「おや、智香そっちは購買じゃないぞ」


「わかってる」


「行かないのならついて行かないが……」


「ついて来て」


有無を言わせない友人の声に小さくため息をついて、ついて行く。向かった先はどうやら人通りの少ない東階段のようだ。ここは昼時は使われない。食堂も、購買も遠回りになってしまうからだ。


「で?」


「ん?」


「なーんで、笠松と一緒にいるの?」


「は……?」


すごい剣幕で言うため、なにか大変な事があったのだと思っていたが、思い違いのようだ。私は今、何を言われたのだろうか。


「だーかーらー!笠松となんで話せてるのよ!」


「なんでって……友人だからだが?」


「笠松は女嫌いだったと思うけれど」


何だ、良く知ってるな。ああ、そうか。これはよく、恋愛ゲームである話じゃないか。
よく誰かしらに押し付けられて選択肢を選ばせられるあれだ。これは、主人公が好きな人と友人が話しているのを発見しどういう事だと問う感じだろうか。


「笠松くんが好きなのか、智香は」


「は、はぁ!?」


ちなみに智香のタイプはツンデレだな。
ツンデレら一番男に嫌われると聞いたことがあるが、可愛い子がやると案外そうでもないかもしれない。


「違うのか?」


「そ、そうだけど……」


「おー」


ここで大概、友人はその主人公が好いている人のことを好きか、それか主人公を友人として応援するか、その二択だったりする。まぁ、ゲームの話だし、現実でそんな選択ないが。


「で、何で仲いいの?」


「ああ、近所だから?」


「え?」


「ん?」


そんな驚いた顔をされても、私だった最近知ったのだし、智香が笠松くんを好きだと知ったのは今だ。前から知っていたらちゃんと智香に伝えている。


「でも、それだけ?」


「ゲーセンで良く会う」


「あー、そっち系か。ゲーム系統の話はわからないし、ゲーセン嫌いだけど今度一緒に行こう」


恋する乙女とはすごいな。嫌いな場所でさえも好きな相手がいれば行くのか。
しかもいつ来るかわからない相手なのに。


「いいが……いつ来るかは未定だ。約束しているわけでもないしな」


「それでもいいの!」


「あはは、そうか。応援するよ」


「本当に!?」


「ああ」


別に私は笠松くんが好きなわけでもないし、ここは友人のことを応援しようじゃないか。
いつも助けてもらっているお礼だ。それに、笠松くんの女嫌いを治すいい機会になるだろう。智香はいい子だし、きっと付き合えば美男美女カップルになるだろうし。


「だから頑張れ」


「うん!」


これは、恋愛シュミレーションゲーム。
私はサブのお助けキャラで、智香がヒロイン。
きっと笠松くんは数多いバスケ部員の中でヒロインに恋されてしまった女の子嫌いのシャイだけどシャイじゃない男の子だ。




友人の恋の成熟を私は祈り、助けることができるのだろうか。




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