隣の関くんから、隣にいるくせにラインが送られてくる。ピプン。
『今日ホワイトデーだけどお返しすんの?
 ホワイ?何言ってんの関くんてば。
『やだなあ、チ◯コなんて卑猥なもの貰ってないんだから返す相手もいないしむしろ関くんくれてもいいのよ
 と返事をしてから、なにか頭の隅に引っかかるものを感じた気がしたが、多分昼飯の魚の骨だろう。
『そういえば穂高さんバレンタインデーにチ◯コ貰ってたよね、卑猥な意味で
『やめてください記憶にございません
『穂高の言ってた褐色爽やか系イケメンて、三列後ろにいるあいつじゃね?
 は?
 は???
 言われて後ろを振り返り、あり得ないものを見つけてしまった俺は、再び前を向き、そして後ろを振り返る。丁寧な二度見をした。
「っひぇっ?!」
 思わず変な声が出る。背筋がゾワッとした。あれは悪夢、あれは悪夢。とんだトラウマが蘇る。
『いつからいたの?気づいてたの?
『一月くらい前から?
「それバレンタインのときくらいじゃん最初からじゃん」
 思わず突っ込みを入れてしまい、講義中だった講堂は、突然抗議をしだした俺に総員唖然となっていた。
「何の話だ穂高ー。っかえれ!」
「すいあせーん」
 与野屋(ヨノヤ)准教授が、か、に重きを置いてマイクで叱ってきたので俺は謝った。そして何事もなかったかのように講義は再開する。
 噂だとアラサーの色気が滲み出だした与野屋准教授だったが、今年もチョコを一つも貰えなかったらしく、バレンタイン及びホワイトデー関連の話が出るとキレるらしい。
 チョコの何がそんなにいいのか。
『で、どうすんの?お返しすんの?
『いや、しないし。あれは夢だし。ていうかむしろ俺がお詫びされろだし。ていうか夢だし。
『www
 ワールドワイドに芝を生やした関くん。そこでラインは一旦終了された。

 講義を終えてふと振り返ると例のチョコ野郎はいなくなっていた。むしろあれは俺と、俺の恐怖が感染した関くんの幻覚だったのではないかと思う。そういうことにしたい。
「あれ、いなくなってんね」
「いない?誰が?誰もいないよ最初から」
「いい加減諦めろよ。あいつ、大栗(オオグリ)っていうらしいよ」
「そんな情報イラナイヨ!」
 まったくどこからそんな情報を得てくるのか。そもそも同じ大学の、同じ講義を受けていた事を知らなかった事実に驚きだった。
「家帰ったらまたいるかもね」
 ケタケタ笑う関くんを俺は睨みつけた。そういうこと言うとね、立つんですよフラグが。
「んじゃおれバイトだから。穂高、ハッピーホワイトデー」
「なんだそれ初めて聞いたわ。バイトに変な客が諸手を挙げて押しかけろ!」
 関くんに呪いをかけつつ俺は帰路につく。
 関くんが変なことを言うから、少し怖かったものの、オンボロアパートに着くも誰もいなかった。そりゃそうだ、あの日のあれは夢だったんだ。

 部屋で暇を持て余しつつパソコンで動画を見ていると、ピンポーンとドアベルが鳴らされた。
 ア◯ゾンで何か頼んでたっけ?
 そんな軽い気持ちでドアを開けた俺は呑気すぎた。否、ノン気すぎた。違う、ごめん、うん。
「穂高さん」
「っひぇっ?!」
 本日二度目の変な声。開けた扉を閉めようとすると、大栗のでかい身体が突進してきて、か弱い俺は押し倒された。
 早い、早すぎる。出会って三秒で押し倒された。
「や、やめろっ、けけけ、警察呼ぶぞ」
 俺は恐怖で目を閉じつつ、自衛のために身体を丸め、腕を振り回してガードする。でも当たらない。恐る恐る目を開けると、俺の上に馬乗りになった大栗は腕の当たらない位置で俺を見つめていた。
 なにこれ俺の一人相撲すぎる。
「大丈夫、穂高さん。怖くないから」
「だから怖いよ?!違う意味で怖いって言ってんだろ?!やめろデジャブ感じちゃうから!セリフ使い回しと思われるから!」
 俺が何を言おうと大栗は気にせず、俺の手を掴んで頭の上に押さえつけた。やはり力が強く、奴の手を振り解けそうにない。
「この間は穂高さんのお腹いっぱいにチョコを注いであげたから、今度は穂高さんのミルク、お腹いっぱいちょうだい?」
「ほえ?」
 頭が理解する前に、大栗の手が俺のズボンを弄り始める。ジーパンのチャックをひと撫でされてくすぐったい。それからゆっくりと引き下げられる。
「ま、ま、まてよ、やめろよ」
「待てない、止めない」
 どらげない?
 やめて、俺の混乱しきった脳みその悪ふざけやめて!そのネタ古いから!
 違う、そうじゃない。パニックで頭がぐるぐるして痛くなる。もう嫌だ、なんでこんな目に遭っているんだ。なんなんだこいつ。
 お前、チョコだったんじゃないのかよ……!

「あ、あ、っん……っっ」
 大栗が自分のズボンのベルトを外し、俺の腕を、胸の前で手を組ませる形に拘束した。最初こそ口でベルトを外そうとしたが金属を噛むのは気持ち悪かったし、俺のパンツから丁寧に取り出したナニを優しく舐められてそれどころじゃなくなった。
「ふっ、あ……っ」
 ちゅぽちゅぽと恥ずかしい音を立てながら大栗がナニを舐めしゃぶる。それこそキャンディーでも舐めてるように、美味そうに舐めてやがる。卑猥。
「れ、れちゃっん…っ」
 頭がほろほろにとろけて俺はもうイきそうだった。すると大栗は先端を咥えて舌先が小さな穴をぐりぐりと刺激する。竿を支えた右手親指は裏筋を擦りあげ、イけよイけよと責め立てる。
「ふっっ……っくふぁ」
 びくんびくんと跳ねながら果てると、大栗は強く吸い付いて余さず全部飲み干した。だけじゃない。舌と指で亀頭をこれでもかと擦り続ける。剥き出しの性感帯がゴリゴリに擦られて俺はアヘアヘしながら泣いた。泣くほどの快感が止まらない。
「うえっひえっ、えっんんんっくひぃっいいいい」
 プシュアッ。
 噴き出したのは精液でもおしっこでもない、なにかだった。気持ち良すぎてなんでもよかった。噴き出した潮の向こう側で大栗が微笑んだから、俺も微笑んだ。
「穂高さんのミルク、いっぱい搾り取るからね」

「っあ、あっ、すげっ……っ」
 ずちゅっ、ずちゅっ、濃厚に絡みつく内壁がとろとろの液音をさせて卑猥に鳴いた。
 大栗は今俺の腹の上で踊るように、俺のナニをケツで咥えて上下に動いた。
 そのテクは鬼かと思うほどで、出たり入ったり締め付けたり緩めたり、腹で踊るのは大栗なのに、俺は大栗に躍らされていた。
「い、んっ、イっく……」
「っん」
 俺がイくと言うと大栗は深くまで咥え込み、小さく呻くと、どうやってるのか中が痙攣したように震えて締め付ける。それがまた良くて、一回の射精が長く長く続いた。
「ん、ん、もうでないぃ」
 何度繰り返されたのか、俺のナニも俺自身もへとへとで、身体は怠く眠気が襲ってきた。
「穂高さんのミルク、もう空っぽ?」
「んん……もうない」
 心なしか小さくなった俺の玉を大栗の手が包み、親指が圧してくる。きゅうっとした痛みと不安と快感がないまぜで襲ってくる。
「ないっ、だめ、つぶれる」
 俺女の子になっちゃう。怖くて呻くと、大栗が小さく笑った。それは困るね、と大して困らなさそうに笑った。
「じゃあ穂高さん、最後にください」
「なにを……?」
 もう出すものは出し切った。俺が聞き返すと、大栗がヘソの下を手のひらで押した。
「う、ううう」
「おしっこ」
 そんなもの欲しいなんて。舌なめずりする程欲しいなんて。
「あ、あっあ、」
 俺はいつもと違う感覚に、ぎゅっと目を瞑った。ぶるっと身体が震えて、長い放尿が続く。
「ふあ、あ……」

「という夢だったらよかったのに……」
 次の日、関くんの隣で俺が嘆くと関くんが俺の頭を撫でて慰めた。その手が払われて、違う手が俺の頭を撫でる。
 反対隣には大栗が座っていた。にこにこしながら撫で続ける。
 だから、お前、一体何者なんだよ。

終わり

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