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 ひたすら優しいセックス。朝が来れば普通に二人で笑って、食事して、会社にも行った。
 全部が壊れてしまえばいいと思ったのは、帰宅時の電車の中。窓に映る自分の顔が、弟とよく似ている。同性愛に対して特に思うところはなかったが、いざ自身がその対象になると嫌悪感で胃からこみ上げるものがあった。その原因が弟というなら、なおさらだった。
 同居人との家に帰る気もなければ、あの街に、会社に、あの場所に戻る事も嫌になった。かといって、実家に帰ることも出来ない。
 実家に帰れば思い出したくないことも思い出すだろうし、最悪弟に会う可能性もあった。
 弟とは上手くやっている。憎むほど嫌いというわけでもない。ただ、10歳までを一人っ子として育った二歹は甘えたのわがままな子供で、唐突に現れた弟によって兄にならざるをえなかった。出来のいい弟は兄よりも要領がよかった。
 そういった些細な妬みが積み重なって、気付けば苦手な相手となっていた。
 挙句、なんだあの動画は。気持ち悪い。
 気持ち悪い、気持ち悪い。

 全力で嫌悪することで、心が晴れることもない。
 一人立ち飲み屋で酒を煽って出た矢先のこと。古佐治に、出会ってしまった。

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