貴方に酔いしれる

*真っ白結婚後
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「征……」
「ん?何だ?」
「おはよう」
「……ああ、お昼だが」


そう言われて時計を見るとギョッとした。12時を過ぎてもうすぐ1時になろうとしていたからだ。


「起こしてよ……」
「仕方ないだろう。昨日は無理させたからな」
「お陰で腰痛いし」


明日は久しぶりに征の仕事が休みということで、体を重ねた。もう、征の高校生かと思うほどの体力のせいで私の腰は限界を超えていた。なのにも関わらず止まらなかった征が悪い。寝過ごしてしまったのも途中で気絶したせいだろう。記憶がない。朝起きたら体は綺麗だった。征が大方処理をしてくれたのはわかる。でも、起こして欲しかった。恥ずかしいから。


「すまない」
「そう思うならちょっとは加減してよ」
「無理」


即答した征に少しだけ殺気が沸いた。女の身にもなれ女の。そんなことを思いながら征の隣に腰を下ろす。本を読んでいた彼は本を閉じて私の方に頭を預けた。


「今日は甘えたさんだね」
「久々にゆっくりできるから」
「そっか。いつもお疲れ様」
「それは名前も同じだよ。いつもありがとう」
「ふふ、どういたしまして」


こうやって、改めて言われると照れる。征の赤い髪の毛がふわりと私の首をこそぐる。彼の頭に手を伸ばしてそのふわふわな髪の毛を撫でた。


「気持ちいいね、人に撫でられるというのは」
「えー、嘘だ。他の人にやられたら嫌がるくせに」
「まず僕の頭に触る者なんて、名前くらいさ」
「それもそうだね」


テレビも付けず、ただ、静かな空間。窓を開けているからか、涼しい。風が頬を撫でる度に征の髪の毛も靡く。


「こそばゆい」
「そうなの?」
「そうなの。ほら、やるなら膝にして?」


自分の膝を叩くと案外あっさりそこに収まった征の頭。
横向きに寝転ぶと思ったら私の顔を見るかのように上を向いて眠るから私は恥ずかしくて顔をそらした。窓の外を見る。


「寝てもいいか?」
「え?」
「名前といると落ち着くよ。だからか、瞼が重くなる」
「そうなの?」
「ああ」
「そっか。おやすみ。本読んでてもいい?」


構わない、その言葉を最後に征は目を瞑って眠ってしまった。彼の腹に乗っている本を手に取りページを捲る。ドイツ語のそれは詩集のようだった。


―あの人が私を愛してから、自分が自分にとってどれほど価値あるものになったことだろう。
ゲーテ―


その言葉を見て、ふと思うのだ。征が私を必要としてくれて愛してくれて、私は居場所をもらえた。一度は手放し、なくしてしまったその居場所を、またくれた。征がいるから私が今いるのだと思うと私の価値を見いだせなかった人生も色づいた。征のおかげ、征がいたから。


「いつもお疲れ様、ありがとう」


体を曲げて征の髪の毛を掻きあげる。現れた額に唇を寄せた。


「愛してる」


「僕も愛してる」


「んん!?……んぁ、ふ、ぅッ」


後頭部を掴まれ引き寄せられた。勿論ぶつかったのは私の唇と征の唇。口内を犯す生暖かい舌。離れようにも後頭部をがっちり掴まれているのだから離れられない。
しかしさこの体制、腰にくる。痛い。
でも、そんな場合じゃない。今は、今は私はこの幸せを噛み締めるのが先なのだから。


「起きてたの」
「今起きた」
「そっか」


上体を起こした征は私の腰に腕を回し、もう一度キスを落とす。


「ねぇ、子供いる?」
「まだいらない。子供にお前を取られたくないんだ」
「あはは、征の方がよっぽど子供かもしれないね」
「そうかもね」


もう一度、と重なった唇に私は酔いしれるのです。


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匿名絶望様!遅くなり申し訳ございません。こんな感じで良かったでしょうか?真っ白結婚後でした。ちょっと甘い感じにしてみました。お気に召していただけると嬉しいです。リクエストありがとうございました!

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