密やかな愛を私に

赤司征十郎。全部が全部完璧な人。
苗字名前。全部が全部普通などこにでもいるような人。
そんな私が赤司くんの隣にたっていてもいいのだろうか。
容姿端麗才色兼備、そんな人の隣には私みたいな平々凡々な人間がたってはいけない気がするのだ。赤司くんはいつもいつも優しい笑顔を向けてくれるし、部活で忙しいのに連絡はしてくれるし、傍にいてくれる。

「何で、だろう」
「なぁにがよ」
「実渕先輩、私は赤司くんの隣に立つと不安なんです。顔も普通だし成績だって性格だってスタイルだって普通もしくは劣っている部分も多々……どうしたらいいかわからなくて不安で」

あ、泣きそう。
多分、今日ほかの女の子に言われたからだ。なんであんたなんかが横にたってるんだって、言われたからだ。

「何でよ?不安になる要素なんて何一つないわ。誰にも媚びたりしなくて、しっかりしてるあなただから征ちゃんは好きになったのよ?」
「それでも、不安なんです……」
「そう……じゃあ、不安なところ全部征ちゃんに言ってきたら?」
「えっ、でも」
「ここでウジウジしてたって、なーんにも解決にならないもの」

実渕先輩の言う通りだ。でも、それさえもいう勇気がない私はどうしたらいいのだろうか。携帯をいじって立ち上がった実渕先輩はウィンク一つかまして手を振ってこう言ったのだ。

「言うことまとめときなさいよー」

その一言で悟ってしまった。あ、今携帯いじったのは赤司くんに連絡したんですね。
でもそんなこと言えなくて、あ、とかう、とかしか口からでない。

「ばいばーい。この教室にいなさいよ」

先輩という声もむなしく、彼(彼女)の扉を占める音にかき消されてしまった。これからどうしたらいいのだろうか。ため息ひとつ、携帯をいじってカメラロールを見る。1枚1枚がアルバムみたいだ。指でスワイプして写真を変えていく。どれもがどれも3人以上で私と赤司くんが二人で写ってるのなんてない。だって、一緒に撮ろうなんて言えないしいう勇気もない。

そっか、私全然勇気がないんだ。

「名前……?」
「っふ、ぅ……」
「え?」
「ぅう、うっ……」
「どうして泣いてるんだい?」

ぽろぽろ流れ落ちる涙は止まること知らず。とめどなくこぼれ落ちていく涙を拭う赤司くんは、本当に私とは違う選ばれた人。

「私っなんか、でっ……いいっの?」

しゃくり泣きが止まらなくて、不細工な顔してきっと私今泣いてる。

「ブスっで、スタイル良くないしっ性格悪いしっ」
「……」
「赤司っくは……こんなのでっ、いいのぉっ」
「言うことは、それだけか?」
「ッッ……」

あ、怒ってる。でも、私は間違ったこと言ってない。

「それ、だけ!」
「そう。じゃあ、別れる?俺の隣に立っていたら名前は不安でしたかなくて劣等感に苛まれる。違うかい?」
「……それ、は」

また止まりかけた涙が零れて教室の床に落ちて弾ける。赤司くんがぼやけてぶれていく。
きっと別れてお互いお互いに似合う人と一緒になった方がいい。のに、そうに決まってるのに

「やだぁぁぁぁぁぁ……」

そんなこと想像したくない。
赤司くんの隣に私じゃないもっと綺麗な人がたってて腕を組んで笑いあってるのなんて想像したくない。

「お前は、馬鹿だね」

わかってる。

「でも、可愛いんだよ」

ちがう、今すごく不細工だもの。

「繊細で馬鹿なことを考えて勝手に不安になるお前が俺は愛おしいんだよ」
「ひどい」
「でも不安にさせた俺も俺だね。すまない」
「ちが、もん」

私が勝手に、その言葉を飲み込んだのは赤司くんだ。合わさったそこが妙に熱を持って痛い。

「あ、あああ、あか」
「初めて?」
「……は、い」
「そ?なら、ご馳走様」

妖艶に笑うあなたは本当に赤司くんですか?

「俺の隣に立つのに自信なんていらない。不安にさせたのは本当に済まなかった。でも俺は名前だからたってて欲しいんだよ。それは嘘なんかじゃない。立っていてくれないかい?」

そんな事言われたら立つに決まってるじゃないですか。自分に自信が無いのに立っていていいのか、そんな不安もういらない。赤司くんに立っていて欲しいと言われるから、必要していると言われるから、不安なんて自信のなさなんてもうどうだっていい。そんなもの、一生消えないかもしれない。でも、それを思う前にもっと努力しよう。

「俺は、苗字名前という一人の女性を好いているんだ。駄目かい?」
「あり、がと……」

彼の胸に飛び込んで先輩にも後でお礼をいおうと思ったのです。
赤司くん、大好きです。

title by 檸檬齧って眠る

。。。
大大遅刻お許しください。リクエストありがとうございました。

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