人は愛なくしては生きては逝けぬ

どんどん嫌な自分になっていく。徹に対してのあたりが強いのが自分でもわかっている。でもなってしまうのだから、止められない。自分で抑えることが出来なかった。

「自分のこと、嫌いになりそう」
「……俺も今日お前らの幼馴染だってことを呪った」
「酷いなぁ、はじめは容赦ないねぇ」
「いっそのこと住めばいいじゃねぇか」
「馬鹿なの?馬鹿なのね」
「お前な……」

コンビニで買ってきた貝柱をつまみながら酒を煽る。貝柱っていいお値段するよね、いつも思うんだけど。でもそれでも買ってしまうのは美味しいからだろう。病みつきになる美味しさというものだ。

「もし徹に思い出してもらえなくてもずっと徹のこと好きな気がする」
「は?」
「前に言わなかったっけ?はじめは私のナイトで、徹は私の王子様なの」
「少女が」
「うっさいー。……でも、絵本の主人公はずっと王子様が好きなの。私も同じ」

囚われてるだけ、執着してるだけ。そう言われてしまえば終わりだ。実際傍から見れば私なんかそうとしか見えないのだから。自分でもわかってる。でもそれでも、好きなものは好きなのだからそれこそ仕方の無いことなのだ。恋は盲目、とよく言ったもの。正にそうだ。

「私、可哀想なのかな」
「どうした」
「お手洗いに行った時に言われてたの、そうやって。可哀想だよねって」

女の子だなぁってこういう時に感じる。
コソコソ言われるのは慣れてたけれど言われてみてふと考えたのだ。私は可哀想なの?って。いや違う、私“が”可哀想なのって思ったんだ。

「私が可哀想に見えるのかな、みんな」
「彼氏に忘れられて?剰俺の彼女だと笑って言われればな。誰だってそう思うじゃねぇか」
「でもさ、可哀想なの、私じゃないよね」

‐徹だよね。

「お前も可哀想だよ、俺から見りゃ充分」

頭に乗った手は乱雑に私の頭をなでた。ぐしゃぐしゃになった髪の毛を手ぐしで直す。そうすればもう一度ぐしゃりと撫でられる。何してるんだと腹パンを軽く噛ましてやったら頭を叩かれる。

「何!?」
「お前は深く考えすぎだ。今の及川は別人だ、なんて思う必要は無い。お前の思ったようにしろ気にするな」

何かはじめがイケメンだ、なんて言ったらドヤ顔でなんて言ったと思う?

「ったりめーだ」

何か、徹とはちがう。本当にイケメンだ。
何か歯を見せて笑って似合うって本当にイケメンだよねはじめ。
 
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