雪でも降りそうな、寒い日。
こんな日は、友人の家でぬくぬくするに限る。


「そんなワケでお邪魔しまーす」


「お邪魔は構わないけどどういうワケで?」


そう言いながらも笑顔で私を招き入れる、幼馴染みの不二周助。
コイツはいつも笑顔だけど。


「家ん中はさあ、いまお母さんが節電節電言ってて寒いし薄暗いのよ」


「だからってここに来るのもどうかと思うけど。今日母さんも姉さんもいないんだよ」


「うん、大丈夫大丈夫。料理なら任せろ」


「……そういう問題じゃなくてね」


呆れた溜め息を僅かに零し、周助は私をリビングへ通した。
思った通り、暖かい。


「ひとりなのにこんなに暖房使ってていいと思ってんのかー、暖房独り占めはんたーい」


「消すね?」


「スミマセンごめんなさい消さないで」


そんなしょっちゅう行われるやりとりをしながら私は、ソファーにゴロンと横になる。
周助はというと、そんな私の足側に腰掛けさっきまで読んでいたであろう本を開きながら私を見た。


「亜衣、足閉じるか起き上がって」


「何故にー」


「見えてるよ」


「といやっ」


シュバッと起き上がった私はこの笑顔の幼馴染みをねめつけて、頭に勢いよくチョップをかましついでに首を絞めた。


「みーたーなー」


「見てないよ」


「見えてるよっつったじゃん」


「見たくて見たんじゃないよ」


「見たんじゃねーかよ」


やりとりがバカバカしすぎるけど、こんなのが楽しいと思えるのはどうしてだろうね。

私は、テーブルに積んである本の山からテキトウに一冊取って読み始めた。


「ところで周助」


「なに?」


「こないだ新しく来たサボ子ちゃんは元気かね」


「いつも言うけど、勝手に名前つけないでよ。彼女はスウィーティちゃんだって」


「サボテンの名前なんていちいち覚えてないよ」


相変わらず由来の分からん名前だ。


「元気だよ、室温には気をつけてるし毎日話しかけてる」


「周助はもはやあれだよね、サボテンが恋人だよね」


「いいねソレ」


「素直に応援しにくいわ。将来周助と結婚する人は、サボテンより愛されないことを覚悟しなきゃならないんじゃないかねえ」


「亜衣と結婚する人は家事全般出来ないとね」


なんだとコノヤロ。
……と思いながらも私はちょっと考えた。


「……海堂君とかよくね?」


「そこで考えちゃうのが亜衣のダメなところだよ」


なんだとコノヤロ。ダメとはなんだダメとは。

周助は、クスリと笑って読んでいた本にしおりを挟んだ。


「将来、もし亜衣が男に泣かされることがあったらボクに言って」


私の頭にポンと手を置きながら、周助は優しく言った。


「ボクがソイツをけちょんけちょんにしてあげるから」


「………………そ。ありがと」


窓から入る冬の日差しに目を細めながら私は、いい友人を持ったなあ……とじんわり思った。



end


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