オリンピック

「あれ、赤司くん?」
「苗字か?」
「……うん」


少しお洒落なバーで飲んでいた時、赤い色に目がいってついつい見てしまったが、まさか知り合いだとは思っていなかった。中学の時に付き合っていて、結局フラれてしまった。そんな苦い思い出の相手が目の前にいるが、相変わらず端整な顔立ちな顔立ちである。


「僕に君はもう必要ないよ」
「言ってる意味がわからないよ」
「まぁ、もういらないんだ。さようならさ」
「何で!赤司くんに会わせろ!」
「あははは!何を言ってるんだい?目の前にいるじゃないか、僕も赤司征十郎だ」


唐突に別れを告げられた、その日。よくわから無さすぎて涙さえも出なかった。辛いのに泣いたっていいだろうに出なかったのはきっと赤司くん出ない人に別れを告げられたからだ。そう自分の中で自分を洗脳と言う名の説得で落ち着けた。そんな、苦い苦い記憶の相手。


「久しぶりだね」
「うん。赤司くんは元気だった?」
「ああ、元気さ」
「そっかそっかならいいや。赤司くんむかしのりかっこよくなったんじゃない?」
「苗字だって、美人になっていて驚いたが」


こういうことをサラリと言ってしまう彼が恨めしい。手に持っていたカクテルをちょびっと飲む。きっと、世辞でも恥ずかしいものは恥ずかしいのだから顔が真っ赤だ。


「ねぇ、顔が真っ赤だけど、平気かい?」
「うん、大丈夫」
「本当に?飲みすぎは体に良くない」
「わかってるよー、もう。お母さんみたい」
「俺は君を心配してだな……」
「それもわかってる。赤司くん、昔からいろんな人に優しくて気配り上手だったもん」


でももし、いまの言葉が好意を持って言っていたらばどれだけ私は嬉しかったろうか。
赤司くんと別れて何年も立つが、上手く行ったことは本当に数少ない。すぐに別れてしまったこともあればダラダラと何の進展もなく付き合ったことだってあった。そんな中できっと一番輝いていたのは赤司くんと付き合った時期だっただろう。


「あの頃、楽しかったなぁ」
「いつ?」
「んんー?中学の時」
「何故?」
「何故って赤司くんの隣にいれたからじゃないの?わかんないや」


我ながら恥ずかしいことを言ったが、まぁいい。今はお酒を飲んでいて気分が浮いているもの。言いたいこと言ったってきっと明日には忘れてるわ。


「随分懐かしく感じるな」
「ねー。黒子くんとか元気かな?」
「ああ、元気にしているよ」
「そうなんだ」
「ああ。たまに会うからね。アイツが働いている保育園が近いんだ」
「保育園!似合ってるねぇ」
「黒子は子供が好きだったからね」


結構、話すことあるんだ。
思っていた以上に話が続いた。その楽しいことのなんの。きっと私、赤司くんといれるから楽しいんだ。赤司くんは人を楽しくさせてくれるような人にはみえないんだけどな、失礼だけど。どちらかというと、一方的に話を聞いている側で、的確な意見を言ってくれそうな人なのに。


「苗字が飲んでいるカクテル……オリンピックかい?」
「あ、よくわかったね」
「ああ。タイミングが良すぎるな」
「何が?」
「そのカクテルの意味を知っているか?」
「いや、全然。ていうかカクテルに意味とかあったんだ……」


そっちに驚いたけど、それ以上に赤司くんがその言葉の意味を知っていたことに驚きだったんだけど。


「ねぇ、名前……」
「ッあ」


耳元に来るその暖かい息に、優しい声に、体が震える。


「これから、二人になれるところに行かないか?」


はい、と言って連れ出された。


「ねぇ、赤司くん」
「?」
「オリンピックの意味って結局なんなの?」
「ああ、待ち焦がれた再会だ」


ベッドの上で抱きしめられる。赤司くんも、私も、熱い。それは二人とも酒を飲んでいたからか、それとも―


。。。
匿名様
リクエストありがとうございました!切甘にならなかった……なんでこんなに甘くなってしまったんでしょうか?すみません……ご期待に添えなくて。最後はご想像ください……(^^)
そしてお待たせしました!待たせといてこれかよ!本当にそう言われても仕方がありません。すみません。書き直せ、と言われましたら書き直しますので、御手数ですが御連絡下さい。
リクエストありがとうございました!

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