小説 | ナノ


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04.太陽の友達と扇風機じゃんけん

とある町に住む少年シロとクロの話。





「ああああ暑い暑い暑い暑い!」


いい加減溶ける、とシロが襟を掴んでぱたぱたしている。

俺はそんなシロを横目で見ながら扇風機に向かって話しかけてみた。


「我々は人間でーす」

「ねえ、もうそろそろ交代なんじゃないの?クロ長いよ!!」

「だって12連続で俺が勝ったし、じゃんけん」


俺らの店に唯一ある古い扇風機は、かつては回っていただろう首も回らなくなり威力も弱々しいので2人同時には涼めない。

だから、じゃんけんして勝った方が五分間扇風機を占領できるルールを適用していた。

ちなみに、さっきから俺の全勝だ。


「大体おかしいよ、何でこんなに連続して負けるのオレ」

「運が悪いんだって。じゃんけんだぞ」

「悪すぎでしょ!散歩にでも行ってるのかな」

「何が?」

「運が」

「ああ、そう」


毎度のことながら、シロの言うことは大抵理解できない。


「どこ行ったのオレの運…商店街の中にいればいいけど、まさか電車に乗ったりしてないよね」

「いや、本当に散歩するわけないじゃん」

「だよね、旅行かもしれないよね。どうしよう二泊三日とかだったら…二日も扇風機ないとかオレ本当に溶けるよ」


意味を180度履き違えたシロが文句をいいながらうだる。

俺はシロが可哀想になって少しだけ扇風機をシロのほうに向けた。


「うわ!?」

「サービス」

「あー涼し」


シロが扇風機に当たりながらふとじりじりと太陽が焦がしている外を見た。


「太陽てかわいそうだよね」

「え」

「ずっと人間を見てるのに、人間と話せないなんてかわいそう」

「話したくないんじゃない?人間って性格悪いから」

「そうなの?クロも性格悪いの?」

「悪いよ。激悪」

「ひゃー」


その証拠に、シロがじゃんけんで必ず最初にチョキを出すのを知った上で扇風機を占領しているのだ、とまではさすがに言えなかった。


「まあ、太陽には月がいるか」

「けど滅多に会えないじゃん」

「雨もいるし」

「大地に降り落ちるじゃん」

「あれ?太陽って嫌われ者?」

「そうかもね」

「そうかあ」


シロが微妙な顔をする。

俺はシロから扇風機を反らした。


「あ!」

「サービスは終了しました」

「あーあーあー、酷い!暑い!もう本当に溶けるよ!消えるよ!」

「シロなんか溶けちゃえよ。消えてなくなれ!」

「何でよ!」

「扇風機占領したいから」

「ぎゃー!最低!」

「だから俺性格悪いって言ったじゃん」

俺がな?と言うとシロがいよいよ拗ね出した。

「もうオレ太陽と友達になってくる……」

「どうやってだよ」

「溶けて雨になるよ」

「それじゃ太陽に会えないじゃん」

「蒸発するからいいんだってば」

「へえ、じゃあもうシロに扇風機は一生必要ないね」

「え」

「だって溶けるんだろ?」

「え、ちょ」

「太陽のとこ行っておいで」

「嘘だよごめんなさい」

「分かればよろしいです」


俺は扇風機の電源を切りシロに向き直った。


「はい、じゃあそろそろじゃんけんしますか」

「よっしゃ!絶対勝つ!じゃーんけーん、」


意気込むシロにばかだなあと笑い、俺は気まぐれでパーを出してみた。


「うわやった!勝った!」

「ん、次シロで」

「おかえりおかえり!」

「え」

「運だよ運!君の帰りを世界で一番待ってたんだ!」


二泊三日じゃなくて良かったと笑い、扇風機で涼むシロがどことなく憎らしくて、俺は次のじゃんけんでグーを出す決意をする。





God bless you!様提出
 融解/消えてなくなれ!




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テーマ「人外ファンタジー」
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