寸止めオナニーというものにハマってしまった。イく寸前に手を止め、しばらく余韻に浸りながら治まるのを待ち、また手を動かす。寸止めを2回、3回と繰り返してから射精した時の快感は、普通にした時の比ではない。
 そうやって寸止めをを繰り返すうちに、射精が出来なくなっていた。イきたいのにイききれない。何度も擦っても絶頂に達せられない。
 あ、俺は取り返しの付かないことをしてしまったのでは?
 気づいた頃にはもう遅く、俺は半ばパニックになりながらシコり続けた。それでもイけない。
 そう言えば隣の家の兄ちゃんが医者だった気がする。俺は慌ててパンツを穿き、隣の家のチャイムを連打した。
 平日の昼間っから、普通いる筈がない。それでもチャイムを連打すると、数回目で中の人が出てくる。
「迷惑なんですが、なんですか」
 明らかに怒りを押し殺した風の隣の家の兄ちゃん。実は名前をよく知らない。表札には由平(ヨシヒラ)と書いてあるから、由平さんだろう。
 歳は20代後半、大学浪人した俺より5つくらい上だと聞いた覚えがある。
「あの、すいません、あの俺、俺射精出来なくなっちゃって、診てもらえませんか」
「え?いや、わけわかんないですし、ここで脱がないでください」
 切羽詰まった俺がズボンを脱ごうとすると、由平さんは驚きつつ、脱ぐのを止めない俺の手を掴んだ。
 グスグスと半泣きになった俺をソファに座らせ、由平さんは暖かい紅茶を手に隣に座った。
「とりあえずこれ飲んで、落ち着いて」
「す、すいませ……あつっぎゃああっ」
 思った以上に熱かった紅茶にびっくりしてティーカップを取りこぼし、それは股間に降り注いだ。
「熱い熱い熱い熱い」
「ああ、もう、僕が外しますから」
 慌てた俺はズボンのボタンすら外せない。由平さんがテキパキと外して、ズボンとパンツを脱がせてくれた。
「これは洗っておきますから。それで、なんですっけ?イけないとかなんとか……それでなんで僕のところに?」
 由平さんは俺のズボンとパンツを片付けると、再び俺の隣に座った。頭が少し落ち着くと、俺はなんて早まった真似をしたのかと恥ずかしくなった。
「いや……あの、はい、お医者さんだって聞いて」
「僕は養護教諭であって、お医者さんじゃないですし。仮に医者だったとして、人には専門があると思うんですけどね」
「ですよね……はは、は」
 乾いた笑いが虚しく響く。俺は居たたまれなくなって、萎えた自身と一緒に小さくなった。
「とはいえ、時々そういう子いるんで医療書読んだことはありますよ。診てあげましょうか、そこに寝て」
「え?え、」
 ちょっと診せてねー、なんて子供にするように優しく言われる。俺は身体を押されてソファに仰向けになり、由平さんはシャツをめくって俺のオレを診た。
「射精出来ない、んだっけ。それって勃起は出来るのかな?」
「あの、はい、あの……」
「いいよ、恥ずかしがらないで。先生誰にも言わないし、ってああ、すみません」
 つい学校での対応をしてしまったんだろう。にしても、シモの相談、結構多いのかな。
「殆どは夢精とか、精通が遅い・早い、そういう相談をされたりなんですけどね。最近は母子家庭や父親や歳上とコミュニケーションが取れてない子も多いらしくて。保健室の先生が男だから、相談し易いのかもしれないですね」
 言いつつ、視線は俺のオレに戻す。真剣に心配してくれているらしいが、そうなると俺はますます帰りたくなった。
「ちょっと待っててくださいね」
 由平さんはそう言うと違う部屋に移動し、そして何かを手に戻ってくる。箱とボトルだった。
「ちょっと触りますよ。ローションかけるから、少し冷たいかも」
 箱から取り出した薄い透明な手袋をはめ、俺のオレを掴んでローションを垂らした。ヒヤッとしたのは一瞬で、由平さんの手のぬくもりもあってすぐに馴染んだ。
「射精出来ないのはオナニーだけですか?恋人さんに触ってもらったりとかは」
「……いないです」
「そうですか。ちょっとイけるか試してみましょう」
 恥部を擦られながら心の恥部に触れられ、それらを事務的にさらっと流してくれるのはありがたい事だった。
 そして由平さんに擦られると俺はすぐに勃起した。
「亀頭擦りますよ」
「ん、んんっ、う、んあっあ、あ、それっ、んんん」
 由平さんは右手で俺のオレを支え、左手の掌で亀頭を撫でた。思わぬ刺激に、射精感より尿意に似たものを感じた。
「イけそうですか?」
「ん、っん、あ、おしっこ、おしっこ出る、う、」
「おしっこ出ないから大丈夫だよ」
 カリ首を親指で抉りながらなおも亀頭が擦られる。竿を上下に擦られ、身体がビクビクと反応した。
「ん、んんっん、あっ、ああっん……あ、」
 イけそう。そう思った瞬間に、身体の熱がスっと冷めていった。そしてみるみる萎えていき、亀頭を擦られた事でいよいよ尿意が強まった。
「あー、だめかあ。おしっこ出そうなら、一回トイレ行こうか」
「あ、はい……」
 ローションまみれの手袋を外して、由平さんが言った。俺のオレに付いたローションをティッシュで拭われる。また子供向けモードになっているけれど、由平さんは気付いていないらしい。
 由平さんは俺の手を掴んで、こっちだよとトイレまで案内してくれる。便座を上げた便器の前に立つと、後ろに由平さんも立った。
「うんち出そう?家でしてきた?」
「え?」
 見られていると上手く排尿が出来ない。後ろから手を伸ばされ、生の手が俺のオレを握った。
「してきたんなら、浣腸する必要ないけど。うんち、どう?」
「え、あの……え、して、ない、ですけど」
「じゃあ浣腸するね。ちょっと我慢してね」
「え、う、っあ……」
 由平さんの右手が俺の尻肉を割り開き、ブスッと細いものが穴に差し込まれる。冷たい液体が体内に広がる気持ち悪い感覚に身震いした。
 中身を注入し終わったのか、抜け出ていくそれにホッとした次の瞬間には次の浣腸が注入された。
「子供用だから、効き目薄いんだ。ごめんね」
「ん、は……」
 なにがごめんなのかよくわからないが、俺も頷くしかない。そうこうしているうちに、腹は痛み出す。
 効き目が薄いとはなんだったのか……。
「このまましばらく我慢してね。ティッシュで押さえとくから。おしっこ出た?」
「ん、出な……お腹痛い……」
「もうちょっと我慢しようね。おしっこもうんちと一緒にしちゃおうか」
 由平さんの口調に感化されて、俺も子供みたいになっていた。腹はぐるぐると音を立てて痛み出す。もう限界で、ブリュッ、と汚い音がした。
「もう我慢できない?」
「も、無理……」
「もうちょっと我慢しよう。お尻の穴に力入れてみようか。僕の指、ギュッてしてみて」
「ひっ、あ、っ、」
 少し奥に進んだ指を、言われずとも反射的に締め付ける。もう今にも出したいのに、由平さんの言葉は不思議と逆らえなかった。
「うん、上手だよ。そのまま、身体の向き変えようか」
 由平さんに促されるまま、ゆっくりと身体の向きを変える。腰を落として由平さんの腕を跨ぎ、由平さんに縋り付くように掴まる。
「はい、座ろうね。辛かったね、もう出していいからね」
 便器に座らされ、由平さんはそう言うとぬぽっ、と指とティッシュを引き抜いた。
 ああ、出る、出る出る。
 待ちに待った排便は勢いよく、穴を押し開きながら一気に出て行った。同時に、無意識に排尿もしていた。
 脚を開いて座っていたため、真正面にいた由平さんに全て見られていたと気付いたのは全て出し切ってからだった。
「ん、勃起してるね。排泄に感じるたちかな」
「ち、ちがいます」
 たしかに俺のオレはゆるく勃起していたが、さっき擦られた影響に違いない。
「いや、排泄に感じるのって正常なんですよ。はい」
 ティッシュを手渡され、それでケツを拭けと促されていることに気付く。至れり尽くせりで、少し怖い。
 ケツを2回拭いてからトイレを出て、由平さんに促されるまま再びソファに横になる。今度はなにをするのか不安でいると、顔にふわふわのタオルをかけられた。
「??」
 突然だったのでびっくりしてタオルを退けると、俺の脚側に座っている由平さんは子供向け優しいスマイルを向けてきた。
「恥ずかしかったらそれで顔隠しちゃえばいいし、持ってるだけでも意外と安心だから」
 ね。と、俺の手の上からタオルを握る。由平さんの手は熱いくらいで、大丈夫大丈夫と言われるとなんだかそんな気がしてきた。なにが大丈夫なのかよくわからないが。
「じゃあお尻の穴から前立腺触ってみるね。ゆっくりやるから痛くないよ」
 由平さんは再び透明な薄い手袋をはめると、先ほどのローションを手と俺のケツ穴に存分に垂らした。慣らすために、入り口を丁寧にぬるぬると撫でる。その感覚は気持ちいいとか悪いとか以前に恥ずかしいだった。
「勃起不全の治療に、前立腺を刺激する事があるらしいんですよ。勃起出来ないわけじゃないけど、いつもと違う刺激でなにか変わるかもしれないから」
「ん……んん、」
 にゅぷんにゅぷんと、指先が穴に出たり入ったりしながら言われてはなにも頭に入ってこなかった。浅いところを擦られ、なんとも言えない感覚になる。
「アナル、触った事あります?」
「な、ないです」
 由平さんは聞きながら、人差し指を奥まで差し込んだ。びっくりしてケツに力が入って指を締め付けると、中で細かく動いた。体内を触られる奇妙な感覚に、俺は「ふええ……」とよくわからない声が出てしまう。
「じゃあヨくなるまで時間かかっちゃうかな。前も触りますね」
「んんん……」
 言ってからの間が短いから殆ど不意打ちで俺のオレが握られ、上下に擦られる。適度に指を締めて擦るから、ひと擦りされるたびに絶頂が近付いた。
「いつもはどうやってオナニーしてる?先っぽより裏スジの方が好きかな」
「ううっ」
 由平さんは親指の腹で強めに裏スジを押し上げた。身体がビクビク震えてカウパーがコポリと吹き出す。それでもまだ射精には至れない。
「あ、あ、あっ、ん、んん」
 その一方でケツに入っていた指がいつの間にか二本、三本と増えていた。ぬるんぬるんと出たり入ったりするのは排泄に似ていて、恥ずかしいのになんだか気持ちいい。やっぱり俺、排泄で感じる奴なのか。
「お尻もヨくなってきたみたいだね。それで、いつもどんなオナニーしてるの」
「ん、ん、き、亀頭ぐりぐりするっあああ」
 言えばすぐに、亀頭を手のひらでぐりぐりと擦り付けてくれる。ビリビリとした刺激が身体を走った。
「尿道は?」
「ん、さ、触んない……んなああ、っああっ?!ひ、ひっ」
 触らないと言ったのに尿道口を指の腹がぐりぐりと抉った。そのまま爪を立てられ、痛いのに熱くて気持ち良くなる。
「尿道、すごく気持ちいいよ?」
「やだ、あ、やっあら、あ、あ」
 やだと言っているのに指の腹でぐりぐりして、爪で軽く刺激され、それを繰り返されて頭がおかしくなりそうだった。カウパーが吹き出して殆どイってるみたいなのに、射精出来ないのが苦しい。
「前立腺触るよ」
「へ、あ……ん、ん……」
 穴に差し込まれた二本指が腹側を探り、宣言通り前立腺を撫でた。思っていたよりも、じわっと熱くなるような、そんな感じだった。前立腺を触られたら頭がおかしくなるくらいヨがり狂うのでは、そう思っていたから少しホッとする。
「一回感覚掴んだら、抜け出せないくらいハマるからね」
 そう言う由平さんの顔は楽しそうに、歪んで笑っているように見えた。
「は、あ、……っ、」
「どうしようか。お尻だけじゃあまだイけそうにないけど」
 由平さんの指が的確に前立腺を叩いてくる。ぐいーん、と押されてもそこまで気持ち良くはないのに、なんだかヤバい、これは確かにヤバい、そう思った。
「イきたいよね?」
「あ……は、はい……」
 イきたいんだろうか。正直なところ、快楽責めで頭がほわほわしていた。でも由平さんに言われると頷いてしまう。イきたい、気がする。でも、なんかもう、気持ち良くてどうでもいい。
「どうしようかな……じゃあ、はい。自分でオナニーしてみようか。僕が前立腺刺激しててあげるから」
「え」
 由平さんは俺の手を掴んで、俺のオレを触らせる。だって、人前でオナニーするなんてそんなこと出来るわけがない。
「そうだ、目隠しすると感度上がるから目隠ししようね」
 当然、みたいに言いながら、俺の顔横にあったタオルを細長く畳んで俺の目元に当てる。結べるほど長くないから乗せるだけだけど、十分に視界は奪われた。
「僕の指、意識しながらオナニーしようね」
「ん……んは、あ……」
 言わずもがなだった。ケツにはめられた指は細かく振動するように前立腺を刺激する。さっきまでと変わらない動きなのに、俺は身体が熱くなっていくのを感じた。
「お手手が留守だよ、疲れちゃったかな」
 俺が動かせないでいる手を、上から手を重ねて扱き始める。始めの数回は促されて、そのあとは無心で扱いた。気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い。
「上手だね。そのまま」
「ん、ん、ん、っあ、んん、あ、あ」
 もう射精が近い。イく、イきたい、そう思っているのに、俺の手は止まった。瞬間、前立腺が強く押し上げられる。
「んんんっあっっ!!?」
 身体がビクンビクンと大げさに痙攣した。頭が真っ白になって、わけがわからなくなる。気持ち良い。どうしようもないほど、身体は絶頂を迎えた。
「イったじゃん。勿体無いから、このまま続けようか」
「ひっいいあああっだ、めえっあーっ、っくあ、あ、あ」
 イったばかりの身体にさらなる刺激が加えられる。由平さんが亀頭を擦り続けた。今日は散々そこを弄られていつも以上に敏感になっている。剥き出しの性感帯を擦られて、頭がおかしくなりそうだった。
「あああっおあらっな、ひいいいんっ」
 ぶしっーー。射精とは違う感覚。
「うん、気持ち良さそうでよかった」
 長く続く快楽に、呑気な由平さんの言葉なんて耳に届かなかった。

 気がつくと身体が拭われていて、汚れはなく倦怠感だけが残っていた。裸で由平さんの家で寝ている事を除けばすべて夢だったのかと思うくらい、普通だった。
「……はあ」
 俺は安堵のため息を吐いた。なにはともあれ射精出来たんだ。勃起不全にならなくてよかった。思わず俺のオレをなでなでする。疲れ果てて大きくなる様子はない。
「あれ、まだ足りなかった?」
「ひいっ?!い、いや、これは労いというか……」
 いつの間にいたのか、むしろずっと居たのか。声をかけられるまでソファの反対側にいたなんて気付かなかった。
「そうなんだ。じゃあ、お疲れさま」
 そう言うと由平さんは俺のオレをなでなでした。すると疲れているはずなのに、キュンっとしてちょっとだけ大きくなる。ばか。恥ずかしくて俺は手で隠すと、由平さんはクスクス笑った。
「イけてよかったね。でも前立腺の良さ知っちゃったし、多分もう一人じゃイけないかもね」
「え」
 そんな……でも確かに、ケツの中が未だ疼いているような気がした。
「またいつでもおいでよ。僕が、手伝ってあげる。大丈夫、先生誰にも言わないから」
 そう、耳元で囁かれた台詞は、今後の未来的によくない予感をさせた。

終わり



「……やあ、でも、やっぱり保健室の先生だけあって色々詳しいですね」
「え?ああ、あれ9割嘘だけどね」
「え?!」
「◯学生にあんなことしたら速攻で干されますよ。まあ、相談自体はありますけど」
「……」
「浣腸も嘘ですよ。用量変えるだけで中身は一緒ですから。あ、でも気持ち良さそうでしたね。また浣腸してあげましょうか」
 あ、この人相談しちゃいけないタイプの人間だった。気付いた頃には、後の祭り。

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