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 お腹いっぱいになって、僕たちは家に帰る。
 汚い、暗い、あの家に帰ると思うと気が重くなる。だけど、赤崎さんの家に泊まり続ける事もできない。
 おいしくて、楽しくて、幸せな空間を名残惜しくも後にする。赤崎さんがお土産に、スイカの残りをくれた。冷蔵庫は壊れているから、帰ってすぐ食べよう。
 それから、赤崎さんの手作りプラネタリウムももらった。電池で動くから、しばらく使えるらしい。
 これで夜も真っ暗じゃなくなるし、なによりあのきらきらがすごくきれいで、また見たいと思っていた。

 そんなふわふわした気持ちで玄関の鍵を回すと、鍵は開いていた。あれ、鍵をかけ忘れたっけ?まあ、いいか。
 そんなことを思いながら扉を開けると、大きな靴が一つ。
 何日ぶりに見ただろうか、それでも一目見てわかった。父親の靴だった。

 幸せなことは続くんだ。
 お父さんが帰ってきたなら、もう、安心だった。

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