hello25の青春

《永遠》なんてないことくらいわかってた。でも、それでも、あなたが目の前からいなくなるなんて思ってなかった。中学生にはあまりにも遠い、アメリカに行ってしまうなんて思ってなかった。
待ってられると、行ってしまうあなたに言ったのにあなたはこう言ったね。

「お前を縛るつもりはねぇよ。俺を待たなくたっていい」

ただそれだけ。止めるつもりはなかった、行かないでなんていうつもりも何も無かった。実質何も言わなかったのだ。だって、彼にはカノジョよりも大切な家族があるから。それは私も同じわけで、彼と同じ運命ならば私も彼と同じことをした。だから、咎めることは出来ない。

「……わかったよ。でも、少しだけ諦めつくまで好きでいてもいい?」
「…………あぁ」

そんな辛そうな顔をさせるつもりはなかったのに。泣き出しそうな笑顔を浮かべて背を向けた彼。空港に見送りなんて行ってやらなかった。未練たらたらしく、そんなことしないと心に決めてたから。それでも、やっぱり後悔はした。そうやって後悔し続けて10年。

彼が、虹村修造がアメリカに行ったすぐ後にRainというスマートフォンのアプリが出た。無料で誰にでも簡単に連絡が取れるSNSだ。それのおかげでメールアドレスが変わることがなかったのが救いだった。

『会えないか』

虹村修造、彼からだった。ただ問題があってこのメールに気づいたのが今日なわけだが、実際にこのメールが来ていたのは三日前だ。

『もし会えるなら3日後の帝光中の近くにある公園夜の20時、来て欲しい』

そして、今19時。支度をするには少し短い。女の支度は長いのだ。
頭の中では今さら、なんていう考えと会える嬉しさが入り交じってぐちゃぐちゃになっていた。それでも、会えるのはやはり嬉しいのか鼻歌が自然と出てしまう。

「間に合うかな……」

腕時計を見れば19時48分、ギリギリだ。それに、格好が変じゃないかすごく鏡を見たい。なんて、こんな道の往来で鏡なんてあるはずもないのだけれど。

「!名前……?」
「にじ、むらくん?」
「ああ。久しぶり」
「うん、久しぶり!寒くなかった?平気?」
「おう」

マフラーに顔を埋める彼の鼻は少しばかり赤い。きっと、寒かったのだろう。1月中頃で、寒いのは当たり前だと思った。

「ね、虹村くん」
「んぁ?」
「ここの近くに同僚の間で人気なカフェあるんだけど行かない?男の人でも平気だと思うよ」

すぐうなづいた彼は手を伸ばして私の手をとる。それだけでも悲鳴を上げそうになったのにそのままその手を自分のダウンのポケットに突っ込んだのだ。

「うぇえ……!?」
「こっちのがあったけぇ」

中学の頃に、戻った気がした。2人で真っ白なブレザー着て、マフラーに顔を埋めて、手をつないで笑ってた。あの頃は何でも笑えて楽しかったな。そんなことを考えれば頬が緩む。

「ニヤニヤすんな」
「ごめん、するつもりないんだけど。虹村くんがこんなことするのが悪い」

顔を空いてる手で隠せば鼻で笑われてしまった。酷くないか。

「あ、ここ。美味しいってさ」
「何が」
「コーヒーとか食べ物とか全部」
「ふーん……」
「相変わらずだねぇ。素っ気ない」
「うっせ」

照れてるなぁ、なんてしみじみ思ったりしてやはり頬が緩むのだ。

「いらっしゃいませー、お好きな席にどうぞー」

笑みを浮かべた店員の言ったとおり好きなところに座る。といっても虹村くんに引っ張られて座らされた席だけれど。
それからコーヒーと晩御飯がまだだったという理由で私はサンドウィッチを、虹村くんはオムライスという案外可愛らしい似合わないものを頼んでいた。頼んでしまうと、どうしてもこうやって何も話さない時間が流れる。それは、苦痛、と感じず何故か好きだと感じていた。これは昔からあった間である。
お互いがお互いを見ずに店内を見渡したり伸びをしたり。そんな時間。

「ねぇ、」
「ん?」
「何で、今私たち会ってるの?」
「……俺が呼んだから」
「何で呼んだの?メールとか電話じゃダメだった?」

運ばれてきたサンドウィッチには手をつけなかった。答えを真剣に聞きたかったから。

「俺が、……会いたかったから」
「ねぇ、虹村くん。責任とってよ」
「何にだよ」

「虹村くんがアメリカ行って、早くても1ヶ月くらいで忘れるだろうなぁって思ってた。でもさ、なっかなか忘れられなくてもう躍起になってずっと思っといてやるって思ってさ、10年たったんだよ。あっさりもうすっぱりフッてくれないかな?」

それが一番の願いだった。前に、進みたかった。

「…………わかった」
「うん、ありがとう」
「好きだ」
「……………………ん?」
「だから、」
「ちょっとまって!今何て……」
「あ?二度も言わせんなよ、恥ずかしい」

明らか今、好きだって

「お前が空港来てくれなくて心底後悔したわ、縛っとけばよかったって。フッた身分、連絡するのも恥ずかしくってよ。で、今日までいうか悩んで言った」
「わ、私、その……フッてもらうつもりで……」
「だから、責任とるために言ったじゃねぇか」
「そうじゃなくて!」
「んだよ……」

彼の特徴的でなおかつ可愛らしい口を尖らせる虹村くん。昔みたいで、すごく幸せだ。

「嬉しくて気が動転してんの!だって、10年もお互い思ってるとか……思ってない、じゃん……」
「な、泣くなよ……頼むから」
「馬鹿みたいだね。あんな子供の恋愛で、よく想いあってられたね」
「まぁ、そうだな」

いただきますと手を合わせて私はサンドウィッチを、虹村くんは冷めたオムライスを口に含んで笑った。やっぱり、食べ終わるまで本当に終始無言だけれど、この時間がすごく好きだ。

「とりあえず、連絡先から交換しねぇか?」
「メールはやりにくいね」
「あ、そういえば返信来なくて俺焦ったぞ」
「ああ、アレは迷惑メールだと思って……」

帰り道、手を取られてポケットの中に突っ込まれる。虹村くんの手は相変わらず冷たい。それでも、火照ったこの体にはちょうどいい。そんな気がした。

。。。
遅くなってしまいました、お待たせしました。虹村先輩で切甘となっております(でしょうか?)。少し虹村先輩とは違った性格になってしまったかも知れません……ここをこうして欲しい、などありましたらばお手数お掛けしますがご連絡ください。
リクエストありがとうございました!

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