小さな箱に赤いラッピング、中には愛とか希望とか。
<ちょこ>
手作りはさすがに重すぎるだろう。高すぎるのもだめだ。シンプルで、ちょっとだけいいやつを。
渡すつもりはなかった。なにせ男同士だし、彼は両手いっぱいにチョコを貰っていたし。
深い意味はない、ほら、今時友チョコなんて言うし。
頭の中で練習しても、まるで上手く言える気がしない。俺は彼のことを、好きになりすぎた。
「品野(しなの)はおれにチョコくれるの?」
「え、あ」
向こうから聞いてくるなんて想定外すぎる。頭に反芻した言葉だって、どこかに消えて無くなった。
「おれ、チョコはいらないかな」
「あ……」
彼は天使の笑顔で言う。俺に死の宣告をするときは、どうか彼の天使の笑顔でお願いしたい。
「ところでおれさ、」
肩に手を置かれ、俺の心臓が一気に高鳴る。彼はそれをわかっていて、俺に触れてくるんだ。
「スカトロに興味あるんだよね。でも本物って汚いじゃん」
「え……うん」
スカ……?この天使なに言ってんだ。そんな困惑で曖昧に応えていると、彼は耳元に囁いた。
「品野がチョコをケツ穴からひりだすところ、見てみたいなあ」
「ああっ、まって、あああ、やだっあ、あっあっ」
お腹いっぱいのチョコレートが出て行こうとするのを感じた。出ちゃう、嫌だ、やめて、そう思って尻の穴に力を入れるのに、意に反してチョコレートはコロンと落ちた。
「ははは、品野の甘いうんこだ」
彼は天使の微笑みで、俺が産み落としたチョコレートを指につまむ。ああ、やめてほしい、クンクン匂いを嗅ぐのは。
「品野?2個目が出そうだよ」
「んっ、ん、触っちゃだめ、」
教室の机の上、下半身裸で俺はなにをしているんだろう。
彼は椅子に座って俺の股間を眼前に、まじまじと見つめている。変態だ、天使の顔をした変態だ。天国すぎる。
「ふふ、品野。我慢しても、チョコレートがゆっくり出てきてる」
「ん、ふ、う、うう、」
堪えてるつもりでも、チョコレートが穴をゆっくり押し開いて出てくる。ごめん、彼にチョコレートを渡した女子たち。君らのチョコレート、全部俺の中に入れちゃったんだ。彼が。
「甘そうだね」
「ふあっ?!あ、んんっや、だめ、だっ」
チョコレートが小さく上下に揺れたかと思うと、熱いものが穴の縁を撫でた。それはくるくると円を描き、やがて中心にずぷりと埋められる。
それは紛れもなく、彼の舌。
「んふ、とろとおになってう」
「あっあ、しゃべっ……」
くちゅくちゅと音を立てながら、彼が舌を抜き差しした。その弾みでコロコロとチョコレートが落ちていく。
おかしくなりそうだった。気持ちよくなっていたし、チョコレートを産み落としているし、憧れの天使にケツ穴を舐められている。
ここはやっぱり天国だった……?
「品野、だめだ。我慢できない」
「んっ?!あっっく、ぁっあ!!!」
急に質量を増して、ケツ穴に太いものが押し込まれる。ああ、そんな。チョコレートを掻き分け押し込まれたのは、天使の顔に似合わないそれはそれは立派な肉棒で。
「中、ぐちゅぐちゅに、蕩かしてあげる」
「あっあっあっ、」
もう脳みそがぐちゅぐちゅに蕩けてるみたいだった。
甘い甘い、チョコレートのキスが降り注ぐ。さっき産み落としたチョコレートを、彼と俺の口の中で一緒に溶かした。
「品野、チョコレートフォンデュ」
「ふはっ……」
チョコまみれの肉棒を目の前に差し出されれば流石に吹く。仕方ないから舐めてあげれば、天使は気持ちよさそうに微笑む。
「ねえ品野。最後にもう一つ、食べようか」
色んな意味で腹いっぱいだったが、言われるがまま、されるがままに俺は頷くしかない。彼はガサガサと包みを破き、チョコレートの入った箱を開ける。
どこか見覚えのあるそれは、俺が用意したチョコレートだった。
「品野、あーん」
チョコフォンデュされた肉棒から口を離し、あーんと開くとコロンとひとつが放り込まれた。と思った瞬間影ができる。
目の前の水晶体に俺が映っていて、それはゆっくり近づき、唇が唇と被さる。
チョコレートがとろとろに蕩けるまで、それを飲み干すまで、甘い甘いキスが終わらない。
「次は何を産んでもらおうか」
天使の小さな囁きを、俺は聴こえなかったふりをした。
終わり
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