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 朝目覚めると二歹を抱きしめていたので、なんとなく額を叩いてからベッドを出る。パチン、いい音が鳴った。
「んうー」
 二歹は小さく呻くだけで起きる気はないようだ。この人はいったいいつまで、ここにいるのだろう。古佐治の連休も半分が過ぎた。気付けば二歹と過ごしていた昨日までの3日間は、当初録画してある生放送を見て過ごそうと思っていたという予定よりもずっと不健全なものになっていた。
 あるいは、酒浸りでアル中にでもなって死んでいたかもしれない。どっちがマシだっただろうか。
 朝食の玉子を焼いていると、ふらふらと二歹がリビングにやってくる。心なしか頬が赤らんでいる。十中八九熱が出ているのだろうけど、発情期ということにしても構わない。
「こさ……」
 椅子に座り呟く。
「俺が飯食べ終わったら、セックスしましょう。熱出てると中が熱くてイイって聞くじゃないですか。理由がいるなら、でっかい注射って事にしてあげますよ」
「容赦ねーのな」
 へらっと笑う二歹。
 既に風邪をうつされたかもしれない、古佐治は自分の体温が上がった気がした。

 食欲がないらしい二歹は古佐治が食べるのを静かに眺めた。視線に気付いた古佐治は気にするでもなく、もぐもぐと箸を進める。
 口端についた醤油を舐めとると、二歹の口が浅く開く。ああ、この人、無意識で誘ってんのかな。
 欲情しているのは、二歹が誘ってくるせい。

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