『何!?ああ、わかった。すぐ向かう!』
「って電話で言って、どっか行っちゃいましたよ、部長」
「……ぁ、あいつ、部長だったんだな」
「ええ。実力でなられましたよ。3年になってから余計にサボリが増えちゃって……2年の頃はもうちょいましだったんですが」
こないだ、体力作りだけで部活を終わらせてしまったから謝りに来たらいねぇし。何だよ、あいつ……。
こっちは、こんな女子だらけのところ来たくねえのに!!つか、森山は!?
「ねぇ、君可愛いね。アドレス、おしえっぶふぅっっ!!!」
「し、シバくぞ!てめぇ、何してんだよ!」
「いつも言うけど、シバいてるぞ?わかってんか?わかってやってんの?結構痛いんだけど……」
「ああ!?いねぇから、帰るぞ!また後日来る!」
何でてめぇは女子の輪にいても平気そうにヘラヘラしてられんだよ。
それが疑問で仕方ねぇんだけど。
てか、部活サボんなよ。あいつ……ホント変人だわ。よくわかんねえもん。
「せっんぱーい!!!敷島先輩いたんスか?」
「あ、黄瀬くーん!」「黄瀬くんだ!わぁあ!」
黄瀬が来るとうるせーから連れてこなかったのに……なんで来るんだよ、あのバカ!
それよりも、やっぱり黄瀬はモテるし女の扱いうまいし……うぜぇ。
「おらっ、黄瀬!帰んぞ」
「いって、痛いっスよ!」
「知るか!」
「笠松さん」
「……?」
さっき、説明をしてくれていた2年の女子が恐る恐る話しかけてきてくれた。どうやら、敷島の居場所を教えてくれるらしい。
当たり前のように言い当てたその女子はすごいと思う。
****
「……おい、あいつ何時間ここにいるつもりだよ」
部活開始が16時だ。で今の時間20時。
それからずっとゲーセンにいた私は馬鹿みたいにゲームをしていた。
しかもまた銃撃。もう、二丁拳銃になってる。普通は一つの銃を一人で扱うのだが……二人分の運動をしてみた。
ギャラリーがすごいのなんの。
「もうなんか、呆れる通り越して尊敬するわ」
後ろの方で聞いたことがあるような声が聞こえたが……いや、それよりも、ここのボスが強い。無理ゲーすぎる。
ボスにたどり着く迄にHPが減っていってしまうからどうしてもボスにやられてしまうのだ。
「ああー、クソっ!まただ!」
地団駄を踏み、銃を返すとまたコインを入れた。天井を仰ぐと上にnewと書いてある紙が貼ってある。
ゲーセン友達か誰かに教えてもらったんだ。今日新しいのが来るって。いつからこんなに、ゲーマーになったんだ、私は。
「あっ……!」
辺りを見渡したら後方にいた笠松くんと目が合う。聞いたことがあるような声とはかれだったらしい。いやらしい笑みを浮かべながら近寄ると彼は身震いして後ずさった。
「げっ……」
「笠松くん。ちょうど良かった。手伝ってくれないか?最後のボスが倒せなくてな」
無理やり腕を引っ張られゲーム機の前に立たせる。
「はっ?またなんで俺っ」
「ほらっ!」
隣に黄瀬くん、森山くんとかいるがこれ以上目立ちたくないのが事実。それに森山くんとはあまり話をしないため笠松くんの方がいいに決まっている。
黄瀬くんなんて論外だ。モデルがいるっていうだけでさっきから煩いのに。
「キモっ、なんでお前こんなにキモいのばっかりしてんだよ!?」
「ん?なれると彼らもなかなか可愛いと……」
「んなわけねぇよ!」
というか、ちゃんと私と話せているじゃないか。
ああ、やはり私は男っぽいから女とは認識されていないのだろうか。失礼な。自分で思っていて少しだけムッとしたぞ。
「えー、そうか?まぁ、そんなことより始まるよ。構えてくれるか?」
「……はぁ、わかったよ。やりゃぁいいんだろ?」
面倒ごとは嫌いなのにどうして私はまた、笠松くんを誘ったのだろうか。
そもそも、彼はこんなゲーセンに何か用があったんじゃないか?私が邪魔していたのだとしたら失礼なことをしているな。
「インターハイとか出なきゃならないんじゃねえのか。こんなところで油売ってたらダメだろ」
「インターハイか。あまり興味がなくてな」
「は?」
聞こえてないとでも思ったのだろう。実は意外と聞こえるんだ。耳だけはいいほうだからね。あと、瞬発力とかも。
「口に出てたぞ。団体もあまり好きではないし……どうも優勝とかには興味がわかないんだ。私は誰かと戦えればそれでいい」
いつも思う。男に生まれて、尚且つ時代が違ったら私は立派な武士として生きていったであろう。もったいないといつも思ってしまう。
「そういう点ではあまり話の合うやつもいなくてな。次、上と右から来るぞ。私は上を狙うから笠松くんは右を頼む」
「わかった。男子剣道部とかは?」
「男子とは剣道の話で話が合ったことがない」
……後輩が私のせいで苦労していることくらい知っている。だが……私は一年の後半からいきなり部長をやらされ、先輩にはそのことでいじられ、二年の時にはもう何が何だがわからなくなり、部活をしながらゲームにはまり、いつしか立派なゲーマーになってしまっていたよ。
「お前以外と壮絶な過去送ってたんだな」
「私は一年の後半に部長にならなければゲーマーにはなっていなかったろうね」
左にいたゾンビを撃ち殺しステージを進んでいく。それにしても、笠松くんは意外と銃撃がうまいな。リズミカルに倒していってくれるから楽しい。
『笠松くん、なにか音楽関係でもしているのか?』
「ギターを少々……?」
きっと上手なんだろう。ギターができない私にとっては彼みたいな人は羨ましい。
というかなんで疑問系なんだ。
「……何こいつ、キモっ」
「今まで倒していたの親玉だよ。親玉」
そう言って妖艷な笑を私は笠松くんに向けた。
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