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 呼ぶ声がうるさくて吐き気がする。みっともない大人が泣きながら懇願していた。扉の隙間に挟まれた手は色が変色して、骨折しているのかもしれない。
 閉まりそうにない扉を思いっきり押し開く。ガンッという衝撃と音がして、手が消えたのを確認して扉を閉めた。
 衝撃で倒れていたのか、数秒してから二歹が喚き散らした。タガが外れたように、泣き叫び、扉を叩き、古佐治を呼ぶ。
 不思議なことに罪悪感はなく、それよりも強い嫌悪感がこみ上げる。その一方で、扉の向こうの二歹を想像すると興奮した。なりふり構わず喚き散らす二歹を、もっと痛め付けたい。
「うるさい」
 通報されてもおかしくない声で喚く二歹の声に負けないくらい大声で、古佐治が言った。前も後ろもわからない状態の二歹だったが、古佐治の声は聞き漏らさないらしい。
「入れて、こさし、中、入れて……そばに、いさせて……」
 泣きながら懇願されたところで、扉を開けるつもりもない。扉に付いている覗き穴から見ると、涙と鼻水と鼻血と汗で酷い顔をしていた。鼻血に気付いていないのか気にしないのか、唇の横を垂れて線を作っている。
 滑稽過ぎて笑えた。
「そんなに中入れて欲しいなら、そこでオナニーしてください。見ててあげるから」
 覗き穴の存在に今気付いたのか、きょとんとして顔を上げる。二歹側からは見えていないだろうが、目が合った。
「上手にオナニー出来たら、考えてあげますよ」
 どんなに上手に出来たところで、部屋に上げるつもりはなかった。二歹もそれがわかっていたが、馬鹿な振りをして、馬鹿みたいにその言葉を信じる。
 二歹は一瞬辺りを見回してから、スウェットとパンツを下ろした。挟まれた右手が痛いのか、眉を顰めている。
「ああ、ちんこ触んないで下さい。アナルだけで、イってください」
 金魚のように口をぱくぱくさせて、言葉も出ないらしい。
 少なくとも、古佐治とのアナルを使った行為で二歹がイったことは一度もなかった。
「右手だけ、使っていいですよ」
 扉に潰された右手でアナニーしてイけたら、それこそ本当のマゾヒストだ。
 二歹自身イけるわけないとわかっていながら、地面に座り、足を開いて股間を晒す。身体を支えることもできないのか、完全に仰向けに寝転がり、傷付いた右手を、固く閉じた穴に這わせる。
 とてもつまらない、ショーが始まった。

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