「何で何で何で!!??」
「あらあら、どうしたの?」
「聞いて、玲央!征くんが浮気したの!!うわーん
!聞いたら否定もしなかったのよ!?」
お昼休み、一緒にご飯を食べようとして一年生の教室に行けば女の子と一緒に食べていた。それをこの子は浮気っていうのね。
「だって、だってだってぇ……あ〜んしてたんだよ?」
わーん、そう言って机に突っ伏してしまった彼女の頭を呆れながらなでた。別に名前ちゃんに呆れてるわけじゃないわ。自分に呆れてるのよ。
昨日珍しく征ちゃんが相談してきたから聞いたら……
「名前が最近冷たい」
何て言うから
「倦怠期じゃないの?押してもダメなら引いてみろってよくいうし、ちょっと距離おいたらどうかしら?」
て返したからかしらね。
多分名前ちゃんがちょうど教室に行く時間を見計らってしてたんだと思うんだけれど……。
あの子ってたまに阿呆なのよね。
「大丈夫よ。でも、最近イチャイチャしてないわよねー。どうかしたの?」
鼻から下は腕に埋まった状態で固まっていた名前ちゃんは再び腕に顔を埋めた。
それから聞こえるか聞こえないかの声でぼそぼそって言ったのよ。今度は本当に彼女に呆れたわ。そしてアタシは後悔した。
「最近征くん、女の子といるし……寂しかったのよ。構ってもらおうと思って……でもっうぅ……」
こっちも押してダメなら引いてみろ作戦を決行中だったようで、私がいらないことを言わなければこんなことにならなかったのにね。
「そうね、確かに最近征ちゃん忙しそうだったし、書記の子とかと一緒にいたから名前ちゃんに構ってくれなかったものね」
「……うん」
さて、どうしたものか。
元はといえばアタシが悪かったのよね、多分。征ちゃんに押してダメなら引いてみろ作戦を提示したのはアタシだし……仲直りしてもらわなきゃ後味悪すぎ。
「もう、ダメなのかな?」
そういった瞬間机に涙が落ちていて。
泣かせてしまった罪悪感に名前ちゃんの手を引いてあの子の携帯にメールを送って屋上まで走った。
チャイムが鳴ってしまってもきっと来てくれると信じて。
「いーい、名前ちゃん。先生にはアタシがなんとか言っておくからここで待ってなさい。いいわね!?」
「あ、うん」
泣いている名前ちゃんを屋上に置いて階段を降りる。その途中でさっきメールしておいた人物とすれ違った。
「頼んだわよ!」
肩を叩いてアタシはその場から立ち去った。
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玲央に連れてこられた屋上。いきなり手を取られて走りだされたから何かと思えば……ここで泣きやめという事だろうか。
みっともないところを見せてしまった。
「ふぅ……」
フェンス越しに見えるグラウンドには男子がサッカーをしている姿が目に写った。
一人の子が体操をしていなくて怒られる。
「あはは……」
笑ったつもりなのに笑えなくて。
別れ話、いつしようかななんて頭の中で流れて悲しくてしゃがみこんだ。そんな私を包む人が一人。こんなことするなんて一人しかいない。
「名前」
「な、なんでっ」
振り返るとそこにいたのは私が起こる原因を作った人。赤司征十郎君だった。
「名前が泣いてると思って」
「誰のせいだとおもってるのよ!?」
「僕。名前が最近冷たかったからね。玲央に相談したら押してダメなら引いてみろ≠チて言われたんだ」
ああ、考えることは結局一緒なんだと思わず笑ってしまった。
彼の腕を解いて向き合うと抱きついた。それはもう、思い切り。
「何でおんなじ事するかなぁ……?」
「は?」
「征くん、女の子と最近いるし、生徒会で忙しそうにしてて構ってくれなかったんだもん。さっちゃんに相談したら押してダメなら引いてみて下さい≠チて言うからそうしたのに。ダメだね、私達」
結局はお互いがお互い大好きだってこと。
「構ってほしいなら言えばよかったのに」
「征くんだって冷たいって言ってくれたらネタバレちゃんとしたのに」
「今日までぎこちなかったんだから、その分取り返そうか」
「え?」
屋上って、本当誰も来ないから便利だよね。
ああ、でも下のグラウンドからは見えてたかな?私たちの愛を確認しあったキス。
「見えたらどうするの?」
「見せつけておけ」
「ん……」
結局、何があっても好きに繋がっていくんだよ。
君が何かすればそれがかっこいいし、君が他の子に構えば嫉妬だってしちゃう。
それも君が好きだからだね。
「好きだよ。征くんは?」
「当たり前だろう。好きだ」
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リクエスト、ありがとうございました。倦怠期からのラブラブ。第三者(玲央視点)でした。途中から夢主視点に変えてしまいすみません。
そしてキュンものがかけなくて、すみません。
これからもよろしくおねがいします