、幼馴染だという茶髪の少年にあれこれする動画だった。
「二月二十二日は猫の日ということで、春(しゅん)に猫になってもらいます。ジャーン」
「んっ……んぐうううっ」
 効果音の編集と共に映し出されたのは、しっかりとした作りのオフィスチェアーに縛り付けられた、茶髪の少年、春だった。
 彼は今猿轡をはめられ、椅子の座るところに仰向けになり、左右の足はそれぞれ肘掛けに、腕は座面の後ろ側で縛られて拘束されている。
 黒髪の少年、青(あお)は椅子をくるりと回してそれを見せた。そういう、エンタテインメント的な気遣いができる少年だった。
「じゃあ春、早速尻尾を付けようか」
「んんんんっんんんんんん!!!」
 青の取り出した尻尾は三毛猫のような色合いで、その先端(なのか根本なのか、根本だろう)にはイボ付きの性器を模した凶悪な玩具が付いていた。
「いつも使ってるのより太いからね。いつもよりゆっくり慣らすから、怖がらないでね」
「ひっい……」
 怯える春をよそに、その尻は呆気なく晒される。窄まった窪みも、ふくよかに実った玉も、萎えてくてんとした竿も。
 青は竿を愛おしげに撫でると、ローションを取り出して指に付け、春の穴に触れた。くちゅくちゅと濡らしてから、少しずつ指を入れていく。
 これまでの動画で散々ヤりまくっているところを見てきたから今更そんなに丁寧に慣らさなくても……と思いがちだが、彼らの動画の真骨頂はここにあるのではないかと思う。
 少しずつ解されていく穴、とろけていく春の表情、青の興奮が増していくさまも、全て余すところなく晒されている。
 彼らはまごう事無き高校生らしいから、この動画も児童ポルノに含まれるわけだが、ラブチューン上で見るだけなら何故か規制の穴を潜り抜けて犯罪にならない。
 難しいことはわからないがこのサイトの都市伝説では、ラブチューンのコンテンツはいくら投稿しても、利用しても、パソコンにそのデータが残る事がないという。つまりサイトの存在からして証拠として残らないというわけだ(もちろん、スクショやDLをすればデータは手に入るが)。
 そんなわけでアダルトコンテンツを含めた様々なものが無法地帯となっている。それでもこんにちもなおサイトが運営されているのは、そういう事なんだろう。
 噂では超天才ハッカーがAIに愛を教えるために作ったサイトであり、ありとあらゆる攻撃や捜査も寄せ付けないとか。
 そんなことを考えている間にも、春の穴は慣らされて、すでに青の指を三本も受け入れていた。
 ローションでとろとろに濡れ、いやらしく口を開いた穴に思わず生唾を飲んだ。
 猿轡のせいで上手くしゃべれない春の、微かに聞こえる喘ぎ声の扇情的なことといったらたまらない。
 青×春シリーズの始まりと言えば、「幼馴染が勝手に不良になったのでお仕置きに利尿剤飲ませたらこいつはすげえや!」という内容。
 その頃の春といえば不良らしさを出そうとツンツンして口調も荒々しかった。
 それがどうだろう、今は必死に声を堪え、鼻を通る甘い声がマイクに拾われ、クンクンと鳴いている。
 ああ、もっとめちゃくちゃに犯してあげたい。もっと快感にとろかせて、泣かせてやりたい。
 視聴者の興奮は否が応でも高まる。
 そんな時に、ぬぽっと指が引き抜かれた。
「んっあ……」
 春は軽く仰け反って、甘い声で喘ぐ。
「それじゃあ春、可愛いにゃんこになっちゃって」
「んっ」
 再び春の穴が、イボ付きの凶悪な玩具に押し開かれていく。ヒクヒクと動く淵を巻き込んで、ズブズブと深く突き刺さる。
「くあっ……はっ……」
 春は目を見開き喘いだ。腹の上で揺れる性器が、先走りを零して濡らした。もう殆どイってるようにも見える。
「俺の可愛い子猫ちゃん? 尻尾気持ちいいねえ?」
「んああ……」
 青が恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく言いながら、根元まで入った尻尾をぐるりと回す。
 春が上げた声は発情期の猫のそれだった。半泣きになって潤んだ瞳は、どこか期待で輝いているようにも見える。
「はは……可愛すぎる」
「んっ……くああっ」
 ずるっ、じゅぷん。青の手が尻尾を握り、浅く抜いて深く突き刺した。春の足指はピンと伸びてイっているようにも見える。
「可愛い。春、ほら、もう一回」
「んんっ……んああっ、ああっ、あああっ」
 ズルっ、じゅぷん。優しい律動は何度も繰り返される。
「ひぐっ……ぃぐっ、いぐいぐっいいっ……」
 玩具で前立腺を押しつぶされているのだろう。射精する性器が中から揺さぶられ、腹に精液をまき散らした。
「ひああっあっーった、いった、ひったかあ、やああああ」
 イったばかりの春を更なる快感が襲う。先程までよりも早く尻尾が動かされていた。春は首を振って、それから仰け反り果てる。
「やあっ……も、やっあ、あああっ」
 遂には泣き出した春の性器を握り、先端を親指で擦る。同時に尻尾も抜き差ししながら、青の快楽責めが止まらない。
「ああああっ、あっ、あーっ、あーっ」
「もう一回、もう一回」
「ああっ、く、あああ」
 潮を吹いた春の性器を、それでも可愛がり続ける。二度、三度潮を連続で吹いた春は、全身を弛緩させ、目は虚ろだった。
「可愛い猫でしたね。春、可愛かったよ。ちゅっちゅっ」
 気付けば一時間近い動画のシークバーも終わりに近づいていた。ぐったりする春の額に、青がキスをする。画面にはいつもの締めエンディングが流れる。これまでの動画やチャンネル登録の広告だった。
 それからほんの一瞬のおまけが始まる。視聴者にとっては、割りと「ここからが本編」的なところがあった。
「可愛いくできたから春にはこれからご褒美に俺のちんちんあげます」
 青はそう言うと、シーユー、とキツネの手をしてカメラに振った。
「やらっ、も、おかしくなるっこわれるっああっこわれっあああーっ」
 動画加工で少し滲んだ画面。青が挿入するのがほんの少し見えて、春が喘ぎながらフェイドアウト。
 再び再生ボタンを押して、ついでに連続再生モードにしておく。
 ああ、ほんとこのコンテンツ、たまんねえ……。
終わり


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補足
かき生の派生
いつか青×春シリーズも書きたいっス(と想い続けて3年くらい経った)

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