机の上に突っ伏している私の頭をクシャクシャとなでてくれるのは二つ下の幼馴染、高尾和成である。
「もう、謝ってこいよー」
「だって、だって……」
「ああああ、ずっとこうやってたって意味ないじゃん」
いつも、こうやって困った時に助けてくれるのは和成だ。悩み事を打ち明けたり、困ったことがあれば静かに聞いてくれる。それがものすごく落ち着く。よく出来た幼馴染を持ったなぁ、としみじみ感じる。
「でも、悪いのがどっちかわかってんだろ?」
「……うん、私」
「だろ?悪いのは名前なんだから謝りに行かなきゃな」
「うん……でも、」
「でもじゃねーの。あたったのは名前!さっさと行ってこい!」
「でも……ぅう」
そもそも、いつもならこんなふうに不安になったりしない。
―遡ること数十分前。
「清志くんは私なんかより山田さんの方がいいんでしよ!?もう知らない!」
文化祭前。清志くんはクラスのリーダーのようで、そのパートナーの美人で有名な山田さんとよく一緒にいるのを見かけた。話をしていても、山田さんから電話がかかってくれば出て長話。どう考えても文化祭に関係ない話ばかり。
私だって構って欲しいのに。清志くんの隣に最近いて楽しそうに話しているのは山田さん。
「はぁ?お前は何言って」
「どうせ、私よりも山田さんの方が美人さんだもんね!」
「は?」
私が悪いってわかってる。だけど大坪くんの言葉が頭の中をグルグルしていてずっと不安だった。
「山田は宮地を恋愛対象として見ているらしいぞ」
その言葉がすごく恐ろしかった。私よりもスラリとした身長に、綺麗なストレートの黒髪。大きな目にスっとした鼻筋、小さな顔。挙げればキリのない完璧なお顔に頭。山田さんはそんな人。
まぁ、いうなら私なんかよりも山田さんのほうがずっと清志くんには似合ってる。
「清志くんなんて、清志くんなんて、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!!」
あの時の自分にお前が馬鹿だバーカ、言ってやりたい。殴ってやりたい。
とりあえず、ちゃんと目を見て謝るんだぞ。子供のようにそう言った和成は一年生の教室に戻って行った。
椅子から立ち上がって、教室から出る。廊下のその先にいたのは山田さんと清志くん。二人でどこに行くのだろうと、興味本位でついていくことにした。
「……で……から……そ」
全然話は聞こえないけれど、山田さんが確かに清志くんのことが好きなんだなぁ、というのはわかる。だって、顔がもう幸せそうなんだもん。私もあんなんかな?なんて思って着いたのは人気の無い空き教室。
見たらいけない
そう思ったけれど、扉に背を貼り付けて座り込んだ。かすかに聞こえるその声につばを何度も飲み込む。
「宮地くん、困らせるってわかってるんだけどね、好きです。付き合ってください」
「……」
「多分、宮地くんなら断るってわかってるの。けどね、好きなのよ。今日の苗字さんみたいに嫉妬するくらいには」
「それって、かなりってことかよ……」
「ふふ、そうとも言うかもね」
私は、振られてしまうのだろうか。こういうところで出て行ってしまうのは、野暮だってわかってる。だから、止められてよかった。
「ごめんな、山田。俺心底惚れてる奴がいるんだわ。馬鹿でおっちょこちょいで馬鹿で」
バカが二回出てきたんだけど。
「俺がいてやらないとなんにもできない奴」
「それって、苗字さんかしら?」
「当たり前」
「勝ち目はないってわかってたのだけど、面と向かって言われるのはやっぱり辛いものね」
「あー、悪、いな」
「いいのよ、謝らないで頂戴。これからも、文化祭の企画のパートナーとしてよろしくね」
足音がしてどうしようかと思ったけれど、きっと最初から気づかれていた。指と指の隙間から見えたのは顔を真っ赤にして泣いている山田さんの顔だった。無理して笑った彼女は私に頭を下げてその場を去って行った。
「名前、そこにいんのか?」
「ぅ、え……あ、うん」
「はぁぁぁあ……恥ず」
「いや、なんかごめんね」
「とりあえず出てこいよ」
「無、無理!」
顔真っ赤だもん。山田さんには悪いけど、私すごく今幸せで嬉しい。だって、好きな人からバカとか言われながらも大切にされているんだということが伝わってきたから。
教室の中と、扉越しのお話。
「あっそ。それから、話聞いてたならわかるだろ。俺は」
「も、もうその話はいい!私が悪かった!ごめんなさい!」
「はぁ?お前、ホンット自分勝手。山田を見習え」
「うわ、その言葉本当にない」
「あ?」
「う、ごめんなさいってば」
腕を教室の中から引っ張られて大勢を崩す。柄にもなく乙女チックな悲鳴を上げた。
「ッッ」
「とりあえず、顔真っ赤じゃん」
「会ってその言葉が最初ってなんなの?」
「うっせ」
とりあえず、大切にされていることが分かったのでもうそれでいいです。
山田さんとはそれから名前で呼び合うような仲に発展して今では仲の良い友達です。
清志くんとは続いていて、とりあえず和成にはクッキーを焼いたのをお礼に上げた。大坪くんには、文句を垂らして腹パンしておいた。
「ねー、清志くん、まだ怒ってる?」
「べつに、」
「じゃあなんでそんな顔してんの?」
「もういいだろ、ほっとけ。轢くぞ」
「ひどい」
和成から聞いた話だと、山田さんに言った言葉を私に聞かれたのが相当恥ずかしかったらしい。普段はそんな事言ってくれないからね。嬉しかったよ、と言えば腕で顔を隠されてしまった。その間から見えたのは赤く染まった顔だった。
。。。
おっし〜様
大大遅刻ほんとうにすみません!おっし〜様の言った通りにはなってないかもしれません。オリキャラを出してしまってすみません。嫉妬、というのをあまり書きなれていないものですからうまく表現出来ておらず申し訳なく思っております。本当にすみません。
書き直せ、やここをこうして欲しいという要望がございましたら御手数ですがご連絡ください。
遅くなりましたがリクエスト、有難うございました!