透き通る空のような、青。
そんな瞳の色をした不二君。

……を、夢の中で見た。


「何それ」


「わかんない。他にも越前君の帽子がFILAじゃないし、桃城君と海堂君が半袖半ズボンだし、氷帝の跡部君の髪がグレーになってるし、立海の幸村君のヘアバンがエメラルドグリーンになってるし、謎な夢だった」


「謎だね」


いろんなものがいろんな風に変わっていて、でも青学はちゃんと全国優勝して。


「手塚君が優勝旗受け取るの、見るの2回目なのに感動しちゃった」


「へえ、随分鮮明な夢だったんだね」


「うん」


「で、ボクの目が青になってたって?」


「うん」


目の前の不二君の目は、色素の薄めな茶色。
何故あんな夢を見たのやら。


「親族に外国の血筋はいないけどなあ」


「だよね。でも、キレイな青だったな〜。私あの目好き」


思い出しながらひとり口元を緩める。
そんな私を、不二君は笑顔をやや曇らせて見ていた。


「……好きじゃない?」


「ん?」


「ボクのこの目は、好きじゃない?」


開いた目をこちらに向け、ぴたりと動かずに私を見つめる不二君。
茶色の瞳。
視線が混じり合う。


「え、ううん」


なんていう端的な言葉しか出せずに私はただヤケに真剣味を帯びた彼を見つめるだけだった。


見つめ合って、大体2、3分が過ぎただろうか。時間の感覚がなくわからない。
不二君はふっ……と笑い声を漏らして、いつもの笑顔に戻った。


「じゃ、好き?」


「え、と、うん」


「うん、じゃなくて」


「……はい?」


「でもなくて」


何を言いたいのか。
……分かってしまったので、もう逃げ場はない。
彼のあの目で、スカイブルーのあの目で、薄茶のこの目で、見つめられたら。


「……好き?」


あらためて問われ、私は考えるまでもなくその応えを言葉にした。



end


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