友人、否、クラスメート、否、席が隣になってしまった嵯峨(サガ)に、ハロウィンパーティーへと招待された。
 南蛮かぶれやがって面倒くさい、と思っているのだが、行かないと明日教室で俺の机の中にチョ◯ボールときの◯の山がギチギチに詰まる呪いがかけられているらしいので仕方なく参加するしかなかった。
 場所は嵯峨の家。ハロウィンパーティーと言うにはなんの飾り付けもない、普通の一軒家。パーティーなのに他に客もいない様子。
 俺はひとつため息を吐いて、チャイムを押した。
 ピンポーン。
 ピッ。
『玄関開いてるからそっちで、例の言葉よろしくー』
「例の言葉ってなんだよ」
『ほら、トリックオアーってやつ。よろしくー』
 ブツッ。インターホンでの会話が強制的に終了されたので、俺は玄関へ。
 開いているという事でドアノブを握ると、確かに鍵は開かれていた。俺、仮装とかしてこなかったけど平気かな。
 そんな呑気な事を考えていた俺は、呆然と立ち尽くす事になる。
「ハッピー!ハロウィン!ほらほらほら、あれ言ってよあれ」
 玄関で待っていたのはテンションがぶち上げられた嵯峨。と、全裸で嵯峨に抱き着く、クラスメートの千馬(チバ)。
 俺に背を向けている千馬は頭に猫耳を付けていた。それ仮装のつもりなのか、だとしたらおざなりでついで過ぎる。
 突っ込みどころはそこじゃない事はわかっていたが、現実から逃避したかった。
 その間にも嵯峨は俺に視線で早く早くと促してくる。この得体の知れないプレイが終わるというなら、俺は例の言葉を言おう。
「……とりっくおあとりーと」
 だだ下がりのテンションだけどいいのか。そんな不安なんて抱いたほうが馬鹿らしかった。
「ほら千馬、とりっくおあとりーとだって。お菓子出さなきゃいたずらされちゃうよ?」
 嵯峨が千馬の背筋に指を這わせながら優しく耳元に囁いていた。いや、俺はお菓子が貰えなくともいたずらなんてしたくない。断固。
「ん、んん……」
 千馬が小さく呻きながら身体をぎゅっと縮こませた。なんだろう、と思っているとその様子に察しがつく。
 息んでいる。身体に力を入れ、健気に息んでいた。
「ん、あ、あ、あ、」
「志賀(シガ)、手出して」
 嵯峨に腕を掴まれ俺の手が導かれた先は、千馬のケツの下。うわ、これは、うわ。
「んあっ、あ、あっやだ、だめっ」
「だって千馬遅いんだもん」
 穴の縁をぷっくら膨らまして顔を出していた丸いものを、嵯峨は指で押し上げた。千馬は背筋を仰け反らして高い声を上げる。
 嫌だといいながら、酷く悦んでいるのが伺えた。
「志賀が待ってるよ?お菓子、あげなきゃ」
 俺は待ってない。断じて。
「ふぅ、ん、んんっ」
 千馬は嵯峨に強く抱き着き、またいきみだす。さっき殆ど出しかけたおかげか、それはやすやすと出てきた。
 ころん、と手のひらに落とされた、茶色の丸いボール。ぽろん、ぽろんと決壊して次々降ってくるきのこの形のそれ。
 ああ、そう、ふーん。嵯峨は明日これを俺の机に詰め込むつもりだったんだね。
 頭は冷静に現実を見るのを辞めた。
「はあ、はあ、はあ……」
 全部出したのか、手の上がこんもりチョコレートになった。嵯峨は千馬に再び声をかけた。
「志賀、これじゃ足りないって。まだあるよね?」
 足りてる。足りすぎてる。
 俺の心の叫びを聞いて欲しいが、嵯峨が聞いてくれるわけもない。
 抱きかかえていた手を離し、千馬は自分の足で玄関に立った。裸足だった。
 そしてくるりと振り返り、千馬はむき出しのナニを握る。
 はあはあと荒い息が聞こえた。上気して赤らむ頬と蕩けた瞳に、俺はゴクリと生唾を飲み込む。
 薄く開いた口から、切ない喘ぎがこぼれた。

 とろり、俺の手の上のチョコレートの上、白くて甘い汁が垂れ落ちる。

「よく出来たね、千馬」
 嵯峨が千馬に労いのキスをする。
 俺自身の用済み感を察して、俺はその場を後にした。

 この手の上の甘い汚物、どうしよう。これから電車に乗るのに。
 なんだかもう、これは酷い。としか言えない、ハロウィンだった。

終わり

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