返事は?

知ってるよ、君が私じゃない人を見てたくらい。それが私の勘違いじゃなくて、確信してるのは君をずっと隣で見てきたから。でも、その君が見ている子はまた別の子を見ている。世界は残酷。こんなにも好いているのに、この思いは一生彼に届くこともなく儚く散っていくのだろう。

「あ……ほみね」
「てめぇ……いい加減にしろよ?」
「え、じゃあおっぱい星人アホ峰。うわめちゃくちゃ名前かっこいいー」
「殴んぞ」
「うわ、さいてー」
「心にも思ってねぇだろブス」
「だまれ」

ほら、まただ。また、私じゃない子見る。今話してるのは私なのに。私のこと少しは見てよ。
まぁ、そんなこと思ったって無駄だけど。あの子には勝てない。それは私が身をもって体験したからわかってる。ルックスも性格も、能力も。突出した能力もなければ、スタイルも良くない。顔も平凡性格も勿論普通。

「お前、馬鹿だよな」
「何いってんですか、先輩。これでも成績は上位ですが何か」
「しらねぇよ。じゃなくて、一歩引かなくてもいいんじゃねぇか?」
「……すみません、意味わかりません」
「青峰と桃井と、いつも二人と話す時はお前は一歩引いてる。そんなことしなくたっていいんじゃねぇのか」

中学の時の先輩にそう言われた。そうなのかな、自分でそう考えてみて納得した。ああ、確かにそうだなって。さつきが来たら大輝から一歩離れる、何も言わない。物理的、精神的、どちらもきっと一歩引いてる。

「何見てんの」
「別に」
「さつきー、大輝がさつきのおっぱい見てた!」
「名前ちゃん、大きい声で言わないで!それから大ちゃんサイテー!」
「てめッ、名前!」
「怒られろ怒られろ!」

ああ、ばか。またこうやってさつきと話す時間が増えてしまう。さつきが笑えば大輝はそっぽを見く。照れ隠ししてるんだと気づいたのはいつだったか。そんなこと気づきたくなかったのに。出来ることなら、大輝が誰を見ているのかも知りたくなかった。

「おい、名前!こっちこいよ」
「やだ」
「は?」
「私もいろいろあんのよ。さつきといてよ」
「はぁ?なんであんな女と」
「うわ、さいてーあんな女って。…………くせに」
「あ?何か言ったか?」

好きなくせに、そんなこと口にしてしまった自分が嫌だ。よく嫉妬は汚いものだと言われる、現に私が読んでいた本にもそう書かれていた。
ああ、確かにそうだ。

汚い

「別に。じゃあね」

本当はこんなこと言いたいんじゃない。でも、私は中学でもうバスケ部を辞めたのだ。さつきがいるから。いくらでも代わりがきく存在の私はいらない。そう思った。さつきの隣に立ってると劣等感しか生まれない。それがどれだけ辛くて、気持ちが悪いか。

「待てよ!お前、どうしたんだよ」
「え?」
「なんつーか、素っ気ねぇだろ」
「え、そう?わかんない」
「だぁぁあ!とりあえずそうなんだよ!!!何かあるなら言えよ!」
「言え?何で大輝に言わなきゃいけないの」

掴まれた腕を振って彼の腕を振り払うとそのまま前に向かって歩き出す。いや、ある気だそうとしたのだ。なのに私の足は宙に浮いている。

「え?きゃぁぁぁあああ!」
「耳元でうるせー!」
「な、なな、何して?!」
「お前がオージョーギワ悪いから悪いんだろうが。素直に話せばいいんだよ」
「おーぼー!離してよ!大輝に言うことなんて何にもないのよ!」

じたばたと暴れてもびくともしない太い腕は私の腹を捉えたまま離そうとしてくれない。そのままくるりと後ろを向き歩き出した大輝。思いっきり私と逆方向に行くんですけど。思いっきり部活向かってるよね。さつきの部活してる姿が苦手だから部活行かないようにしてんのに。

「大輝サイテー」
「お前、さつきと同じこと言うな」

ああ、彼の口からさつきの名前が出る度に胸が痛むのは、もう末期か。

「あれ、名前ちゃん?どうしたの?」
「ちょっとこいつ見学な。名前、見てろよ。お前が好きだって言ってたのやってやる。だからお前は馬鹿みたいに笑ってればいいんだよ 」
「何、言って……」

ああ、かっこいい。かっこいいよ、大輝は。知りたくなかったと思うくらいにかっこいいよ。
シュートもダンクも全部かっこいい。二年生になって、試合を見て最近思うよ。

「どうだった、元気でた……か?ってはぁ?なんで泣いて」
「かっこ良すぎだよばーか。バー、カ」
「は、え、ちょ、なんで泣いてんだ?」
「マヌケヅラ」

そう言って涙をぬぐった私はさつきに謝った。ごめんね、約束破ってごめんね。

「大輝、好きだよ。ずっと好きだった」

昔約束したのはこの関係がずっと続けること。幼なじみで馬鹿するこの関係を壊したくないと彼女は言った。きっと知ってたのに。私が大輝のこと好きなことくらい、彼女ならわかってたのに。

「は?」
「大輝がさつきのこと好きなことくらいわかってる。でもそれでも私は大輝が好きです」
「……待て、それは誰から聞いた。今吉サンか」
「違うけど……」
「どこで聞いた。それは、誰がお前に言った」

誰にも、独断。
そう伝えれば頭をゲンコツで殴られた。正直慣れていると言っても痛いものは痛いのだ。なんで顔真っ赤にして怒ってんの。さつきの前で言ったから怒ってんの?
さつきを見れば、さつきも怒っているのがすぐわかった。

「えっと、なんで怒ってんの」
「俺はさつきのことは何とも思ってねぇよ。お節介な幼馴染だ」
「じゃあ私は家が隣なだけのただの幼馴染でしょ」
「お前はっ、違う。ただの幼馴染じゃねぇよ」
「じゃあ何さ」
「別に。ただの幼馴染じゃねぇっつってんだろ」
「は?意味わかんない」

その後、さつきから大輝に対しての感情など諸々すべてを否定され、お説教に近い話をされた。長かったよ、小一時間だったんじゃないかな。
あれから大輝とは特に変わったことはない。フラれたわけでも何でもなかったけど、ただ一つ違うのは帰り道、たまに手を繋いでくれたりするということ。大きな進歩な気もするし、それだけって感じる進歩なのかもしれない。けれどそれは、私にとっては大きすぎる進歩で。

「大輝」
「あ?」
「返事ってもらえないの?」
「何の」
「私の告白」
「しねぇよ。このままでいい」
「それ喜んで期待していいってこと」
「勝手に妄想しとけ」
「じゃあ、いつかは大輝から好きって言ってもらえること期待してるから」
「はっ。いつになるのか知らねぇぞ」
「あ、言ってくれるんだ、一応いつかは」
「いつかは、な」

まだ、肌寒い、春の出来事。言ってくれるのはいつかはわからないけれど、まだまだ先は長いのだろう。

。。。
リクエスト、有難うございました。
最後の終わり方が曖昧ですみません。もっとこうして欲しいなどご意見がありましたらご連絡ください(^^)

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