30歳まで童貞を貫いた男は魔法使いになるという。俺は今日でめでたく魔法使いになった。全然めでたくない。
 誕生日なのに彼女はおろか、祝ってくれる人もいない。悲しくて街を練り歩くと、もっと悲しくなってきた。
 そこの街行く不良は、きっともう魔法使いになる資格を無くしてしまっているんだろう。リア充め……。
 半分近くも年下の男子高校生に心の中で嫉妬した。じろじろ見すぎたのか、男子高校生は見ていた携帯の画面から顔を上げ、ちらりと俺を見た。そして興味もないらしく、また携帯に視線を戻す。
 ちくしょう……あんな不良、猫にでもなってしまえばいいのに。

「にゃー……っ」

 嘘でしょう?
 俺は目をこすり耳を引っ張り頭がおかしくないかを確かめた。
 今目の前で不良男子高校生がにゃーと鳴いた。そんな、まさか。
 しかし、不良男子高校生は驚いて口に手を当てている。自分がなにをしたのか、もとい、猫のように鳴いたことに驚いている。
 ま、まじかよ。でも信じられない……、もう一回、もう一回にゃーと鳴いてくれ。

「にゃー……んん、」
 本気か?
 不良男子高校生がにゃーと鳴いた。いやいや、何の気なしに、不良男子高校生がにゃーとでも鳴いたら面白いだろうと思って念じたばっかりに。
 耳を赤く染めて、にゃーと鳴いてしまう不良男子高校生が可愛すぎてやばい。
 もう一回、もう一回だけ……!
「……にゃー……」
 可愛いとか言うレベルじゃねえ。不良男子高校生が羞恥に耐えながら猫のように鳴く。やばい、やばすぎる。ゾクゾクする。
 だからどうか、最後にもう一度……!
「お前なあっいい加減にしろよっ」
「うっうわあ?!可愛く猫のように鳴いていた不良男子高校生が怒りだした!!」
「なんだその説明口調……まあいい、来い」
 不良男子高校生、略してFDKが真っ赤な顔でキッと睨んで俺の胸ぐらを掴んできたかと思えば、俺の手を握って黙々と歩き出していた。
 当たり前だがどこかイライラしているようだけれど、耳がまだ赤いのが可愛い。
 もう一度鳴いてくれないかな。
「もうやらねーよ馬鹿野郎。なんだFDKって」
「え?俺、口に出して言ってたっけ」
「言ってない。それにオレは不良じゃない」
 いつの間にか薄暗い路地裏に来ていた。不良男子高校生は言いながら、目の前にある重たげな鉄の大きな扉を押し開く。
「あんた勘違いしてるみたいだけど、30歳童貞なだけじゃ魔法は使えない」
「えっ?!でも、でもさっき」
「さっきのは、オレがテレパスで遊んであげただけ。あんたの力じゃない、オレの力」
 そうだったのか、とがっかりした。でもじゃあ逆に、彼は自らにゃーと鳴いてくれたのか。そう思うと、それはとても可愛らしいにゃーだったと、胸が熱くなった。
「ば、か野郎……さっきのは忘れろ。あんた魔法使いになりたいんだろ?」
 彼と話すのに夢中で気付かなかったけれど、扉が開かれるとそこは廊下になっていた。古い寄宿舎のような、左右に個室の扉が立ち並び、床はワックスの落ちたギシギシと軋むフローリングになっている。
 真っ直ぐ伸びる廊下の先には窓があった。遠目でよく見えなかったが、明らかに、日本の街中ではない風景が見えた。どこか、小高い丘のような。
「オレが魔法使いにしてあげる」
 とん、と肩を押され壁に押し付けられる。彼の不敵な笑みに思わずキュンとした。
「魔法使いになる本当の条件。30歳童貞、非処女」
 彼が舌なめずりしながら言った。それが嘘か本当かはわかりはしない。けれど、怪しく微笑む彼から目が離せなくなった。
 ああ、せめて、せめてもう一度だけ、にゃーと鳴いてはくれないか。
「ったく、しょうがないなー……にゃあ」
 それから猫は、もとい魔法使い系不良男子の彼は俺に噛み付くようにキスをした。




「ほら、なんでもいいから願ってみなよ」
 ベッドの上で賢者タイム。彼が言った。
 なんでもと言われても……。
「猫になあれ」
 ぽんっ。
「うわっ!……お前、ほんと好きなだな」
 俺が願うと彼の頭に三角の耳と、お尻からは尻尾が生える。
 魔法が、本当に使えた。
 そんなことよりも、だ。
「か、か、か、可愛い!!っ、あいててて……」
 抱きつくと、酷使させられた腰と穴とアレの先端がひりひりズキズキする。若いって怖い……。
「そうだ、あんたの魔法、オレのセーシが中に入った状態じゃないと使えないから」
「え?!」
「さあ、もう一回、可愛いネコになってもらおうか」
 彼はまた怪しく笑って俺を押し倒す。
「も、もうむりぃっ」

終わり


トッカントッカンしちゃったんでまたいつかもっとちゃんと書けたら書きます。
補足
魔法使いはFDK
FDKの精液が中に入ってる状態だと魔法が使える
主人公はただの30歳童貞非処女


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