あなたが一番かっこいい

「ッ遅刻!」

こんにちは、苗字名前です。どこにでもいる平凡な女の子で成績も平々凡々。顔は普通って言っておく。賛否両論な気がする。見る人がブスといえばブスだし可愛いといえば可愛いし普通といえば普通。そんな顔。
親はそこら辺のサラリーマンと母親が社長秘書。母親はすごい。しかも美人だから。娘としては誇らしい反面羨ましいと思う。
というか今日からGWだ。

「名前ー、起きてる?」
「起きたー」
「なら、ちょっと準備して。会って欲しい人がいるから」
「んー……え、今から?」
「うん、今から」
「はぁい」

とまぁ、こんなことは初めてでございますよ。
いや、母親が誰かに会いに行かなきゃいけないとか、そういうのはとても多い。社長さんについていかなきゃとかもね。だから、うちの親の主婦は主夫、つまり私のお父さんが料理とかしてくれる家。少し珍しいかも。

「できた?」
「もうすぐ!」
「早くなさーい」

そう言って急かしてくるものだから嫌になるね、全く。なんてことをつぶやいてみながら髪の毛をまとめて部屋から出る。階段を下りていれば母親からの野次。もっといい服着ろ、なんて言ってくるものだからいったい誰に合うんだと少し不安になった。

「ねぇ、誰に会うの?」

結局着替えた。

「うーん、社長の息子さん」
「何で!?ええ!?何でぇぇえええ!?!?」
「そんなに驚くことなのかしらね」
「だって私平凡だよ?お母さんみたいに綺麗じゃないし」
「可愛い可愛い」
「頭も普通だし」
「普通ねぇ」
「何で!?」
「そんなこと聞かれても」

ピンポーンと非常な音が鳴り響いて肩を震わす。まるで自分がさびかけたブリキの人形みたいだ。とても動くのが辛い。だって社長でしょ?すごい人でしょ?でその人の息子。つまり次期社長かもしれない人でなんかすごい人だよ!?もうやだ。

「落ち着きなさい。あなたはあなたらしくしてなさい。いいわね」

お母さん、ごめんね、無理。

「でも」
「大丈夫、あなたは可愛いわ。私の娘だもの」

全ッ前大丈夫じゃないよ。

「はぁ」

私のため息と同時にお母さんは玄関の扉を開け、お客様を迎えに行った。とりあえず落ち着け、私。

「きれ、い」

扉が開いた時に目に入ったのは綺麗な赤だった。赤赤赤、綺麗な赤。血みたいな赤じゃなくてすごく鮮やかで綺麗な赤色。綺麗で素敵だと思った。

「あの……?」
「は、初めまして。苗字名前、デス」

片言になるほど、私は緊張してるのだろうか。

「初めまして、赤司征十郎です」
「明石、さん。明るい石の、明石ですか?」
「いや、赤色を司るで赤司です」
「かっこいい、ですね。名前」

本当にお母さんの勤め先の社長さんの名前と同じ。名前は口頭で聞いたことはあっても感じまでは知らなかったな。すごくかっこいいな、言い方かな。名前の紹介の仕方がすごく素敵なんだ。それより、何で私こんな、ドキドキしてるんだろう。あまりの綺麗さに驚いたから?緊張しているから?

「よろしくね、苗字さん。同い年だから仲良くしてくれると嬉しい」
「あ、はい!よろしくです」
「できれば敬語も」
「は、はい!じゃない!うん!」

中学生か、私は。

「ほら、玄関先では失礼でしょう名前」
「あ、うん。こっちです」

ふ、と笑われたのは気にしないでおこう。
冷蔵庫から麦茶を出してテーブルの上に置いた。母はいったいどこにいってしまったのだろうか。

「え、と……母は」
「苗字さん」
「ひゃい!ッッ!?!? 」

噛んだ、舌を思い切り噛んでしまった。すごく痛い。

「はは、平気かい?」
「う、ん。ごめんなさい、落ち着きがなくて……赤司くんは学校どこに通ってるの?」
「ああ、京都の洛山高校だよ」
「え、京都?でも、あれ?なんでここに……」

お母さんの勤め先はもちろん都内だし、ここも都内。てっきり都内の有名そうな高校に通ってると思ってたのにそうじゃないのかな。でも、洛山って聞いたことあるかもしれない。有名だろうから後で調べてみよう。偏差値とかすごく高そうだ。

「ちょっと、苗字さんに会ってみたくて」
「私?」
「そう、苗字名前さん。父からね、苗字さんのお母様のお話をよく聞くんだけれど、その中に苗字さんの名前も出てきてね」

お母さん、お願いだから変な事言わないでね。後で釘を指しておこう。でもまぁ、今更言っても仕方ないのかもしれないけれど。

「すごく面白そうな人だなって思って」
「す、すみません。何か……」
「ううん、会ってみてよかった。俺は父の決める婚約者なんてのはゴメンでね」
「ん?」
「苗字さん、俺は話の中のあなたに惚れてて、ずっとその話を断ってきたわけだけれど」
「んんん?」
「もしよければ結婚前提でお付き合いしませんか?」
「え?」

今話が急に進みすぎてついていけていないのだけれども、今すごい事言われました?私どこにでもいる平々凡々な女子高校生だよ。多分赤司くんの学校にいる人たちの方が美人さん多いだろうし、性格だって成績だっていい人はたくさんほかにいると思うけどどうなんだろう。
どんな話を赤司くんは聞いていたのだろうか。

「あの、つかぬ事をお聞きしますが」
「なんだい」
「話ってどんな話を……」
「ああ、話の内容はね至って普通なんだ。ただ、犬を拾ってきた猫を拾ってきた、階段から落ちたり、落ちかけた人を助けて怪我をしたとか、そういう」

普通じゃないことに気づいてくださいお願いします。すごく今恥ずかしいんだけれど、こういう気持ちになるのは私がおかしいのだろうか。そう思ってしまうくらい目の前で麦茶を飲んだ赤司くんが綺麗に微笑んでいるのだ。

「俺の周りにいるのは変なヤツらばかりでね。その中で女性という点においてあなたはすごく魅力的なんだ。俺の理想、とやらは清楚な女性なんだけれど、理想と現実はやはり違うね。どうやら俺は苗字さんあなたが好きなようだ」
「ま、まま、まずは……お話しよう。私は赤司くんのこと、何も知らないから」
「もちろん。そのつもりで今日は来たんだ。苗字さんに会うのと、俺を知ってもらうため。時間はたっぷりあるから、たくさん話せるよ」

母親がその後、なかなか姿を表さなかったのは私たちを置いてどこかへ出かけていた為だった。計画されたことであり、知らなかったのは私だけ。なんせ父も知っていたようなのだから不思議である。
赤司くんとはたくさん話せたと思ってる。まぁ、本当にたくさん。
何をって聞かれれば日々の日常だとか、部活の話。部活のチームメイトの話、生徒会の話、東京にいる友達の話。それから、友達関係のこと。本当に沢山話してくれた。麦茶を何回注いだか忘れるくらいに。

「名前ー」
「何、お母さん」
「どうするの?」
「とりあえず、LINE交換して仲良くなることから始める」
「そ。いい子でしょう、征十郎くん」
「う、ん」
「まぁ、春ねぇ青春ねぇ」
「うるさい。あ、それよりお母さん!なんて話してるの!私が階段から落ちたとか落ちかけた人助けて怪我したとか!」
「いーじゃない。話の輪、広がったでしょ」

それから夏休み、私は彼にドッキリすべく内緒で学校に行って部活中の風景を見た。一言言えるのは『かっこいい』語彙力がないことをこれほど恨んだことはない。バスケットについては全くルールも何も知らないわけだけど、彼が一番かっこいいことはわかった。

「名前?来てたのか!」
「あ、征くん!ごめんね、内緒できちゃった」
「へぇ?今日は?日帰り?」
「うん、そのつもり。でも、話すこといっぱいあるからホテル泊まるかも」
「そうか。残念だ、寮生活だからね。泊まらせてあげることができないのは悲しいね」
「全然大丈夫!キニシナイで!それより、邪魔しちゃったね。部活、頑張ってね。すごくその、かっこいいから見ててもいいですか!」

勿論、その言葉とともに額に優しくキスをする征くんは本当に狡い。かっこよすぎるのだ、彼は。


。。。
大遅刻申し訳ございません!それから、赤司くんの性格が変わってしまった気がするのはおそらく私だけでないはず。申し訳ございません。リクエストありがとうございました。まだ、このサイトに足を運んでくださっていることを願います。これからも、こんな亀更新な管理人のサイトですが、足を運んでいただけると幸いです。ありがとうございました。

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