君だけは特別

「れっおちゃひぃぃいい!?!?」
「あら、名前。どうしたのそんな顔して」
「お、おお、おと、男の子がああ、赤司くんが!後ろに!怜央ちゃんの、う、後ろにぃい!」
「うるさい」
「うっ」

一つだけ言っておこう。

私は男性恐怖症です。

それも極度の男性恐怖症で、怜央ちゃん以外はどうもだめ。怜央ちゃんが何でいいかは多分怜央ちゃんが男の子っぽくないから。そりゃあ、見た目は綺麗な男の子だけれど、接し方はどこの女の子よりも女の子らしい。だから、いいのだ。怜央ちゃんは別。ただ、その怜央ちゃんの後ろにいる男の子が問題なんだよ。

「苗字さん、どうして毎度毎度……俺は何もしませんよ」
「む、むむ、無理!それ以上近寄らないで!あ、違うの赤司くんが嫌いだとかじゃないと思うの!えっと、ごめんなさい!」

うるさい騒がしいと言われるのはいつもと同じだし慣れてるからいい。慣れたくなかったけれど。だって男の子が近寄ってくる度に悲鳴を上げ、挙句の果てに体育の先生にまで最近悲鳴を上げるように。

「はっきり言われると傷つきますよ。俺はなれましたけど……」
「ごめんねぇ、本当にごめんねぇ」
「メソメソしないの。もう、征ちゃんに頼んでる意味無いでしょ。ほら、せめて指先でも触れるようになりなさいよ」
「ひぃぃいい!無理無理無理無理無理無理ぃぃぃぃぃい!」

赤司くんの手に自分の手を伸ばすけど無理。無理でした。この間、肩がぶつかっただけで失神した私に怜央ちゃんが切れてこうなったわけだけれど、簡単に男性恐怖症は克服できないようで。赤司くんに手伝ってもらってる。こんな、1学年下の王子様のような子に。
なのに、無理とかダメだとか近寄るなとか言ってごめんなさい。

「……そろそろ、俺も悲しくなってきたんだけどな……毎度毎度無理問屋と言われ続けると少し」
「うーん、そうよねぇ。やっぱり無理やりってダメなのかしら」
「もう少し話してみるとかは」
「あー、そうね。相手を知ることも大切って私は人見知りも直して欲しいのよ……ダメねぇ」
「ごめんねぇ、 怜央ちゃん……」
「名前は悪くないわよ。無理矢理はやっぱり良くないわね」

その言葉にえ、となるのは当然なわけで。だって怜央ちゃんどこか行ってしまうんだもの。とどのつまり、ここにいるのは赤司くんと私だけ、それに距離は机1個分くらい。無理無理無理無理、私死んでしまう。

「俺は一切動かないので、苗字さんが話せる範囲に移動してください。話しにくいのでしょう?」
「う……ああのね!私が赤司くんのこと嫌いとかじゃないんだよ!?」
「はい、わかってます」

どうしてそんなふうに笑えるのだろう。拒絶されてるのに、無理だとか近寄らないでとか言われまくってるのに赤司くんって鈍いのだろうか。

「じゃあ、えっと……」
「苗字さんが好きなものって何ですか?」
「え?食べ物?」
「なんでも」

マジマジと赤司くんを見てみると怜央ちゃんと同じで顔が整ってるのが改めてわかるし、声も通ってて綺麗。それに学年で一番頭もいいって怜央ちゃんが言ってた。そう思うと私はなんてすごい人になんてことを言ってたんだろう。初めてあった時なんてビンタかましかけたし、綺麗に避けたけど。

「えっと……抹茶?」
「ああ、茶道部でしたね」
「うん。あ、赤司くんの好きな食べ物は知ってるよ!あと嫌いな食べ物も!えっと確か……好きな物は湯豆腐でしょ?それから……嫌いなものはワカメと紅生姜でしょう?」
「……驚いた。距離を置けば話せるんですね」

ああ、本当だって話逸らしたよね。
でも、こんなこと初めて。だって、どれだけ離れていても話しかけられたら怜央ちゃんとか他の友達の後ろに隠れるほどなのに。赤司くんが初めてだ。

「嬉しいんですか?」
「へ?」
「顔、にやけてます」

そう言われれば急いで隠すのが私だ。恥ずかしい。

「じゃあ、少し近づいても話せますか?」
「え、無理無理無理!」
「そうすべてやってもないことを否定するのはいただけませんね。俺から動きますよ?」
「さっき動かないって!」
「冗談ですよ。いつか、普通に実渕先輩と同じような距離感で話せるようになりたいですね。それから、手も繋げるようになりたいです」
「む」

―そうやってやってもないことを否定するのはいただけませんね。

無理って言ったらまた赤司くん顔顰めるかな。さっき顔をしかめられてしまった。ついでにいえば悲しそうに。

「ぜ、善処します」
「苗字さんが初めに慣れる男は俺がいいです。勿論、実渕先輩は論外です」
「う……」

少しだけ足を踏み出す。こんなに男の子と話せたのだから少しくらい近づいたってきっと平気。

「苗字さん」
「ん?」
「帰り道もほぼ同じなんですから、送っていける程度には慣れてくださいね。ついでにその時、手を繋ぎましょう?」
「……うぅ、善処します……」
「だから、今もう少し近づいてみる気はありませんか?せめて道端を二人並んで歩ける距離くらいに」
「ねぇ、赤司くん……それって、意味深?」

手をつなぐって言うのも、初めて慣れるのが自分がいいって言うのも、帰り道送ってくってのも全部それは

「それは、苗字さんが俺に慣れるまで言えませんね」

先程の言葉にもう一言つけ加えることにしよう。
私は男性恐怖症です。でも赤司くんにだけ、慣れるのは少し早いかも知れません。

。。。
ちはる様
お待たせしてしまってすみません。男性恐怖症のレオ姉の友達と赤司くんです。友達、と赤司くんの間に彼女という単語がリクエストをいただいたとき書いてあったのですがその彼女がガールフレンドの彼女なのかそうでないのか、私は男性恐怖症なのだからガールフレンドではないだろう!と思って書き上げてしまいましたが、もし違う!ということでしたらお手数お掛けします、ご連絡ください。
リクエストありがとうございました!

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