それから2


 床に転がるコップのようなサイズの小さい瓶と一緒に、二歹は寝転がっていた。いつもはビールを好むくせに、今日は日本酒か。
 指を吸いながらむにゃむにゃと寝息を立てる二歹を抱き上げて、すぐそばのベッドに寝かせる。二歹が寝室で飲むのはしばしばだった。
 下戸が飲むには多すぎる数の瓶を手に取りながら俺は思う。
 そろそろ彼に、お仕置きをするべきでは、と。
「二歹さん、起きて」
「ん……んん……」
 寝入ったばかりなのかわからないが、二歹は眉間にしわを寄せるだけだった。
「にーがつー……起きてくれなきゃつまんないだろ」
 声をかけながら、俺は着々と準備を進める。二歹の手をそれぞれベッドの脚に括り付け、万歳の形で拘束した。ズボンはそもそも履いていないから、ゆるゆるのパンツを脱がせて床に落とす。
 萎えた性器、それを覆う陰毛を指でなぞる。これから行う享楽に、久々に興奮している自分がいた。
「二歹さんパイパンにしてあげようか。でもなあ、家で引きこもってる奴をパイパンにしたって面白みは半減だよな」
 毛の生え始めでチクチクしたり、パイパンにしている事実に羞恥を覚えたり、そういう仕草は見てて面白そうだが二歹はあいにくニートだった。毛を剃ったところで、二歹が自分にかゆいと訴えてそれで終わりだ。
「二歹さん」
「んん……こさ……おかえり」
 起きないので頬を叩くと薄く目を開け、へらっとだらしない笑みを浮かべた。実際のところ、彼は叱られたくて酒をしこたま飲むのではないかと思う。
 俺が彼を叱るのも、酒を飲み過ぎた時ぐらいだから。
「ただいま。ほら、これ飲んで」
「んん……んっくふっ……けふっんぐっ」
 口元に例のコップ酒を近付け飲ませる。流石に寝ながらの状態で飲むのは難しく、俺がこぼしたり二歹が噎せたりで顔やその周囲が酒にまみれた。
「はあ……なに、めずらしいね」
 二歹が口についた酒を舌で舐めながら言った。それもそうだ。酒を取り上げる事はあっても、こうして飲ませる事はない。
「よく言うだろ。酒で身体の具合がヨくなるって。二歹さんもそうなのか、見たくって」
 酒で体温が上がり、感度も良くなるんだろう。詳しくはわからないが、結局そんなのは取っ掛かりにすぎない。
 身体に力の入っていない二歹の太ももをひと撫ですると、んん、と艶っぽい声が上がる。俺は二歹の両膝の裏に手を入れ、一気に持ち上げる。
 そのまま足先を二歹の頭の方までやり、いわゆるちんぐり返しとかいう形にさせる。二歹自身の萎えた性器が二歹の眼前に垂れ下がり、尻の穴は無体に電光の下に晒される。
「はっ……か……く、るし……」
 無理な体勢に顔を赤くしている二歹の尻をひと撫で。身体を寄せ、下から膝で腰を支えたから多少は楽になるかもしれない。
 ぱかっ。新しいコップ酒の蓋を開け一口飲み、こぼさないよう横に置く。代わりにローションを手に取り、たっぷりと穴に塗り込んだ。
「ふへ……このままえっち?」
 苦しい体勢なのに嬉しそうに言う。真性のどMと言うより、精神的な病み状態。それでも、世の中にはそんな人間が巨万と溢れているらしい。そういう形で求められる事でしか満たされない、悲しい病気。
「その前に中の確認。二歹さん、動かないで」
 なかなか解れてきたので、横に置いたコップ酒を再び取る。その底を穴に当てがう。
「流石にきついな。でも無理すれば入りそう」
「っは、あ、それ……いれんの?」
「そう。酒入ったままだから暴れんなよ。こんな酒、腸で直に摂取したら絶対ヤバいと思う」
 頭のどこかで「それも悪くない」と思っているだろう二歹にため息を吐きながら、指で穴を押し開いて無理に挿入していく。底の縁が丸いから、ぐりぐりとねじ込めばなんとか咥え込む。
 瓶に張り付くようにぎりぎりまで広がった穴の縁を撫でる。二歹にはそれがわからないようだ。
「瓶が冷たいから、もっと奥まで入れれば中気持ちいいんじゃない」
「っっ……はあ、はあっん………」
 力を抜こうと頑張っているらしいが、穴の拡張はしてこなかったしどんなに力を抜いたところで許容量は超えていて少しも進まなかった。
「だめだ、これ以上進まない。これじゃ酒置く台だな」
「だめえ……おくまで、んっはあ、おくまでいれて……」
 二歹なりに頑張っているが、穴が益々瓶を締め付けていた。
「力入ってるから瓶が割れそう。下手くそだなあ、二歹さん」
「んん……じゃあじょうずになる……あ、ん……」
 自分でも何を言ってるのかわかってないのだろう。性器の先を撫でてやると、気持ちよさそうに声を漏らした。
 片方の手で二歹の性器を刺激しながら、もう片方の手でローションを注ぎ足し瓶を奥へ進める。半分ほどが入ったので、俺としては満足以上だった。
「二歹さん、半分入った。もう無理かな。ちょっと待って、中の酒飲むから」
 二歹の尻に手を当て、酒の角度を変えて飲んで行く。この滑稽な様子。コップ酒の瓶を入れるのだって半分冗談だったのだ。馬鹿馬鹿しいにも程があるだろう。
「ふへ……へへへ……なんか……へへへ……」
 そんな光景に二歹は笑い出していた。酒の効果でだろうけれど、ふへふへと笑い続けている。ケツに瓶を突っ込んだまま笑って、とうとう頭がおかしくなったように見えなくもない。
「中見えた。んー……すごい、気持ち悪い」
 瓶に張り付いた腸壁がうねうねとしている。色はキツめのピンク色で、いつもここに指やら性器やらおもちゃやらを入れているのかと思うと変な感じだった。何より、これは体内だ。
「おれもみたい」
「モノ好き」
 パシャ、パシャ。携帯のカメラ機能で撮影して、二歹に画面を向ける。
「うわーこれおれのなか?うわー……うわー……」
 食い入る二歹。俺は再び、瓶へ目を向ける。前立腺は見えるのだろうか、その方向に目を向けてもよくわからなかった。瓶に指を入れ、カツンカツンと叩いた。
 中を見るより、指や性器で触れた方が俺は好きだな。
 そんな馬鹿なことを思うのは、俺も酔っているのかもしれない。
「ねえ、中出ししてよ。そんでもっかい見たら、白とピンクで綺麗かもよ」
「そんなこと思いつくなんて二歹さん変態だな」
「こさには負ける……ん……」
 瓶を引き抜き性器を当てがう。拡げられたそこはやすやすと俺のモノを飲み込んだ。いつもより熱くて、蕩けるように包み込む。
「瓶入れて感度上がった?」
「ん、ん、熱い、こさの、熱いので、っっん、ぐちゃぐちゃにして」
 ベッドに縛り付けたままの二歹の手が開いたり閉じたりして訴える。俺はそれに手を重ねた。
「ぐちゃぐちゃにしてあげる」


 二歹はうつ伏せに、うーうーと呻いた。
「んん、なんか変な感じ……」
 夜が明けて、俺が仕事に行く支度をしている一方、二歹は俺の携帯の写真を眺めていた。
「その写真、そんなに気に入った?」
 瓶によって腸壁に白いぬめりの付いた様子が見て取れる画像。寝る前にも見つめていたが、よく飽きないものだ。
「え?んー、そうだなあ。こさはここにちんこ入れて気持ちいいんだろ?」
「あー、まあ、そういうことかな」
 自分の身体なのに、二歹はどこか他人事のように言う。そこだけ切り取って使ったって、気持ち良くはない。
 俺は二歹の手から携帯を取り上げて、仰向けにさせて写真を撮った。
「俺はこの人が好きだから、気持ち良くなれるんだと思ってるよ」
 呆気に取られた表情の二歹の写真を向けると、二歹は満足げに笑った。
「おれもねー、こさの事好きだからこことかねー」
「おいやめろ」
 起き上がった二歹は俺のズボンを引っ張り、上から性器を写真に撮る。その携帯は俺ので、仕事にも持って行くわけで。
「大好き」
 間抜けな笑顔で言うから、俺もつられて笑ってしまう。
「俺もだよ」

終わり

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