惚気

友人の話にため息をついた。

「は?またぁ?もう慣れた」
「……慣れていいのか、それ」
「慣れなきゃやってけないわよ、あの人の彼女なんて」

運命だ!女神だ!あの子が可愛い!あの子のために頑張る!

日常的に聞くその言葉は私の彼氏、森山由孝が発している言葉である。ちなみに私はもう聞き飽きた。そして、可愛い女の子と歩いているだとか手を握っていただとか、そんな情報どこから流れてくるか。それは友人たちの情報網だ。もう舐めんなよ、というくらいに情報が回ってくるのが早い。別にその情報が来たからってなにか行動するわけじゃないけれど。それでも、

「彼女がいるくせしてその言葉はないね」
「まぁ、そんなこと気にしたら負けでしょ。あんなヤツだけど好きだからいいのよ」
「森山、顔はいいけど性格に難ありすぎだよ」
「別に。いいのよ」
「趣味悪いよ〜」
「放っておいて」

まあ、友人もそういうし私も表面上ではそう言って笑うけれど、本当は気にしてるし誰だ誰だと追求もしたい。けれど、まぁ、本当に気にしていたらキリがないし正直面倒くさくなってくるのが現状。これが、マンネリ化というやつならば反対はしない。ただ、肯定もしない。

「森山、本当に名前のこと好きなの?」
「んー、どうだろうね」

学校での癖を直して欲しい。一年生にも二年生にも三年生にも、可愛らしい女子がいたら口説くという最低な行為。辞めろ、と言ってもやめないのだからもう諦めが半分入ってきているが。

「森山も森山だよ。彼女がいない奴らに謝れっての。そんでもって、名前が付き合ってくれてるはことに喜べ」
「そこまで言わないでよ、人の彼氏に」
「でもあれは本当許せない」
「私は許せてるからいいの」

もう一度放っておいて、そう伝えて帰りの準備を済ませてジャージに着替える。青いジャージ。海常と書かれたそのジャージを着て、持つべきものを持って体育館に向かう。その道には必ずと言っていいほど聞こえる単語がある。「黄瀬くん」や「キセリョ」である。興味ない、といえば嘘になるし大好きだといえば嘘になる。
私は由孝がいるから、眼中に元からなかったけれど。まぁ、当然そのファンの中にもカワイイ子入るわけで、もちろんそれに声をかけないほど由孝は馬鹿じゃない。

「君、可愛いね!どうだい、今日は部活で見るのを黄瀬でなくて俺に」
「由孝?あんた部活でしょ。そんなとこで油売ってないでさっさと体育館に行く。それから、見学はお静かに」

由孝の腕を引いて体育館の中に入る。顔馴染みのチームメイト、入ったばかりの後輩たち。うん、今日も元気だ。
よし、今日も頑張ろう。

・・・・・・……

『ありがとうございましたー!』

部員たちが頭を下げてどんどん体育館を出ていく。また一人また一人と出ていき、結局残ったのは何時ものレギュラーのメンツ。

「どっかよってくかー?」
「暑いんでアイス食いたいっス」
「お、いいね。笠松、小堀、早川もコンビニ寄らないか?」
「あー、いく。小堀は?」
「行くよ。早川も行くだろ?」
「はい!」

「名前も行くだろ?」
「勿論。由孝の奢りね」
「え……まぁ、いいけどさ」

いいんだ?そう言って笑ってやればくしゃりと頭をなでられる。汗をかいてるからやめて欲しい。黄瀬くんが惚気〜なんて、冷やかしてくるけれど笠松が彼を蹴ってくれたからよしとしよう。

「じゃ、行くか」
「よし、笠松先頭な」
「は?何だそれ」
「俺と名前は最後がいいし」

私は正直由孝に好かれてる自信がある。勿論、学校でも外でも。ただ、学校では彼の何かが弾けてしまうだけだ。

「そういうことかよ」
「察したか?」
「ッああ」
「悪いな」

最後尾で手を繋いでどちらかともなく顔を見合わせ笑い合う。それが私たちの帰る時の習慣だ。別に、学校で付き合ってます!なんて見せるつもりは無い。こうやって由孝から甘えてきてくれて、甘えさせてくれるこの時間があればもう何も要らないのだから。

「手、熱いな」
「気のせいじゃない?」
「照れてんの?」
「……好きにとったらいいよ」
「じゃー、勝手に想像しとく」
「どうぞ」

黄瀬くんが笠松に蹴られて悲鳴を上げる。小堀と早川くんがそれを見て止めるのが本当に面白くて、また顔を見合わせて笑った。

。。。
桐生様
大変お待たせしてしまったこと、お詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。
森山先輩夢、楽しんでいただけると幸いです。あまり甘くなくてまとまりが無い作品になってしまい申し訳ございません。もし書き直せ、などありましたらまた御手数ですがご連絡ください。
リクエスト、本当にありがとうございました(^^)

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -