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二歹の腕が顔をこすっているから、泣いていたのだろうと知る。上手く動かせない右手を穴から引き抜き、よたよたと起き上がってスウェットとパンツを穿きなおす。そのままどこに行くでもなく、壁を背もたれに膝を抱えて体育座りをする。そこを動く気はないようだった。
それから少し経って、ガチャンと鍵の開く重い音がした。うとうととしていた二歹が顔を上げて扉を見たが、中から出てくる気配はない。
二歹は痛む身体を堪えながら立ち上がり、ドアノブを捻る。
意図もたやすく開く扉に泣きそうになった。
玄関口には着替えとバスタオルが置いてあり、風呂に入れという古佐治の意思表示が見て取れた。それに逆らう意味もない。
着替えとバスタオルを手に、風呂場に行くと鏡に映った酷い顔に笑った。
外にいる間に思い出した沢山の事が、家にもう一度入れてもらい、古佐治の匂いに包まれることでどこかに吹き飛んだ。
古佐治は信じないだろうが、二歹は、確かにどうしようもないほど古佐治の事が好きだった。
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