「はあっもう耐えらんねえ、薙(なぎ)、もうやだよ俺ぇ」
 ガチャガチャと乱暴に扉が開かれ、奴が中に入り込む。隙間から差し込む久しぶりの光も、すぐに扉が閉められ再び暗闇に戻った。
「薙、薙、薙」
 迷子の子供にでもなったように何度も名前を呼んで、頭を押しつけてすりすりと頬擦りした。
 そのままの勢いで首や胸に舐めしゃぶり付いてくる。身長で言えば190近いのに、泣きじゃくる赤子のよう。
「んん、ふあ、薙のにおいする」
 身体中を這い回る手の動きがなんだかいやらしい。
「んー……はあっもしかしてお漏らしした? すげーくせえんだけど」
 ケラケラ笑いながら再び吸ったりキスをしたり繰り返す。
「ん……」
 不意に股間を撫でられてビクッと震える。奴の言う通り、漏らして湿ったそこを指の背が何度も往復する。
「ははっ、ぐちゃぐちゃじゃん。もしかしてさっき漏らした?」
 ずっと暗闇の静かな中にいるから、さっきがいつなのかわからないが、粗相をしてしまったのはそんな遠くない過去だった気もする。
「まあどうでもいいか、そんなの。薙、セックスしよ、ちんちん入れるよ」
「んんっ、んぐっ、うう、う」
「相変わらず狭い穴。でもあんま締め付けないなー、もうガバガバになった?」
 ずるっ、ずる、決して気持ち良いとは言えない衝撃が肛門を襲った。潤滑油も無しに性器を押し付けられ、奴の欲望のままに揺さぶられる。
 縁は裂け、内壁も傷付いている。痛くて苦しいだけの行為だが、疲れ果てた身体は弛緩してちょっとの抵抗も出来ない。
 目隠し、口にはガムテープ、手は胸の前で、足は両膝と両足首の二箇所を束ねて拘束されていた。
 そうして奴のロッカーに押し込められて何日が経ったのか。適当な時にゼリータイプの栄養食を与えられて、気ままにレイプされた。
「きひっ……」
「なんか考え事? そういうの良くないと思うんだよね」
 首がじわじわと絞められる。耳元で不機嫌を表す低い声が囁く。
 いっそ殺してくれ、そう思うのに生殺しのままだ。
「ほらっ、お尻の穴でっ、ちゃんと俺を! 感じてんのかよっ!?」
「ぐひゅっ、うっううっ、」
 ロッカーがガタガタと揺れるほど激しく打ち付けられた。それなのにどうして誰も助けてくれないのか。もずっとこの暗闇で、奴の声と与えられるものしか口にしていない。
「薙っ、薙……っ」
 ギュッと、背がしなるほど抱きしめられ、穴の最奥に吐精されるのを感じた。奴は余韻を楽しむようにぐちゅぐちゅと少し動かし、それから抜き去った。
「好きだよ、薙、愛してる」
 そんな言葉を繰り返して、そして奴は再び出ていった。

終わり

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