少し値段は張るものの、完全個室、防音完備、漫画・DVDの貸し出し、軽食メニューも揃ったネットカフェがあった。そこはお気に入りで、足繁く通っている。
 たった2畳の個室に、パソコンと簡易ベッドがある。何したって構わない。そう、オナニーだって。
 俺はパソコンでAVを観ながら週末のお楽しみをしていた。もはや、ここで抜くのが日課だった。
 30歳童貞男の、悲しい週末だ。
『あっあっあっあっ』
「ん、っ」
 画面の中の女がイくのを観ながら手を早める。イく、イくイく。ティッシュを用意しながらフィニッシュ。
「くっ……う」
「気持ち良さそうですね」
 余韻に浸るその最中、背筋がゾッとした。いつから人がいたのか、椅子に座る俺の肩にそっと手を置き、耳元で舌が舐めるように囁かれる。
「おじさん、いつもここで抜いてましたよね。ボク、いつも見てましたよ」
「は、な、なに、を」
 手がするすると身体を撫でた。薄いシャツを、興奮してピンと勃った乳首をクルクルとなぞられる。
「完全個室とは言っても、監視カメラは付いてますから。ホラ」
 背後から伸びた手が、天井の隅を指差す。そこを見上げると、丸い黒塗りのランプのような物があった。
「あ、もちろん今は切ってありますから、安心してください」
「ひっうう」
 なにを安心したらいいのか、男の指が乳首をきつく捻り上げる。思わず声を上げると、男の手はますます調子に乗った。
「凌辱物、大好きですよね。でもそれってぐちゃぐちゃに犯すのが好きなのかな」
「さ、さわ……」
「本当はぐちゃぐちゃに犯されたいんじゃ、ないの」
 男の手が股間に伸びる。それを防ごうと手を伸ばすと、その手を掴まれた。
「安心して。脳の奥まで、犯してあげる」
 そこでようやく見えた男の顔。
 それはいつも受付に座る、高校生の店員だった。

「は、あ、あ、あっ、あ、」
「かわいい、おじさん」
「おじさん、て、ゆ、な」
 簡易ベッドに転がされ、膝まで脱がされたズボンとパンツ。店員、木崎(キサキ)くんの手が俺の手ごと俺のナニを扱いた。
「ごめんごめん、かわいいよ、里人(リヒト)さん」
「んんっく、は、」
 自分の半分も年下の男が、俺をかわいいとからかいながら、俺のナニに頬擦りをし金玉を甘噛みする。
 そんな、想像したことも世界に急に叩き込まれ、俺はめまいがするようだった。
「里人さんのおちんちんは、膣もフェラもまだ?オナホくらい使ったことはあるでしょう」
「んんんっ」
 甘く皮の被ったそこを無情に剥かれ、顔を出した敏感な亀頭を指がくりくりと撫でる。それだって漏らしそうなほど刺激的なのに、木崎くんの爪が尿道を軽く抉った。
「里人さんの身体、もしかして全部初めて?それ、死ぬほどソソる」
 舌舐めずりする、木崎くんの表情にゾクッと身体が震えた。
「里人さん、もう二度とひとりじゃ満足できないくらい、犯してあげる」
 心のどこかで、それを喜んでいる自分を感じた。

 ローションでぬるぬるの木崎くんの指が、排泄孔でしかない下の穴を、ぬるぬるぬるぬると何度も出入りしている。
 それだけで気が狂いそうなのに、時折指を曲げて中を叩く。気持ちいいのか悪いのかわからない。
 木崎くんに犯されようとしている、事実に興奮していた。
「里人さんのお尻の穴かわいい。ボクのこと、どんどん受け入れてくれる。ほら、2本目だって、気持ちいいでしょ」
 にゅるっ、質量を増した異物に身体は反応したけれど、脳はどこか麻痺していた。拡げられていく穴が、気持ちいいなんて。
「里人さん、もうボク、我慢できない」
「まだ、だめっ、だ、だって」
「だって、里人さん、かわいすぎる」
 俺の言葉を遮って、木崎くんの大きく育ったそれがあてがわれる。俺の半分も年下とは思えないほど、使い込まれたそれはドクドク息衝き、俺の中に入りたいと主張した。
「は、ああ、っ、」
 見せつけるようにゆっくり、深く深くまで入り込む。
 ああ、俺、木崎くんに犯されてる。
 拡げられた穴に指を添えて、淵を木崎くんにぐりぐり擦られる。おかしくなる。犯されて、俺はおかしくなってしまう。
「はあ、里人さん、かわいい」
 息もできないくらいの俺を見て、木崎くんが言った。その目が泣きそうなほど心地良い。


「里人さん」
 なにもかもが終わって、ぽーっとしながらお会計。もう、週末が終わってしまう。
 後片付けは全部木崎くんがしてくれた。愛おしそうに俺の手を撫でる木崎くんがいなければ、木崎くんとセックスしたなんてまるで嘘のようだった。
「また来週、待ってるよ。ああ、でも」
 木崎くんは俺の、身分証として提出した免許証をクルクルと手の中で回した。
「ボクが待ちきれなくなったら、里人さんに会いに行っちゃうかも」
 名残惜しげに指が絡む。
 頭がチカチカとするようだった。溢れ出したアドレナリンが、彼との濃密な時間をフラッシュバックさせる。
「またね、里人さん」


終わり

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