テストは全力は尽くしたし、成績を落とすと困るので勉強はした筈。そんなにしてないけれども。人並みだ人並み。それで、普通な成績ならばそれでいいんだ。
「敷島さんどうしたの」
「いえ、特には」
「わかっているでしょう?呼び出された理由。いつもは10位以内でしょう」
教師に絶賛呼び出され中。理由はいつも以上に成績が悪いこと。私にとっては構わないが、担任にとっては良くないことらしい。放っておいて欲しいのに、何故か舞うんだろうか。
「今回、40程下がったのよ?」
「別に、普通じゃないですか」
「何か悩み事でもあるの?」
「いえ、」
「何かあるなら聞くわ」
「だからっ」
「先生はね、」
「放っておいてくれ!アンタに悩み事行ってその悩み事が解決すると思ってるのか!善人ヅラするな!」
言ってしまってから後悔した。それと同時に目眩がした。
今日で黄瀬くんとクレープを食べに行って、そそれから帰って勉強して。眠れなくて学校に行ってそれから、それから?私は何をしていた?
「敷島さん!?!?敷島さん!」
ああ、私は何をしていたっけ。そうだ――
「……え、敷島先輩?」
視界の端に映った黄色に手を伸ばした。訳が分からなくなって頭の中がぐしゃぐしゃで。恋煩いって、こういうことなのか。いっそのこと、引っ越す前に全部言ってしまおうか。
「敷島先輩!?!?先輩!」
「…………き、だ。――く、ん」
「先輩!」
****
side:R.K
「過労、寝不足。勉強のしすぎじゃないの?」
「そっスか。何だ、心配して損した」
「おや、君の彼女?」
「いや、違うっスよ」
「まぁ、勉強でなくとも悩みがあるんだろうな。コイツ、恋とかするんか知らんが」
笑った保健医は淡い桃色のカーテンを引いて閉めた。眉間にシワを作って、とても眠っている様には見えない敷島先輩。もう、今日は授業もないし、何と部活もない。たまたま部活が休みな日と重なった。
「せーんせ?」
「はいはい」
「敷島先輩の恋応援してるんスけど……ダメそうなんスよね。どうしたらいいと思う?」
「は?コイツ、恋してんの!?私はそっちに驚きだわ……」
酷い言われようだ。随分親しげな言い方だが、彼女はよく保健室に来るのだろうか。
「コイツは高2の後半くらいからよく来てたんだ。今は受験生だからあまりしないみたいだがゲーム一筋でな。夜中にゲームをしすぎて寝不足だから何かしら理由をつけて寝てたよ 」
それに気づかないふりをしていたのは個人的に敷島先輩が好きだったのと、学業の面を考慮しての結果だったからだと保健医は言った。
男勝りな彼女の左手の薬指で指輪が光に反射し、鈍く光った。
「あの、」
「ん?」
「先生は無謀な恋ってしたことあります?」
「恋なんて全部無謀じゃないの?」
「え?」
「どちらからともなく恋に落ちる。それでくっつく奴もいれば片思いで終わったり、好きな奴が全く違う奴と付き合ったり。結果んて考える以前に、誰にもその結果がわかんないんだから恋なんて全部無謀だよ。そう考えるとね」
ボールペンを止めて、俺を見る先生。その目は細められており、口元は上がっている。とても楽しそうに見えた。恋の話はやはり女の人だでも楽しいのだろう。今にも鼻歌を歌いだしそうだった。
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