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 玄関に散らかして置かれたままの靴を見てうんざりした。自分の気持ちを表すようにドスドスと床を踏み鳴らして寝室へ。扉を開いてすぐ視界に入らず、よく見れば布団ですやすやと眠る二歹の姿を見つける。
 布団を剥がすと裸で寝ており、素肌の肩を掴み床に引き落とした。
「ぐへっ」
 叩きつけられた衝撃でようやく目を覚ましたのか、間抜けな声を上げる。仰向けに転がされた胸の上に、古佐治の足が乗せられる。
 少しずつ圧迫され、苦しさに二歹はもがいた。
「っこさ……くるし……」
 二歹の悲鳴は耳に入らなかった。せっかく家も空けて、逃げ出すチャンスはたくさんあったのに。まだいるのはどういうことだ。
 苦痛に歪む顔が、零れるように漏らす声が、先ほど会った三月の姿を上塗りしてしまう。そうしてほしいのか、ほしくないのか、古佐治自身もわからない。
「ううう……はあ、はあ、はあ……」
 足をどかすと胸を上下させて酸素を喘ぐ二歹の上に跨り、古佐治は手を振り下ろした。
 バチッン。
 衝撃で呼吸も忘れて、目を白黒させた。
「あなたが悪いんだ」
 時間は与えた。それでもまだいるというのなら、この変態マゾヒストは、それを望んでいるということだ。
 古佐治は頭の中を真っ黒に塗り潰す、この感情に身を委ねた。

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