18


 目を覚ますと二歹がベッドに勝手に入っていた。狭いベッドに成人男性二人が寝るのはとても窮屈で、二歹は何を思ってか古佐治に抱きついている。一瞬弟の方と間違えてしまったため、腹の底から怒りが沸き立つ。
 昨日の今日でこんな状態なんだから、この人真性のマゾヒストなんだろうな、と思いながらベッドから蹴り落とす。古佐治はもう少し寝たくて、目をつぶった。
 ぎしっ、ぎしっ。ベッドが揺れる。さっきと反対側に熱を感じた。今度は落とされないよう、ベッドの奥側に入って、壁と古佐治の間に納まる。
 わざわざ一緒に寝たがるなんて、ほんと。
「マゾ」
 怒りもどこへやら、古佐治は笑った。
「鬼畜」
 二歹も反論して、結局二人で眠った。



 次に目覚めたのは昼過ぎで、二歹の高い体温のおかげで軽く汗をかいていた。そのくせ二歹は毛布にくるまり、すやすやと心地良さそうにしているのだから腹が立つ。
 起きる気配もなさそうなので、足首を掴んで引きずってパソコン部屋へ。高さのないベッドとはいえ、頭を打ってのたうち回る様子は滑稽だった。
「いってーーー……なにもー……あーーあー」
 二日酔いも残っているのか、頭を抱える二歹。パソコン部屋に引き摺り込んで、椅子の前にきてようやく掴んでいた手を離す。
 手のあとが真っ赤になっていたが、縛ってしまえば見えないだろう。
「なあ、二歹さん」
「んー」
 くてんとしている二歹に、古佐治が聞いた。
「二歹さんて尿道開発されてる?」
「は……?なに、……なに、にょ、どう?」
 二歹の反応に、にやけてしまうのを抑えられない。
「そう、わかった」
「え……おれはわかんないんだけど」
 古佐治の耳にはもう、二歹の声なんて届いていない。

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