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「なあ、見ろよ」
 と、同居人に呼ばれ二歹はパソコンの前に座らされた。
 画面に映っているのは後ろ姿だった。椅子に縛り付けた人に跨り、上下に動いている。見覚えのある後ろ姿。誰だっけ、これは知り合いにいたような気がする。
 二歹はぼんやり考えながら見つめて、やっと気付く。この画面に映る人たちはセックスしているという事に。
「なにこれ男同士のAV?悪趣味だな」
 正直なところ、突然同性愛者のセックスシーンを見せられて嫌悪感が強かった。
「これ個人でやってるやつ」
「なおさら悪趣味だな」
 見たくもない他人の、しかも男同士の性行為を見せられているのは苦痛で、椅子から立とうとすると肩を押さえられた。
「こいつの感じさ、」
 同居人は画面の後ろ姿を指でなぞった。二歹はまるで自分の背中をなぞられている気分になる。
 マイクを通した声だからだろうか、定かではないが、これは弟だとその時気づいた。
「お前に似てるよな」
 同居人はそう言って、後ろから羽交い締める。
「なに、お前ホモだったの」
 ぞわっと鳥肌が立って、冗談ぽく言ってもなにも答えない同居人に血の気が引いた。顎を掴んで後ろを向かされる。自分を見つめる切ない目に、二歹はどきっとした。
「そう、ホモだったの」
 優しいキスが降ってくる。

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