甘えてますか

「けーちゃーん」
「……名前さん、その呼び方やめてください恥ずかしい」
「え、そうなの?」
「何度も言ってませんでしたか?」
「え、知らない。多分覚えてないだけだけど」
「でしょうね」

お昼時間になると毎度階段を下りて彼、赤葦京治教室にお弁当二つ手に持って迎えに行く。こんにちは、部活のマネージャー兼恋人の苗字名前です。わざわざ迎えに来なくとも自分から行くと言われているのに来てしまうのが私。

「今日は起きられましたか?」
「起きれたから二つ持ってるんですけどー」
「……いつもありがとうございます」
「むふふふ、どうだー嬉しいかー!」
「はい。とても」
「ッッ」

あまり表情が顔に出ない男、しかも惚れてる男に笑いかけられてしまうと照れてしまうのは惚れてしまった弱みか。


「名前さん、顔赤いですよ。照れてますか」
「……絶賛照れ中です」
「じゃあその勢いで手、繋ぎませんか」
「……甘えてますか?」
「甘えてます」

有耶無耶な返事をし、べつにいいよなんて言ってないのにその大きな手に自分の手をすっぽりと覆われてしまう。京治くんはこんなに甘えたな子だったかな。なんて思ってれば私が持ってたもう一つのお弁当も彼の手に攫われてしまった。

「いいのに、持つよ」
「俺が持ちたいんでいいです」
「じゃあ私も持ちたいので返してー」
「嫌です」
「……おーぼー」
「抱き上げてもいいんですか?」
「…………ごめんなさい」

京治くんよりも30センチ小さい私は簡単に京治くんに抱き上げられてしまうことをこの間の王様ゲームで理解したのだ。あの時はもう少しダイエットして体重落としておくんだったと後悔したものだ。

「分かればいいんですよ」
「うわー、今絶対木兎とおんなじ扱いしたでしょ」
「そんなことありませんよ」
「本当に?」
「……まぁ、少しはそんな気もあったかも知れませんね」
「うわっ、絶対あった!」

今日は木兎たちと部活についてのミーティングしながらお昼ご飯を食べるとかなんとか。指定された教室に入って席に座る。もちろん隣だ。

「今日のメニューは?」
「お楽しみ!」
「教えてくれないとデコピンしてから抱きしめますよ」
「……それもいいなぁ」
「もういいです」
「いっ、たくない……ぶふっ」

京治くんに腕を引かれた時にぶつかった衝撃で女の子らしくない声が出てしまった。
頭上から聞こえる吹き出す音。顔を上げればどうやら私のぶふ、がツボだったらしい。

「名前さんいまぶふって、ぶふって……」
「う、うるさいなぁ!」
「可愛いですよ」
「絶対嘘だ」
「俺が嘘つくような男に見えますか」
「……時たま見えます」
「それは酷い」
「酷いのは笑った京治くんだ」

そんなこと言い合いながらもきつく抱きしめてくる京治くんはきっとすごく甘えたさんだ。でもそれにうまく乗せられて転がされてるのは私だ。
だって不意に笑ったり、何気ない仕草だったり、全部かっこいいんだもん。

「ようよう、そこのバカップル!いちゃつくなよ!」
「木兎さん、空気読んでください」
「木兎のけーわい」
「お、何だ?俺なんかしたか?」
「はぁ……もういいです」
「木兎なんてほーほー鳴いてればいいのに」

私は一切褒めたつもりなんてないのに。ないのに……

「苗字、それどういうことだ褒めてんのか?」

って聞いてくるからもう本当にいろいろどうでも良くなってしまうのは。木兎はいろんな意味でいてくれれば嬉しい存在だ。落ち込む時は人一倍落ち込むけれど立ち直りは人並み以上に早くてバレーボールにすぐ触ろうとする。

「本当にもういい……」

そんな主将だが、空気を読むというスキルを身につけて欲しい。

「よし、全員揃ったか?」
「揃いましたね。では、」
「ミーティングするぞ!」
「木兎さん、座ってください」
「おう!」

さてさて、ミーティングがスタートしたわけですが……京治くんは机の下でずっと私の手を握って離さなかった。しかも、恋人繋ぎってやつ。恥ずかしいし食べにくいしでパニックになりそうで、それでも何も言わなかったのはきっともっと続いて欲しかったから。恋人繋ぎってなんだか、心がほっこりするのでまた今度してみようかな。

「京治くん」
「何ですか?」
「お弁当、美味しかった?」
「……言って欲しいですか?」
「言って欲しいなぁ」
「美味しかったです。ただ、卵焼きもう少し味薄目が俺は好きです」
「研究します……!」

そんな私たちは今日もラブラブです。


。。。
今回、初赤葦京治くん挑戦でした!貴重なリクエスト有難うございます。要望に応えられていたでしょうか?喜んでいただけると嬉しいです。書いていて楽しかったですが、少し会話文の多さと台本書きな部分があり気になってしまったら申し訳ございません。何かありましたら言って下さると嬉しいです。また、何かありましたらご連絡下さい。リクエストありがとうございました(^^)

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