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 夕方になり飯を作っている頃、二歹は何度かトイレとリビングを行ったり来たりした。その度に吐いて、水を飲んで、ふらふらになっている。
 それでもわざわざ古佐治のいる部屋、古佐治の見えるところに戻ってくる。二歹がなにを考えているのか、全く理解できなかった。
 そもそもなんで俺の前に現れたのか。犯されるために来たとしか思えない。そうなんだろうか。
 ごとり、皿に盛り付けた野菜と肉の炒め物をテーブルに置く。ごはんをよそった茶碗も箸も自分の分だけを用意し、自分一人で食べる古佐治。
 二歹はしばらくキッチンをうろうろしてから、少し深い小皿にごはんを少しだけよそい、流しに放っていたフォークを洗って持ってくる。
 どこに茶碗があるのか、箸も見つけられなかったのだろう。まるで犬の餌のようになっている。とてもお似合いだ。
「ん、古佐治料理うまいね。うまい、うまい」
 うまいうまいと繰り返しながら、それでもまだ腹具合がよくないのか食べる量は少ない。フォークの先に刺したキャベツと豚肉を、ちまちまと食べている。
「二歹さんは料理しないんですか」
 弟の方は壊滅的に料理が下手だったな。つい見比べては思い出してしまう。
「んー、しない」
「あれ、でも一人暮らしですよね。外食ばっかですか?」
「んー……」
 歯切れの悪い反応に、古佐治は訝しんだが、考えるのをやめた。
 二歹がここにいる理由なんて、知りたくも、考えたくもない。

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